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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄トハ、覚悟ト勇気ニ溢レル者ダ
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酒の席で

 カウンター席に座り、酒が来たのを見計らい声をかけてくる。


「……今回さ、テイルが命を落としたじゃないか?」


 いきなり重苦しい話題を投げつけてくる。

あの時もそうだ、彼は自分の意見を出したり、自分からなにかアクションを起こすのは苦手だが、それが相まってか、意を決して口を開いた彼の言葉は私にとって何よりも重いの。


「そうね……」


 酒を口に運ぶ。


「いつかは……やっぱりこういう仕事をしているからさ、命を落とすわけじゃん?」


 一瞬むせそうになった、なぜなら

この話は、昨日聞いた。()()()()から。


 本当にこの2人はお似合いだ。

同じことをほとんど同じ時期に、それも私に相談してくる。

次の言葉はこうだ。


「「死んでしまう前に、想いを伝えるべきだよな?」っ!?」


「ごめんなさい、驚かせちゃったかしら?何となく、次に言いたそうなことがわかったからさ、被せちゃった」


「凄いな、メリッサには隠し事できなさそうだ、それで、どう思うかな?」


 私がこの二人の間に入って愛を叫ぶ気は1ミリもない。

だからこそ、アーガンにも、アモラスの時とおなじ言葉を返す。


「やっぱり伝えるべきだと思うわよ、けども、それを伝えるのはなかなかに勇気がいるわ」


 現に今の私も、思いを言葉にして伝えあぐねている。


「勇気かぁ、俺にとっては1番難易度の高いものを要求されるなぁ」


「そうね、でも、テイルはファクトが好きだったと思うわ、でもそれを伝えられなくって、私は凄く残念だと思ったの、愛し合っているであろう2人の恋が、成就するはずのその恋が、実らぬままに刈り取られるなんて、悲しいことはないわ」


「……俺も、いつか勇気を手にできるだろうか?」


 独り言のようにつぶやく。


「できるわよ、あなたは私たちのリーダーなのだから、胸を張って。

仲間の命を支えなければならない司令塔がグラグラで、私たちはどうすればいいのよ?

大変なことは私達もわかっている。

自分のミス1つで仲間を失う危険と隣り合わせ、でも、それでも私達は長い間あのスタイルでやって行けたのはあなたのおかげだったのよ?」


 いかにあなたが素晴らしいか、それを私なりに伝えてみる。


「……うん、ありがとう、メリッサにはいつも助けられてばっかりだ」


「それ以上に私が助けられてるわよ」


 羽を使い、隣にいる彼を包み込む。

手で頭をポンポンと叩いてやると、恥ずかしそうにした後に「やめてくれよ……」と下を向いて言っているが、満更でも無さそうだ。


 そんな彼の反応が嬉しいのだから辞める訳にはいかない。

ひとしきり撫でて、満足したら手を離してあげる。


「頑張ってね、私たちのリーダー、一緒に頑張ろ」


「……あぁ、分かった、頑張るよ俺」


 ぎゅっと拳を握る。

仲間を失ったあと、それでも前に進もうとする『勇気』それはもうその拳の中に握られているはず。


「頑張れ、アーガン」


 私のヒーロー、頑張れ。

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