綺麗な蝶々【ミリア】
9月15日、肌寒さが1層増してきた。
そろそろ木の葉も色付く頃だろうか?
「……あ、カルカトス先輩じゃないですか〜!おかえりなさーい!」
カルカトスさんが、魔王城にいる……珍しっ!?
って言うか、お隣に女の子……仮面をつけて……って言うかあの仮面カルカトスさんがつけてたやつ?あのマントも……何者だろう?
「おぉ、ただいまミリア、紹介しよう、俺の義理の妹、アイビーだ」
「あ、アイビー アクナイトです……よ、よろしくお願いしますっ!」
ペコッと頭を下げて挨拶をする。
おぉ、身長はカルカトス先輩と同じで大っきいけど可愛いなぁ。
「うん!よろしくね〜!私ミリア!吸血鬼だよ〜
……ん?先輩の義理の妹……ってことは君もキメラ?」
「……ま、まぁ、そういうことになりますね……」
へぇ!?2人目……それもカルカトスと同じか……まずいねコレは。
「君もキメラ……ね、で?どうしたの?魔王軍入るの?」
この質問は超重要だ。
「で、出来ればそうしたいな……って」
「……へぇ?」
「お?どうしたミリアなにか不満か?
安心しろ、弱いことは無い……少なくとも俺よりは強い」
「っな!?」
この顔は……本気で言っている……?
「か、買いかぶりです……」
「1人で守護者倒したんだ……もっと胸を張れよ」
背中をポンッと叩くと嬉しそうに下を向く……本物ってわけね。
まずいね、これだと次の報告の結果は芳しく無さそうだ。
「恐ろしいね、なら私より全然強いわけかな……もしかしてカルカトス先輩の下につくっすか?『幻霧軍』に」
「その名前の改名にも来たよ『幻獣 カトス』として四天王頑張るよ」
「カルカトスは有名ですからね〜、じゃ、カトス先輩って事ですか?」
「ま、そんなところ」
なるほど『カルカトス』はカトスか……覚えておかないと……本当に不味いな。
「幻獣……なんでっすか?」
「いやー、俺の軍種族様々でさ……『悪夢魔術』」
そう言った途端に、身体がぐにゃりとうねり、翼になった。
「……『悪夢魔術』」
こっちのアイビーちゃんも、ぐにゃっとうねった体の一部が体から離れて、小さい、ネズミのような四足歩行の……変な鳥を作り出した。
「!アイビーちゃんもできるんだ……」
「……えぇ、まぁ……」
ちょっと嬉しそうだ。
しかしまぁ、見れば見るほど似てるなぁ、この2人。
「ま、もうそろそろ魔王様の所行ってくる、じゃあね」
「あ、行ってらっしゃーい」
そう言って離れたあと、私は急いで魔王城の庭へ向かった。
胸ポケットから取り出した青く光る石を握り、目を瞑る。
「……聞こえますか?」
そういうと、少しのタイムラグの後、声が来た。
「な、なんだね……この時間は忙しいんだ、無闇にかけてくるんじゃない」
そう、軽く叱られたが、言葉は聞かず続ける。
「違うんです、新たな戦力が魔王軍に加わってしまいました」
「……なに?カルカトス以外に誰かがか?」
「はい、まずカルカトスは『幻獣 カトス』という名を名乗る用で、軍の構成は様々な種をかきあつめたものになるらしく、恐らく最も不確定要素の多い軍となるでしょう」
「……続けろ」
向こうも、わかってくれてらしい。
「続けて報告します……新たな戦力、それはカルカトスを超えるものだと、自称しています」
「なに……!?今や英雄として呼ばれるのも時間の問題、そんな評価を世間から集めているカルカトスよりも……強い?冒険者ランクに換算すると……プラチナ……か?」
「そこら辺の力の基準は私にはよくわかりませんが……いわく、守護者を単独で撃破したとの事」
「……!この度の60層の守護者は四体居た。
1体はこちらの最高戦力の1人、土の勇者ピュー フォルテが
2体目は最近プラチナランクに上がったとある冒険者が
3体目はそっちのラジアンという四天王のひとりが……
つまり、その新参者は、少なくとも上記3名と同等というわけか」
「はい、そういうことですね」
「……プラチナ上位……ミスリル手前程度、危険度で言うなら、そっちのディスターヴと同等とみた」
「……本気ですか……!?」
ディスターヴさんは、戦っているところをあまり見かけないが……強い強いという話は何年も前から聞き及んでいる。
「それぐらい警戒しろということだ……これ以降の報告持っている……思いのほか君に頼ることになりそうだ」
「……この重役、こなしてみせます」
「こなしてもらわなくては困る……武運を祈る」
「あなたこそ……!」
そう言って、交信を終える。
「……っふー、大変なことになってきたなぁ……」
庭の当たりを見回す……白い……何かが飛んでいる。
花びらかと思ったが……違う、あれは……蝶?
ピラピラと愛らしく羽ばたき、ゆっくりとこちらへよってくる。
その蝶の羽が美しく、つい手を出してとまらせる。
その瞬間、その喋に目を奪われたその瞬間。
この身の毛のよだつ恐怖の感覚は……ラジアンを思い出した。
以前に、聖魔法によって苦しめられていたあのラジアンに近寄っては行けないのと同じ感じたが……遅かった。
おぞましいまでの聖魔法の力が……パンっと弾けた。
その瞬間、目を通じてありとあらゆるものがシャットアウトされた。
力なくその場に倒れる……意識を手放すまいと抵抗する暇さえなかったのだった。




