暗き森のデュラハン
「んでー?デュラハンって何?」
ジャンパーが馬車に揺られながらそう聞いてくる……
「あのな……」
「デュラハンは首のない騎士、というのが最も想像しやすいでしょう……男性も、女性も、その両方の姿が確認されている、首のない騎士です。
死んだのにも関わらず、律儀に美しい剣技を見せてくれますが、それ故に『ただの騎士』では、真っ向勝負では絶対に勝てない程のレベルの剣技です」
「ディン………!」
俺は今感動している。
「そうだな!私も何度か戦ったことがあるがかなり強かった記憶があるな!
でも、私には及ばないほどの剣だから多分みんなで戦えば勝てるさ!」
そういうと、ふふっと笑い、フレイさんが
「それに、デュラハンはアンデットに属されますから、私のせ……白魔法で有利に立ち回れますよ」
いま、聖魔法って言いかけてた……危ない危ない
「皆よく知ってるなぁ……まぁ、戦って見ればわかるか」
なんて話をしながら馬車に揺られていると、無事に到着した。
「懐かしいな……シルバーランク昇進の時以来だ……あの日からずっと迷宮に潜っていたのか……」
あの時は寒くなって来た頃だったが、今はむしろ暖かくなってきている。
「それじゃ、行くとしましょうか」
「デュラハンねー、黒騎士黒騎士ー」
ジャンパーが本当に危なっかしい……が、一番周りを見て油断なく前衛をこなしていてくれているのも、ジャンパーだ。
「んあっ?」
「?どした?」
「あっちからなんか来るな……」
「……へ?」
耳を済ませてみても特に何も……いや、聞こえてきた。
「馬……?こんな森の中で?」
「これって、デュラハンかな?」
「かもな……ジャンパー、よく探ったな」
「俺の仕事だからね〜、さ、ササッと行くぞ、戦闘準備だ……馬から叩き落としてやるよ」
デュラハンの方は、俺たちの方が分かっていたのか、迷いなく突進してくる。
「ジャンパー!!」
「おうとも!」
俺はハウルを抜き、馬の首を……馬も首がない!?
「この馬っ!!」
一丁前に着いている棘の馬具が刺さる。
「っ!普通に強い!?」
舐めていた……正直迷宮半分潜った俺なら、余裕だと思っていた。
「リーダー!入れ替えるぞ!」
その瞬間、視界がパッと変わる……高い所……腰に伝わる振動……馬!?
「俺馬乗れっいだっ!?」
舌噛んだ!?
俺のいたところにはデュラハンがたっている。
体制まで引き継がれるのか……!
ならこの馬を……刺すんだっ!
「ナイトライン!」
首がないなら、胴から引き裂く。
返り血は川の水みたいに冷たい……だけど血の匂いはむせかえりそうな程に強い。
「っあだっ!?」
落馬……当たり前か、馬が死んだら落馬するよな。
「……まだ、死んでない……!?」
「なぁリーダー!こっちはおわったぜー!」
デクターがそう伝えてくるが、デュラハンは剣が刺されただけで消滅していない。
「デクター!まだ生きてる!消えてない!!」
そういうと、皆が「ぷふっ!」と吹き出す。
「何笑ってる!?早く!」
「リーダー……ふふっ……ここは迷宮じゃないぞ……アーッハッハッハ……!!」
「で、デクター……笑うのは……よ、良くないです……ふふっ!」
「リーダー!さすがにボケすぎだぜ!あー!おもしれー!」
「カルカトスさん……流石に……ふふっ、ご冗談でしょう?」
顔が、かあっと熱くなる……そうだ……
「……あぁ!!本当だ!!ここは迷宮じゃないからなぁ!!早く行くぞ!討伐証明部位はどこだったかな!?」
「そんなことは覚えてるのに……ぶふっ!」
「だぁー!うるせぇ!こっちは大焦りだったんだぞ!?舌噛んだし、馬は倒れたのに消えないし!?生きてるデュラハンの近くでお前らが勝ち誇ってるしで!!」
「ハイハイ……ありがとさん、リーダー、でも……ぶははっ!もうちょっと笑わせてくれや!」
「くそっ……デュラハン……お前のこと嫌いになりそうだ」




