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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
アレとコレの間
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動機

「僕はね、究極の生命体をめざしたんだ」


「……はぁ」


 こちらの許可なく話し出す自分勝手さは死にかけてもなお変わらないわけか。


 だが、興味があるのは事実。


「僕は、ただの人間なんだ」


「……皮肉か?それとも謎かけか」


「ははっ、本当にそのままの意味さ、ただの凡人の僕はね、頑張ったんだ、究極を目指して」


 刺されたのに悠長に話すところを見るに、こいつも自分の体になにか細工をしているのだろうか?


「……何故だ?」


「近い将来に、戦争が起こる。

戦争が起こると、どうなると思う?」


「たくさんの人が死ぬ」


「……あぁ、確かしそれもそうだ、僕はね『武器屋が儲かる』と思うんだ」


「……は?」


「戦争に必要なのは、食料と、知略と、数と、武器。

それが全てじゃないが、数は人は持っている。

食料も畑や備蓄がある。

知略なんて、僕を超える天才がいるからいいんだ。

僕はお金が欲しかった。

だから初めは武器を作っていたんだが……身体が弱くてね、頑張っても、包丁ひとつ作れなかった」


 戦争を悲劇ではなく、商売の場として見ていたのか……


「そこで、君たちだよ……人知を超えた強さ、そして、戸籍上存在することの無い、実質数に数えられないもの達。

それに見合った力を与え、1人で何人も薙ぎ払う。

固有スキルはものにもよるが、戦争を終わらせるほどのものもあるんだ……どうだい!?各種方面の天才を『作れば』いいんだ!」


「……俺たちを売って、金にしようと?」


「あぁ!だから君たちに貸した命令は『名を売れ』」


 知名度はいずれブランドとなり、高値で売れる。

だから、か。


「だが、俺がキメラだと暴露してしまったぞ?」


「わずか1年未満で生誕祭で上位入賞するほどのコスパがあると、一部の人間にはそう写ったはずだ。

シュプ フングの実験は成功していると、誰もがわかるんだ」


「……なんでそこまで金が欲しい?」


「金でできないことは無いから、だ」


「……馬鹿らしい」


「……カルカトス……戦争は時期に起きるよ」


「………」


「人と魔族は分かり合えやしない。

『歴史は繰り返す』、だから皆歴史を過去に残す。

反面教師としてでは無く、来るべき戦争のための教科書として、歴史は残るんだ」


「…………」


 確かに、戦争が起こるかはともかく、魔族への不信感は、ここ5000年の中で最も強まってしまっている。


「カルカトス……君は疑問に思ったことはないか?

君は『何のキメラなのか』」


「!……気になる……確かに気になるな」


「最後だし、教えてあげよう。

君の黒い髪と赤い瞳は原初の魔族のようだね……その昔1万年前に、異世界からの勇者ココアはカラミスという魔族とアグナムートという初代魔王を倒した。

その2人の魔族は今の世界では『原初の魔族』と呼ばれている。

問題だ……魔族は死ぬとどうなる?」


「……灰になる」


「正解だ……だが、彼女と彼の剣は2本ともその場に残ったんだそうだ、2人の灰を浴びたその剣は今どこにあると思う?」


「……まさかっ!?」


「君は、そのうちの1本、『鮮血剣アデサヤ』と、初代魔王『アグナムート ハイラーク』の遺灰から生まれたんだ!」


「……俺は……生き物ですらなかったのか……!?」


「そういうことになるね……君は剣そのものだ」


「……嘘だろ」


「君も疑問に思わなかったかい?この世で最も優れた種族は竜族だ……だが、君は成功作にもかかわらず、竜ベースでは無い……なら、それよりも優れたものは?」


「……勇者……魔王……聖女……剣聖……国王」


「そう……そういうことさ」


「……そうだったのか……!」


「……まぁ、君の更なる活躍を地獄から見守ってるよ」


「……言い残すのはそれだけか?」


「あ、あとひとつ、君は人間にはなれない、」


 ザクッと、音が響き渡る。

最後まで最低なヤツだった。

シュプ フング

その名の由来はシュプリーム(最高位な)と

ドイツ語で最初を意味するアンファングをもじってとりました。


アグナムート、この名前を出したのは何話ぶりなんでしょうか?

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