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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄トハ、覚悟ト勇気ニ溢レル者ダ
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同期組飲み会【カルカトス】

「……行ってきます、アイビー」


「はい、行ってらっしゃい!」


 アイビーを家に置いて、今日はギルドへ足を運ぶ。

……いや、正確にはギルドの二階にある酒場に用がある。


 ギルドカードに届いたメールを確認する。


『おいお前ら!3日後の21時!ギルドの二階で酒飲もう!』


 サクラからのメール。

同期組と書かれたグループに送られた。

3日前にこれを送ってくるあたり、あいつ普通に配慮とかできるんだな……おかげでこの日を空けておくことが出来た。


 グエルさんも、ラングも、バカドラもくる。無論俺も行く。

アイビーにはご飯も食べ終わってたし、あとは寝るだけだろう。

俺が飲みに行くことも快く快諾してくれた。


「……あ、どうもこんばんは」


 後ろから声をかけられ振り向く。

黒いローブに身を包み、自分の胸に届きそうな長い棒を持つ、魔女らしい帽子をかぶるグエルさん。


「あ、グエルさん、こんばんは」


 どうやら俺が一番乗りらしい……

ほかの二人も少しして現れた。時間にちょうど着いていた。

みな冒険者らしく、格好はいつでも戦えるような格好。

剣を腰にさしたり、背中に武器を背負ったり、魔法具を持っていたり。


 それでも飲みに来ていた。

2階へ上がり、席に着く。


 ラングとはよく飲むが、この4人で飲むのは初めてかな……?


「しかし、急にどうした?」


 別に嫌なわけじゃないが、少し気になる。

こんなことは今まで無かったからな……一体急にどうしてみんなで飲もうだなんて言い始めたのか。


「……へっ?」


 そんな俺の質問に答えたのは、俺と同じく誘われた側のはずのグエルさん。


「……え?」


 オウム返しに言葉を返すと、気まずそうな顔でサクラの方を見る……『代わりに言ってくれ』と催促してるように見えた。


「……人間よ、今日は……私たちが冒険者になってちょうど半年が経つんだぞ……?」


「……あ……あぁ〜……えぇ!?マジで!?」


「ま、まじまじ、ってかカルの方が覚えてそうだけどな……意外だぜ」


 ラングがそう言って言葉通り意外そうにこちらを見る。


「私たちはもう既にライトからお祝いの品を貰っている……昨日だけどな」


 そう言って何かを思い出す……プレゼントを思い出してるのかな?


「私はパーティーメンバーの皆さんから今日の朝に……」


 バンクさんたちから貰った品々を思い出しているのか頬が緩んでいる。


「カルは……」


 そう言って、話題を振ろうとしたラング、しかし言葉の続きは『しまった』という顔で中断された。


「「……あぁ〜……あーあ」」


 すごいな、サクラとグエルさんの2人がハモるのは珍しいが……そんな哀れみの目でこっちを見るな……!


「……そんな目で見るなよ……ほら、飲もう……!」


 そう言って会話を終わらせる。

パチンと頭を叩かれるラング。


「……んんっ!」


 咳払いをするサクラ。

こいつがどうやら音頭をとるらしい。


「えぇ、この半年、皆色々なことがあっただろう……だが、我々は今ここで4人全員揃っている……半年生き抜いたことと、もう半年時間がたってもまた会えるように、より強く、より、前へ……そんな我々の更なる発展を祈りぃ……」


 そう言って、1回座って、酒を持ち、こくりと頷き


「「「「乾杯!」」」」


 皆ジョッキを上に傾ける。

そして、みんな雑談を始める。


「そういえば、武闘祭って知ってるか?」


 突然話を変えて、そんな話を始めるサクラ。


「何それ?」


「……私も知らないですね」


 俺もグエルさんも知らない事だった。


「武闘祭って言ってな……娯楽島って言う名前も決まってないイベント会場の開催記念にやるらしい……世界中の強い奴らが集まって、真の最強を決めるんだとか……剣聖とか、前の生誕祭に出なかった最強と戦えるらしい……それだから私も既に参加を決めている」


「あ、思い出しました!バンクさんから聞いてますそれ、私達も出ますね」


「お、そうなんだ、当たるのが楽しみだな!」


 バンクがそう言ってまた飲む。

その隣に座るバカドラは、酒を飲みながら、俺をじっと見ている……


「……俺も、俺も行こうかな」


 そういうと、ジョッキで口元を隠しながらでもわかるほどにニヤリと笑う。


「ほぅ?せいぜい勝ち上がってきてくれよ?私()がお前に負けることは無い……確かな一勝を、準決勝辺りで運んできてくれ?」


 意地の悪いやつだが……その言葉に怒りを覚える前に、意外な言葉が飛び、思わずラングを見る。


「……変わったろ?」


 そう言って、両手をヒラヒラさせて笑う。


「……これはこれは……厄介な相手に仕上がったな……2戦2敗……そろそろ黒星をつけてやらんとそのでかい口が留まるところを知らんみたいだからな」


 そう言ってニヤリとジョッキを近づける。

それに気づいたらしく、同じくニヤリと笑い


「望むところだ……!」


 ガコンと、いい音が鳴り響いた。



 その後は、他愛のない話。

やれ『お前はこの先どうするんだー?』とか『迷宮にはまだ潜るのかー?』だの『最近のあのニュース見ましたー?』だったりの、他愛のない話。

これからと、これまでと、色々話し合って、でも酒に流されて次の日に持ち込めるかは……怪しいところ。


 この見た目にして意外にもラングが酒に弱い。

それに反して、やたらと酒に強いグエルさん。

俺はちょっと小細工ができるが……まぁ今はしていない。


 そんなこんなで、1ミリも動けなくなったラングを背負ってサクラはもう帰るらしい。

仲良くなったな……あの二人。


 『そろそろ俺達も解散しましょうか』


 と、家へ帰るように促すと。


「……あの、良かったらもう1軒だけ付き合ってくれませんか?」


 まだ飲むのか……グロッキーな俺には少々こたえるが……まぁ、仕方ない、付き合ってやろう。


「いいですよ、行きましょっか」


 そう言って、まだ夜は続く。

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