最後の花畑
「ここがおすすめの場所……!」
「サジェントス大花畑だよ、すごく綺麗でしょ?」
「うん!……ナルホドね!確かにカルが好きそう……精霊、いるの!?」
「ちょっと待ってね……うん、いっぱいいるよ」
「!!!すごい!やっぱり見えるんだ……!」
シアさんに教えてもらったこの場所を、また誰かに教える。
「ここ、前から行きたかったんだけど、余裕がなくて行けなかったんだよね……!」
「それは良かった、気に入って貰えたかな?」
「うん!すごい……綺麗だなぁ……私も精霊見れたら良かったんだけどもね」
「……見せられないこともないけど、失敗するかもしれないから、上手くできるようになったら見せてあげるよ」
「!楽しみだなぁ……その時を待ってるよ」
「うん、待っててね」
その魔法は、ミランに世界を見せた魔法。
それよりもさらに高位な視界の共有、それも才能関係なしの。
精霊のひとりが俺の方へやってきた。
「エンは、今日はいないの?」
「……へっ?」
「エン、前に来てたでしょ?」
『エン』?誰だそれは……ここに来たのはシアさんと来た時……また、記憶が抜け落ちているわけか。
……極力思い出さないようにしていた、あの神域の森でのこと。
やはりピースを取り戻すには……この髪が完全に黒くなる時……マスターを殺すときだ。
「やっぱりやるしかないのかな?」
「?何が?」
「……大事なものをかなり前に落としてね……それを取り返したいんだ」
「……誰かに取られたんだ」
「うん、性格がその人は悪くてね、だから腕ずくで取り戻すんだ」
拳をギュッと握る。
「手伝おうか?」
「……いや、これは俺の招いた物語なんだ……俺の物語なんだ……取り戻すのは俺じゃないと……あいつらに見せる顔がないよ」
「……そうなんだ、すごく、大変なことなんだね」
「うん、大変で、きっと多分大切で……きっと後悔する」
「……後悔?」
「そう、後悔する……もう、知らなかったじゃ済まされないとこまで来てしまった気がする……」
「それでも……なの?」
「……え?」
「後悔するぐらいなら、初めから、それに関わらなければいいんじゃないの!?」
「……」
「大切なものでも……無くしたものが見つからないことだってあるよ……比べられるものか分からないけど、私の大切なくまの人形も、昔にどこかに行ったっきり、今でも見つかってないんだ」
「……それでもさ、その人形を持ってる人を見つけたらさ……取り戻したいんだ」
「……まぁ、記憶がいつまでも抜けてたら……気持ち悪いよね」
「……まぁね、みんなの言ってることが時々全く分からないんだ……前の俺は結構色々してたんだなって、そう思わされたよ」
「まるで他人のことを話してるみたいだね」
「一番近くて一番他人さ」
「大変だね、私には分からないけど、カルなりに苦しんでいるのは伝わってくる……だから、頑張れってエールを送る」
「ありがと……俺の友達のエールは心強いや」
「ファンの私のために負けちゃダメだよ」
「……そうだね、それは負けられない」
ピュー フォルテさんが負けることなんてありえないように、ファンの前で負けることなんて、英雄としてあってはならない。
「ありがとう……フロウ、今日は本当にありがとうね」
「いいよ、私もとっても楽しかったし」
紙袋を少し上に掲げてそう笑う。
「家まで送るよ」
「うん、ありがと」
フロウの家まで歩いていく。
話をしながら歩いて、彼女のメンバーと少し話して、そして宿へ帰る。
「おかえり、リーダー」
「みんなもう帰ってたか、待たせたな、お前ら」
「いいよ、ほら、さっさと寝ようぜ」
俺が帰ってくるのを待ってる間、ジャンパーは俺と同じ、女性陣とは違う部屋で寝るのに待ってくれていた。
「また、酒でも奢るよ」
「ははっ、どういう風の吹き回しだ?……ま、貰っとくよ、サンキュ」




