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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄?そんなのどうでもいいです
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していなかった自己紹介

「……あ、そういや自己紹介してなかったな」


 ジャンパーの呟くような一言で、食事中の喧騒が一気に幻想のものとなった。


「……言われてみれば……」


「そういえばそうだなぁ!?」


「……た、確かに……してない」


「そうだったのですか!?」


 我々5名はパーティーを組んで、今のこのパーティーが始まるまでの間、ずっと一緒にいたのに……言われてみればそうだ。


「あ、じゃあリーダーの俺から自己紹介を」


「いよっ!」


 とはやしたてるジャンパー。


「えー……ごほんっ……俺の名前は『カルカトス ナイトメア』このパーティーのリーダーをしている。

年齢は16……あ、誕生日もうすぎてた……17です

種族はキメラ、人間のなりをしているが、ちょっと違います

好きな物は英雄譚と後は……未知のもの、どうぞよろしく」


「17ぁ!?」


「おう!17だ!」


「わっか!?クソ若いじゃねえか!?」


 ディンもデクターも……フレイさんも驚いている。


 まぁ、この体の前に何十年か生きているから、実際は30を超えているけどね。


「んじゃ、次俺な!

俺はジャンパー、このパーティーの盗賊?斥候役だ!

好きな物は酒と肉!あと女!

歳は26!よろしくぅー」


「ダメ人間の具現化」


「あぁん!?」


「頭悪そう」


「おぉん!?」


「頼りねぇ……」


「はぁん!?」


「はい、次……デクター」


「ん、私か、私は前衛を務めるのかな?騎士のデクターだ。

歳の方は22、好きな物は……自由!」


「自由……かぁ」


 概念的なものもいいな。


「次は私ね、私はディン、後衛の魔法使いよ。

歳は秘密、魔女なんて呼ばれ方をしてるわ。

好きな物は本、読書ね」


 そういえば好きなものを1番さらけだしているのはディンだな。


 俺もまぁまぁ露見してるけど、ジャンパーのやつはダメだし、このパーティーは自由なのがいいところだからな。


「私でしょうか?私はフレイ メイ テンス今からおよそ1万年前の聖女ね、だから後衛に当たるのかな?

まぁ、書物によって私の名前が『フレア』のものもあるけど今だとフレイが主流みたいだからそれに合わせます

もちろん、守護者やってるから近接も行けます、どうぞよろしくお願いします

歳は23、好きなものは英雄さんかな」


 俺と一緒……というか近接戦も行けるんだな、流石は守護者に抜擢されることはある訳か。


 というか、そろそろフレイさんともお別れの時期が近づいてきたんじゃないのだろうか。

彼女は守護者、満足して、あの世に行ってもらうのが、その役目なのだから。



 解散し、キッチンに立ち、洗い物をはじめる。


「フレイさん、大丈夫ですよ」


「ふふっ、舐めないでください、私の家事スキルはそんじょそこらの世界最高峰を鼻で笑い飛ばせます」


 そんじょそこらにそんなヤツらがいたら困るよ。


 でも、たしかに手際は素晴らしい。

【家事する聖女】とかって名前の絵として売れそうだ。


「……ねぇ、フレイさん」


「はい?」


「……あなたの未練……って、一体なんなんですか?」


「……私にも分かりません……やっぱりそう思いますよね、私もですよ。

宿に帰って、床について、上を向いて目を瞑る。

その度に『私はなぜ生きているのか』そこに疑問を持ちます」


「……まだ、わかりませんか?」


「……すいません」


「……明日、五十層に行きましょう」


「へ?」


「そこで、何かが見つかるかも……ですから」


「そ、そうですね……そうですよね!」


「あなたがいなくなるのは寂しいです……けど、ずっといるのも何か違う……なんていえばいいんだ?」


 食器を拭く手を止めて思案していると


「大丈夫ですよ、何となく、言いたいことは伝わってきます。

私を傷つけないように言葉を選んで、それでいて、私の気持ちを尊重しようとする……難しいですよね、ましてやそれを言葉にしようとなんて、私に出来ないですよ」


「……明日、何か見つかるといいですね」


「はい!明日にお別れしても寂しくないように、今から皆さんと楽しんできますね!」


 『気が早いなぁ』

この頃の俺はそんな風に思っていた。

あいつの言っていたことなんて、すっかり忘れてフレイ メイ テンスとこの日常を楽しんでいた。

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