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最終日

「おい、カルカトス」


 そう言ってこちらを向く。

時刻は朝7時、朝食を食べるため、食堂で朝食をとる。

今日が最後の日だ。


 明日の夕方には船の上、そして、明日は休んで英気を養えと言われた。


「あいよ」


 『おい』の一言だけで、今サクラが水を欲していることが分かる。

スープの皿を持ったままに、水を注ぐ。


「なぁ」


 そう言って声をかける。


「あぁ、今日が最後だな、なに、ちゃんとわかっている、カルカトス、今日で勝つぞ」


「……あぁ、今日がラストチャンス、掴んで物にして、大手を振っていこう」


 図らずして同じタイミングで食事を終え、同じタイミングで立ち上がり、歩幅の差で俺が少し先を歩くが、ペースは同じ。


 俺からすればサクラはとんでもない天才だ。

そして、サクラ曰く、俺もまた天才だと。


 そんな2人は、息を合わせることだけに数日をつぎ込めば、知らずとこうなる。


「スープの皿頼む」


 そう言って、皿を渡されるタイミングで、俺もスプーンなどの食器をサクラのメインの皿に乗せる。


「「ご馳走様でした!」」


 食堂の係に当たっている兵士に言う。


「おう!お前らは今日で帰るんだったな!?」


「そうだが!?なにか!?」


 食堂はガヤガヤしているから、声は大きく張らなければ届かないのだ。


「頑張れよ!あんたらならやれる!テレビから応援してるぜ!」


 そうそう、あの2対2の大会はテレビで放映されるらしいな。


「ありがとうございます!頑張ります!」


「とーぜん優勝あるのみ!」


 そんな調子で訓練場に出てくる。


「さて、今日が最後だね、悲しく思う……ルールは昨日と同じ、全員訓練用の剣で勝負だ」


 そう、昨日から木剣ではなく、訓練用の本物の剣。

殺す気ならば、本当に死ぬ。


「さて、今日はどれで行こうか?」


「そんなもの、いつも決めていないだろう?臨機応変にやるのが我らだ、何よりも」


「「全力で行くぞ!」」


「ははっ!こい!なんでも、来いっ!」


 今回も、2人とも、主役になりたいんだ。だから、同じく踏み込む。


「〈炎竜の吐息(ドラゴンブレス)〉っ!」


「『悪夢魔術(ナイトメアマジック)』」


 息を地面に吐きつけて、そのまま地面を巻き上げながら顔を上げて剣聖にブレスを放つ。


 煙幕に包まれる瞬間、サクラを軽く一瞥する。


『あんまり吐くと体に毒だぞ』


 と、視線で送る


『そんなこと私がいちばんわかっている』


 そう返された。

だろうなと思いながら、煙に包まれる。


 身体の一部を鳥に変えて、剛翼と豪脚を手にする。


 強く羽ばたき、地面をスレスレに、豪脚の爪が、剣聖の元へ高速で滑り込む。


 当然こんなのじゃダメージが与えられないのはわかっている。

軽くかわされて、俺は地面スレスレから少し体勢を直したあたり。


 しかし俺は手に握った剣で、切り上げて襲いかかる。

その時にはブレスは止んでおり、ドスンと巨大な音が響く。


 そして、煙幕を切ってサクラが真上から襲いかかる。


 同じタイミングで俺の剣も剣聖に触れる。

その俺たちの攻撃を、俺のは足で蹴り飛ばされ、そのまま不安定な片足で上空の剣を受け止めた。


 衝撃が土埃を吹き飛ばし、視界が晴れた。


「いい動きだァ!危なかったよ!」


 そう賞賛する剣聖。

しかし、今の俺たちに言葉を返す余裕はない。


「サクラァァ!」


 目を合わせる。

熱のせいで頬を赤らめながらも、がっちりと目を合わせ


「あぁ!やるんだなぁ!?」


 俺たちのコンビ技、その最高傑作を見せつけてやる。


「面白い!まだあるんだね!?」


 そして、俺たちは戦った。


「っぐおぉ……痛てぇ……!」


「負けた……しかし……勝ったぞ……!」


「あぁ……驚かされたね、君たちには」


 苦悶の顔で痛むところを抑える俺たちに、力なく笑いかける剣聖。


 その頬には、一筋の赤い線。

そう、俺たちは、ついに傷をつけれた。


「……まさか魔法無しで傷をつけられることになるとは……ちょっとショックかなぁ……でもそれ以上に嬉しいや

おめでとう、そして、頑張ってくれ」


 そう言って、俺たちを称えてくれた。


「ありがとうございます、よかったら、見てください」


「無論!貴様に傷をつけた我々に敵などいるはずがない!」


「そう高く評価してくれて助かるよ……じゃ、頑張ってね」


 そう言われ見送られる。

今から帰ろう、アイビーの元へ。



 カルカトス達が去った数分後


「よろしいのですか?剣聖」


「へ??何が?」


「いえ……あの……二対一戦い方は目を見張るものばかりではありますが、本番は二対二ではありませんでしたか?」


 少しのあいだ、風が吹く音だけが聞こえる。


「まぁ、彼らならきっとうまくやってくれる……」


「剣聖!俺の目を見ていってくださいよ!?」

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