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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄トハ、覚悟ト勇気ニ溢レル者ダ
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フィナーレへ続く

「大丈夫か!?アイビー!!」


 不味い不味い不味い!!どう見ても大丈夫じゃない!

っくそぉ!こうなればやるしかないか……上手く動かない体から手だけを動かして、アイテムボックスに手を突っ込む。


「っクソっ、こいつにだけは借りたくなかったなぁ……!」


 こいつ……『こいつ(フレイ)』は仲間の命を奪った最悪の敵。

しかし、こいつの聖魔法は本物だ。

一か八かで手が引っかかったのがマインさんだった。

彼女のおかげで何となく傾向がわかってきた。

多分、英雄の力を借りられる。

ならばと、予想した。

『アライト ワクレフト』

彼は呪いか、鎖を操るあの力のどちらかかその両方。

『クロン ウェイパー』

彼はあの剣さばきや、冷静さ、もしくは彼の持つ固有スキルで集めた力のどれかかな?

『ミラン ダリン』

彼女は今や俺の剣だが、これも取り込めば……剣術か、時間を止められるかかな?

そして『フレア メイ テンス』こと『フレイ メイ テンス』こと『フレイ』件『フレア』よ輝石の力は……!


「聖魔法、もしくはそれに近しい癒しの力っ!」


 片方の手から輝石を取り込む……!


 視界が白い光に包まれ、そしてゆっっくりと晴れる。

視界の端はまだ白い……まだご出走を超えた程度の実力だからか?


「……おぉ、私のところに来ましたか……ということは……うぅん、誰と戦ってるんですか?」


 ニコッと愛らしく美しい笑みでこちらを見るフレイ。


「サーラーさんだよ、すごく強い」


「あぁ、確かに彼はとんでもなく強い……あれ?なら私じゃなくてクロンさんとかの方が良かったんじゃ?」


「それが今回は一対一じゃなくてね、それもピンポイントで内蔵が弱い少女がボロボロで……助けたいんだ」


 真摯に頼む。助けてくれと。


「……ふむ、ピンイントですねぇ……身体が弱い子なんですか?迷宮探索に向いてないとしか……」


「いや、そういうんじゃないなぁ……呪いらしい……聖女なら解呪もちょちょいのちょいだろ?」


 そう問いかけると、ニヤリと笑ったあと、疑問げな顔をする。


「内蔵にだけ呪いですか……凄い技術ですし、それにあなた2つ目でしょ?それならその子に『アライトの輝石』あげたら万事OKじゃ?」


「あぁ……いや、今、回復役が少なくって俺もそっちに回れるなら回りたいんだ」


「あぁ、分かりました、なら私の固有スキルであなたのステータス弄りますね」


「っえ?いいんだ?っていうかそんなことできたんだ!?」


「魔法が強くなったのは魔力に全部振ったからですよ〜……よし、筋力とか俊敏に強めに……これで私の回復魔法はあげられましたね、とはいえ正魔法をあげたら身体に合わないから白魔法あげますよ、それでいいですね?

綺麗にぴっちり才能が入ってますね……うん、入りません」


「あ、はい……物分りがいいな」


「ま、そういう『約束』ですから」


 そう言って俺の背をポンッと押す。


「謝りませんよ、そういう戦いだったんですから……でも、応援はしてます、頑張れ」


「……調子狂うなぁ」


 ニコニコと笑いながら手を振っているフレイの姿が霞み始める。


 地面を駆け出しているその最中、そこからまた始まる。

現実世界じゃ1秒にも満たないその瞬間で、あの力を得て見せた。


「アイビー!『白魔法』〈治癒(ヒール)〉!」


 マインさんの奇跡のおかげで馬鹿げた魔力になっていたが、魔法を使う機会に恵まれずいまいちその数値の大きさに実感を感じられなかったが……みるみるうちに傷が治っていくのを見ると、その規格外さが露見する。


「か、回復!?」


 バカドラが目を見開く。


「ははっ、なんかできたわ……アイビー……戦える?」


 体の中の異常を調べる。

なるほど確かにこれは酷い呪いがかかってる……


「……まだ、やらせてください……役に立ってみせますから……!」


「……あぁ、わかった」


 しかし、その俺の声は聞こえてないらしく、また口を開く。


「……私は……変わらないといけないんですね」


「ん?へ?何が?」


「もう私は……『あなた』から、手を離さなきゃ」


 ?なんの事だ?


「『悪夢魔術(ナイトメアマジック)』」


 そういうと、ずっと体の様子を見ていたからわかる。

描き変わる……新しく、内蔵が、脳さえも、全てが入れ替わっていく。


「あ、アイビー……その魔法……!?」


「……私が……あなたの……捨てちゃった……勝たなきゃ……だめだ」


 そううわ言を繰り返しながら、取り憑かれたように立ち上がる。


「あ、アイビー!!」


 強めに呼びかける、振り返る。


「わかってます」


 そういうと地面を蹴って飛び出す。

フロウさんを救って、前衛としてこれ以上ない素晴らしい動きが遠目に見える。


「に、人間……あいつは何者だ?」


 バカドラが、そう聞いてきた。


「俺が聞きたいぐらいだ……」


 身体はひとりでに震えていた。


「アイビー……?」


 なんで、お前がその魔法を


「んんっ!?雰囲気が変わったね、こっちももっと音量をあげなくては……!」


 ボリュームが上がる。

精霊たちも地面に落ちてくる。


「……っがは……うげぇ」


 血がビチャリと落ちる。

フロウさんも、ラングも、それ以外の2人も、アイビー以外はみんな、みーんな動けていない。


 俺とバカドラは固有スキルを使ってるからか、まだ立てている。


「っ!こ、これはそろそろ『終わらせないと』」


 焦って楽器が浮あがる。

凄い、たった1人であの化け物に張り合って……いや、優勢だ!

ラッパやフルート、バイオリンにコントラバス、ピアノ、様々な音が力をより強める。


「私は……負けられません」

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