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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
アレとコレの間
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決意決戦 二番 覚醒

「ま、下だよな」


 コツコツと音を立てながら階段を降り続ける。


「……なんなんだこの感覚は……!」


 思わず笑みが込み上げてくるほどに調子がいい。

なんだって出来そうだ……もう一度言う、なんだって出来そうだ。


「……みーつけた!リュナ!いたぜ!」


「……待ってカイ……追いついた……あれがカルカトス!」


 短い赤い髪が逆立っている。

青年……腕から先は獣の腕、身体は人のものだ。


 長い黒髪がぬるい風になびく。

少女……その美しい白の羽と、それに反して魔族特有の黒い髪と角はあまりにも不自然だった。


「俺をその名で呼ぶのはやめてもらおうか……『カルカトス ナイトメア』短くても『7110』か『ナイトメア』と呼んでくれ」


 カルカトスは違うんだ。


「?変なこだわりだな……まっいいぜ!ナイトメア!お前を倒す!」


「私も!倒します!」


 さっきのセッカとは違って嫌に感情豊か……人間味のある奴らだ。


 飛びかかってくるカイと呼ばれていた子は爪を振り、俺を切り裂こうとする。


 小太刀で受け、ナイトラインで切り返す。


「危なっ!ははっ!強いなぁ!」


「カイ!前情報と違う!守護者から作った剣がない!」


「言われてみれば……確かに!」


「あれは俺の大切な『カルカトス』の物だからな」


「……頭こんがらがってきた」


「私も……カイ!サポートする!」


「あいよ!」


 恐らくふたりは双子……そのコンビネーションはどんなものか……


「「『合成技術(ロストスキル)』《親愛なる者の危機(ディア・クライシス)》!」」


 一言ももれず、完璧に重なった2人の声が、何かを作り始める。


「……これは……違う人に頼むべきかな」


「?何か言ってるぞ?」


「違う人?どういうことですか!?」


 今日は最高の日だ。


「『親愛なる者』『愛していたもの』『大切な物』『全てを失い作られた』『それが私』『悪夢魔術(ナイトメアマジック)』〈真っ白な私(カルカトスナイトメア)〉」


 光が俺を包み込む。

そして『私』に任せてください。


「……真っ白になったぞ?」


「あれって……見たことある……!」


「ふぅ……なるほどですね『私』を作りましたか……!」


 ははぁ、久しぶりに自分の足で立ちましたね。

でも、ミランから剣を勝ち取ったのは他の誰でもない私なのだから私に持たせてくれてもいいものを……私なんやかんやで1度も見らんに買った証明を手にしてないんですよね。


「私の実績なんて……マイン ウェイパーさんを倒したぐらい……無意識で」


 なんて落ち込んでいる私に襲いかかってくるこの2人を倒せばいいんでしょうね。


「っずあっ!?」


「きゃっ!?」


「お2人さん、私はちょっと強いですよ?

あなたたちの愛は素晴らしいですが、それだけでは巨悪には打ち勝てませんでしたからね」


 そう言って距離を詰める。


 剣を独特の構えから切り上げる。


「その戦法は2人には無力……ですよね!」


「よく知ってるね!前の話だけども!」


 剣をカイ君の方で手放し、その件を奪おうとするカイ君を止めるため、剣を蹴って空中で回転させる。


 その隙に、リュナさんの方へ詰め寄り、掴みにかかる。


「っ!そうはさせません!」


 光の剣を、振り下ろす。

左手の篭手でそれを防ぎ、掴みは諦め蹴り飛ばす。


「っがはっ!痛てぇ!」


「!何が……?」


 入れ替わった……?ダメージを与えるその瞬間に?


「隙ありです!」


 無詠唱の〈光弾(ライトバレット)〉と〈風弾(ウィンドバレット)


「ウンディーネさん」


 そう言うと、その瞬間に待ってましたと言わんばかりに身体が水になる。


 水の上に石を投げたような音を鳴らし、体を突きぬけ、カイ君の方へ飛んでいく。


「こちらもひとりじゃないんだ」


 最高の相方がいてくれているからね。


「さて、それじゃあ終わりかなっ!?」


 目の前で呆然としているリュナさんに切りかかる。


「リュナァ!」


 後ろから飛び出すカイ君……私が君ならそうしてたよ。


 空中に身体を投げ出し、後ろ向きに回転するように飛び上がる。


 爆進するカイ君の顔が見える。

驚いてくれているなぁ。


「『精霊魔術』〈精霊大津波(タイダルウェーブ)〉!」


 自分を中心に水を大量生成……水圧だけじゃ殺しきれない!


「ウンディーネ!」


 あのミランをも苦しめたあのコンボ。


「〈水製武器(ウェポン ブルー)〉」


 的確に急所を突き、そして息の根が止まったものを飲み込む。


 あたりの水ごと、飲み込む。


「ごめんね、私はあの男から解放してあげることしかできないよ」


 胸に触れ、2人を思いうがながら謝る。


 ハイポーションの瓶を開き、飲みながら歩く。

そして身体が光に包まれる。


「時間切れか……ありがとうウンディーネ」


 彼女は寂しそうな顔で笑ってサヨナラしてくれた。

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