ウェイス アンダーバードの日記
「……ジャンパーの日記からだな」
開き、そして読み始める。
『よぉ、これを読んでるのは俺かな?それとも俺以外の誰かかな?俺はこういうの書くの苦手だから直ぐに飽きてやめちまうだろうが、みんなに流されて買っちまった。
もしも辞めたくなったらこのページとこれをいくらで買ったかを思い出せよ!俺!』
その中にはいつものジャンパーが居た……涙が溢れてきたがそれを無視してページを開く。
『さて、これを俺以外が読んでるってこともあるからな、その時はきっと俺が死んだ時だろう。
俺の名前はウェイス アンダーバード。
ジャンパーってのは偽名だ。昔悪いことして名前を捨てておいた。
このことに感謝するようになったのは牢屋にぶち込まれてすぐの事だった。
俺たちは奇しくも近い独房に入れられた。
男性、女性が交互に立ち並ぶある種羞恥心を責めるような独房にいた時、彼女に出会った。
見間違えるはずもない、あれはデクターだ。
あのオッドアイを眼帯で隠しているのを見て、あの独創的な性格を味わって、愚直なまでのあの性格に触れて、確信に変わった。
俺とあいつは昔昔の幼なじみ。俺達はネルカートの生まれじゃなくて、とある小さな村の生まれだ。
そこは英雄の名としてクロン ウェイパーとマイン ウェイパーの名が語り継がれてきていた。
簡単な事だ。俺はクロンさんに憧れて、デクターはマインさんに憧れた。』
そこまで読んで、俺は少し手を止めた。
デクターの怒りの意味、部屋の手配書の一件。
「……俺は2人の憧れの人を殺していたのか」
少しの静寂の後読み直し始める。
『けども俺にはカリスマ性と実力が、デクターには繊細さと計画性がなかった。
奇しくも2人の憧れの人を逆にすれば夢に近付けた可能性大だったわけだ。
そんな自分の憧れているものを持っている人が近所にいたんだ、興味を持って仲良くなり始めてるのに大した理由入らなかった。俺はあいつのカリスマ性というか、人を惹きよせるその魅力に引かれ、デクターは俺のその……なんだ、イタズラの腕に興味を引かれやってきた。』
ページを変える
『そして俺達は別々の道を歩み始めた。
盗賊をめざして1人静かに村を出た俺、少ししてから国へ旅立ったデクター。
計画性と繊細さは意外と盗賊をやっていく上で役に立った……リーダーになることは決してできなかったが、代わりに頭脳を買われたことなら何度もあった。
まぁ、断固としてリーダー以外は嫌な俺は蹴ったけどな
そんなある日、次に襲う国の下見をした時、デクターを見かけた。
騎士になっていた……びっくりした
努力するその様は間違いなく昔のデクターのままだ。
いつしか偵察という大義名分の元彼女を見に行っていた。
どんどんと成長していく彼女と、それを邪魔する他の騎士たちに反吐がでる。
それでも、それに負けず強く真っ直ぐ伸び続ける彼女にやはり惹かれていく。
そしてある日キレた彼女が全員ボコボコにして捕まった。
仕事中にそれが気になりすぎて捕まってしまった。
繊細すぎるのもダメだな』
そんな面白エピソードがあったのか。
意外と人間味のあるやつだなジャンパー。
『捕まったあとは生誕祭の話を聞いてみんなで参加して……そして出所をめざしている途中にリーダーに出会った。
多種多様なスキルの数々に苦しめられ、最後には負けた。
悔しいが本当に強かった。
この人の下で俺は頑張るんだと少し嬉しかった。
この人なら、このヘンテコ三人衆をリードできると安心した
何をしても怒ったような笑顔で許してくれそうな人だ。
俺達は残りの刑期の間、出た後のことを楽しみながら話し合った。
ありがとうな、リーダー』
ページが……変わる。
『今日聖女と出会った。まさか生きている間に拝めるとは……しかも一万年前の聖女と来た、びっくりだ
だが、どこかきな臭い……善人なのだろうが、本能がそれを拒否している。
何故だろうか?この人に合わせていてはいつか酷いミスを犯してしまいそうだ
でも、リーダーやほかのみんなは彼女を受け入れるムードだった。
俺一人の感なんて言う不確かなもので振り回す訳には行かない、何かがあればみんなで対処すればいいんだ』
この段階から気づいていたとはびっくりだ。
『今日、あの聖女に俺の本名を囁かれた……なぜ知っているのか聞き返すと擬神の瞳なるものがあるらしい。
嘘を見抜ける能力なのだろうか?すごいスキルだ。』
恐らくそれでステータスを除き見られていたのだろう……
『明日になれば未練は解消できるだろうか?日記書くのめんどいなぁ』
早いな!?次の日のページを見る。
『明日も未練解消、できるかなぁ?』
適当だ……酷い……
『カルのパン美味い……リーダーのパンか、美味しかった』
嬉しいが悲しい、俺のパンをそんな文字埋めに使うなよ……
そして……これが、あいつが死ぬ一日前の1ページ。
『 』
「……空白……?あいつ……書くの忘れてたな……!」
何か書き残してくれていればな……そう思った。
でも、これはこれで
「アイツらしいな……ははっ」
こんな感じで彼ら死んでしまったんで書いていきます……まさかこんなに早くこのネタを消費するとは思わなんだ、私ビックリ。




