ただいま【カルカトス】
「……っぐはっ……ぐえっ」
シアさんがアイビーをお風呂に入れてくれている間に、洗い物を終え、そして……リビングでうずくまる。
「……アイビー……おま……なんだあれ……!?」
魔王様たちと別れて、こっちに飛んで帰ってきた。
アイビーが飛びついてきたり、ご飯を作ってくれているなんて嬉しかった。
が、しかしだ……以前の戦闘訓練から、記憶力はとてもいいとわかっていた……故に美味いと思っていた。
「……な、何入れたんだ……!?」
シアさんも苦しそうではあったか、何とか元通り……白魔法か……!?
「見た目普通なのによ!?」
アイビーにはまた、色々教えてあげなくては。
「上がりましたー」
「そ、そうか、ゆっくりして行ってください、俺もお風呂入ってきます」
服を脱ぎ、女性用の服とかあるからそれも洗濯機へ入れ、スイッチを入れ風呂に入る。
「……っあぁ〜……」
久しぶりのお風呂……息が漏れる。
シャワー暖かいな……
向こうの方では濡れたタオルとかで体を拭く程度……俺マジ贅沢。
ラジアンも女の子だしまた風呂に入れてやろうか?
魔界側の戦力は十分。
俺に与えられたミッションは、人間側を嗅ぎ回る。
戦争や、奇襲なんかは俺がいる限りは筒抜けという訳だ。
「クックックッ」
悪い笑いかたを風呂場でする。
少し反響して、少ししてから恥ずかしくなっていた。
髪を拭いて服を着て、リビングに戻る。
「?どうした?」
アイビーがこちらをじっと見る。
「カルさん、私を一緒に迷宮探索に連れて行ってください!」
「!?」
びっくりする発言だ。
「うぅーん……」
「浅い所ぐらいなら大丈夫なんじゃないのかな?なんて思うんです」
そうシアさんが言う。
確かに厳しさを知ってもらうという面ではいいかもしれないが……アイビーは並以上だろう。
きっと浅い所か、まぁまぁいいところまで行けると思う。
故に俺みたいに楽しくなってくる。
「確かに、アイビーは強いからな、迷宮で命を落とすことはまずなさそうだ、それに俺も守るからな」
俺が頷きながら話すと、目をキラキラと光らせる。
「が!しかし!ネルカート大迷宮はシルバーランク推奨の迷宮、冒険者でもないアイビーにはそもそも入れない!」
ビシッ!と指を指し、言葉を告げる。
「……あ、そんなルールありましたね」
シアさんがポンと手を叩く。
「シルバーランク以上なら連れて行ってくれるんですか!?」
「ん?あぁ、まぁそういうことだな」
そう答えると珍しくニヤリと笑ったアイビー。
自慢げに胸を張り……うん、胸を張り、カードを1枚見せつける。
「……はぁ!?これっ『ギルドカード』!?しかもゴールドランクゥ!?」
お、俺より……上……!?
「っな!?これなんだよアイビー!?」
シアさんは目を見開いて言葉がでないでいる。
それもそうだろう、ゴールドランクは推薦書がなければいけない。
守護者いっぱい倒した俺でもまだ2枚ぐらい……アリーさんとギルシュさんの2人からだけ……なのに!?
「お父さんが推薦書くれたりして、結構簡単に上がれたんですよね」
いや、そんな凄い人なのになんであんな所で落ちぶれていたんだ?
「ええっと……俺と出会った時から足が早かったり、戦った時強かったりしたのはそういうわけか……
なんであんな所にいたんだ?」
「それは……ちょっと家を飛び出したら、思ったよりも大変で何年だったかなぁ……3年ぐらいあそこら辺に住んでました」
サバイバル能力というか、生命力の高さはゴールドランクとなれば……うん、納得だ。
「ところで!私を連れていってくれるんですよね!?」
文句はない、実力はバンクさん達と同等……うん
「あぁ……構わないよ……どこまでも着いてくるといい」
嬉しそうに背伸びを繰り返す。
彼女の今のところわかっている数少ない癖のひとつ。
「よかったね……にしても本当に強いんだ」
「はい、一時期『クロ』って名前で冒険者やってましたからね、ネルカートの……西の方だったかな?そこで」
へぇ、クロか……うん、思い出せばいたのを覚えている。
はぁ、マジで有名なんだな、アイビー。
「明日!迷宮に連れて行ってくださいね?」
「あぁ、任せろ……最も、俺が助けてもらうかもだけどな」
早めに寝て……そして俺もいいところを見せてやらねば!
シアさんがアイビーと一緒に寝てあげるらしく、明日の朝に同じぐらいの時間に教会に行くらしい。
アイビーはよくシアさんに懐いている……微笑ましい。
姉妹程度の年の差のはずだが……シアさんから感じる母性?のせいで親子に見えなくもない。
器の広さの違いを見せつけられたなぁ。
久しぶりに自室で布団を敷いて眠りにつく。
「俺はまだ覚えてたな、デクター」
思い出の中だけの気のいい仲間に語りかける。




