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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
アレとコレの間
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限界と硬度と組み換えと未知

「『遥か彼方の貴方』『いつも遠くで私は届かない』『だから今全力で』『貴方の剣となる』《限界(リミットオーバー)》」


「『遥か彼方の貴方』『いつも出遅れ俺は届かない』『だから今全力で』『貴方の盾となる』《硬度限界(リミットアーマー)》」


「『遥か彼方の貴方』『私は今すぐ貴方の元へ』『だから今全力で』『貴方の知となる』《限界組替え(リミットスイッチ)》」


「『我は摘み取るもの』『終末論を綴るもの』『悪夢となり飲み込む』《限界突破(リミットブレイク)》」


 全員が同時に固有スキルを発動する。

彼ら、彼女らの紡いだ言葉は……すぐにわかった『俺のための言葉だ』


 この3人は俺のために作られてしまったんだ。


『俺の剣に』『俺の盾に』『俺の知能に』俺に尽くすために作られた。


 そして今は不揃いながらも俺の代わりというわけか。


「さぁ!かかってこい!」


 その言葉に反応し、2人は別々の方向へ走り出す。

コリが手を叩く。2人が消え、目の前に現れる。


「くらえっ!」


 目を見開き、狙いを定め蹴りを振るうアルマトゥーラ


「ぶっ倒す!」


 感情的な言葉を使いながら冷静な表情のクリンゲ


 その2人を無視し、2人が来た空間へ走り込む。

しかしそれを読んでいたとばかりに手を叩くコリ。

元いた場所に戻される。発動条件は『手を叩く』か!?


「受けろってことか!?」


 ナイトラインを構え、クリンゲの大剣を横にずらす。

アルマトゥーラの正確に首元を狙う蹴りは同じように脚を使い、止める。


 背後が薄く発光した。

その方向には光の玉がいくつか……コリの魔法か!?


「っ!くそっ!」


 左手の篭手を使い、光弾をたたき落とす。


「「「っ!」」」


「流石は三位一体皆同じこと言うんだなっ!!」


 反撃!止めた脚を強く蹴り返し、アルマトゥーラを蹴り飛ばす。


 クリンゲの装甲をこの体制から突き穿つ方法を知らない俺はアルマトゥーラを蹴った勢いで押し飛ばし、吹き飛ばす。

体重はそのままのようだ。


 コリのいた方向に、剣を伸ばすも、向こうの方に転移はしてくれない。


「クリンゲ!アルマ!」


 コリが叫ぶ、その声に反応し、2人は頷く。


「『瞳に映る』」


 コリの瞳が淡く光る。


「『刃煌めく』」


 クリンゲの剣が淡く光る。


「『鎧破れぬ』」


 アルマトゥーラの胴体が淡く光る。


「「「接合《総動員》」」」


 皆、淡く光る。


「足りないものを……補ったか……!」


 崩壊するならそれに負けない硬さを。

硬く動きが落ちるなら空間を入れ換え。

決定打は仲間と共に作り出す。


 クリンゲが走り、一瞬にして背後から現れる。

振り向き、剣を受けようとした瞬間、足からバランスを崩す。


「っな!?」


 足に四角い穴が空く。

肉体の一部を別の空間と入れ替えた……?血が溢れ出て、遠くでブロック状の俺の足の一部が断面ごと見える。


 グラグラの片足、剣を受け止める。

アルマトゥーラを彷彿とさせる重い一撃。


 受けている俺の胴を強く鈍い衝撃が走る。


「っがふっ!」


 アルマトゥーラが低い姿勢で突然現れ、鋭く硬く重い……限界を『超えた』一蹴り。


 吹き飛び、アルマトゥーラ達から離れると、仰向けの目の前に、コリの拳、その拳の先には光の玉が……急いで手を前に出し、ガードをはる。


 目の前から、目を閉じたくなるほどの強い光があっという間に消え、またも胴体に突然現れ、硬い地面にめり込む。


「っがぁ!」


 この細かい転移、厄介すぎる!


「……っふー、はー……はーっ……!」


 ただ、コリのスタミナの消費は激しいようだ……あの足を吹き飛ばした転移は使える回数に限りがあるのだろうか?


「……っづ……ヒュー……ゴホッ……」


 ただ俺のダメージは深刻だ……致命傷だろう。

この限界を超えた再生能力がなければさっきの一撃で死んでいた。


 身体にムチを打ち、立ち上がる。

そして口を開き、この場を乗り越える。


「……俺はここに至るまで、全てのキメラを吸収してきた……それは今この時のための布石なのさ」


「アレをやるつもりかい!?カルカトス!!?」


 ウキウキ、ニコニコのシュプ フング。


「『世界の夜明けを迎えるものは』『廻り蒼空へ彼方へ』『青く強く固く』『音ガセカイを駆けヌケル』『始まりの言葉』『その代償に』『勇気を!』『制約を!』『狂おしいほどの愛を!』《限界の先の未知(アンノウン)》!!」


 口から溢れるあまたの言葉、一言一言が命を持っている生半可なものじゃない。

『知らないハズ』の言葉が溢れて止まらない。


 その一言一言の圧に誰も動けない。


 代償もとんでもない事になる。

でも溢れて止まらず、出し切りひとつに。


「……っはっ!?止めないと!!」


 そのアルマトゥーラの言葉にハッとした顔で、3人が1箇所に集まる。


 光の玉、迫る凶刃、強力な蹴り。


 文字通り目の前、まつ毛が触れるその瞬間。


「今だ!ウンディーネェ!!」


 バシャンと水が弾ける音……身体を突き抜けた3人をここで落とすっ!!


 振り向き、水の体から実体を取り戻し、剣を3人まとめて……全力の一太刀を!


「……喰らえっ……アルマトゥーラ!?」


 1人だけ、こちらを向いていた。

このスキルを忘れていなかったのだろう。2人のカバーに完璧なタイミングで入り込む。


 クリンゲの硬度、アルマトゥーラの強力な蹴り、剣を振り切るその前に止められた……が!


「っなっ!?」


 今度はお前たちが驚く番だ!


 3人まとめて風圧だけで吹き飛ばし、別のところに繋がる空間におくり飛ばす。


「さぁ!反撃開始と行こう!!」

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