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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄?そんなのどうでもいいです
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聖女の願いは?

「……ハリスも随分と変わりましたね」


 場所は変わって聖国ハリス。

聖女誕生の地だ。


「……あら?これって私でしょうか?……ふふっ、なんだか恥ずかしいですね」


 石像と、その下に彫ってある名前から、フレイ様だと分かった。


「本当に私も誰かのためになれていたんですね……あっちにも、こっちにも私を信仰してくれている方々が沢山……」


 信じられないと言った顔で辺りを見回す。


「……なるほど、私は……うん、私は生きていて良かったです

もう一度生を受け、未練がましく生き延びてよかった……なんて幸せそうなんでしょうか?」


 俺から見れば別に日頃と大差ない一般的な日常……いや、彼女が生きていた時代は魔族が襲ってきていた時代、それに比べたら何倍も平和だろう。


「知っていますか?私の両親はとっくの昔に魔族に襲われ死んでいるのです」


 唐突にそう言った。


「へ?な、何の話ですか?」


「それなのに、ココア様は私の妄言に付き合ってくれていたんですよ」


「……初代勇者……」


「えぇ、彼にもあの時の私と同じように見えていたのかも知れませね、あの時の彼は同じぐらいに不安定でしたし、有り得そうです」


「不安定?」


「えぇ、昔の彼も、色々苦労をしていたからか、精神的に大変だったそうですから」


 彼の勇者にもそんな一面があったのか。


「そうだったんですか、貴重な話をありがとうございます」


「いえいえ……ハリスはやはりいい国です

誰かがこけてしまって、怪我で泣いていたら、きっと私がいなくても誰かが手を差し伸べてあげることが出来るでしょう」


「……そうかもしれませんね」


「それに、近代の聖女もいる訳ですからね、きっと頼りになってくれるでしょう」


「そうですね……俺は、あなたに会えたのはとっても嬉しいですけどね」


「そうですか?ほかの守護者の方と比べれば私とすごした時間なんてあってないようなものじゃないですか?」


「それだけ、聖女という存在はすごいんですよ?」


 そういって、別れの挨拶を告げる……しかし彼女は消えないし、その彼女の顔がどんどん青くなる。


「……ははっ、私は何か勘違いをしていたのでしょうか?

私は……そう、平和を求めていたはず……なのに、なのに私は……!」


 そう言いながら1拍置いて


「『消えない』!!」


 その声は半分震えていたようにも聞こえた。


 そして彼女の焦りようから、嘘でないと思った。

何より、ハリスに来るまでの馬車旅で彼女をある程度はわかっているつもりだ。


 なら尚更、苦しんでいると分かる。


「なんで……!?なんでなの!?分からない!!なんで!?」


 その叫びに人がどんどんと集まってきた。

バレたら騒ぎどころじゃない……色々不味いことになる。


「ちょっと失礼しますよ!」


「はわっ!?」


 抱き抱え、遠くへ逃げる。

少しいい香りがした……柔らかい太陽のような匂いだ。


「す、すいません、取り乱しました……見苦しいところをお見せしてすいません……」


「い、いいんですよ、それよりも……心当たりは?」


 抱き抱え、走りながらそう聞く。


「ありません……その、すいません……すぐに消えるつもりだったのに」


「そんなにネガティブにならないでくださいよ、人類の太陽とも呼べる聖女様がそんなに暗いと俺は悲しいですよ」


「!……そうですね、皆さんを心配させてしまいますからね」


 そう言って頬をペチンと叩き、晴れた顔で


「あなたの手助けをしながら考えるとします、迷宮へ戻りましょう」


「はい、そうしましょうか……そろそろあいつらも出てくるし」


「?あいつら?」


「仲間ですよ、俺の仲間……そろそろパーティー組んで迷宮探索かな」


「なるほど!それはおめでたいですね!」


「ですね、楽しみですよ」


 あいつらのスペックの高さはこの身で味わった。

あの実力なら、十分に戦えるだろう。


「なら、早く戻りましょう!私も会ってみたいです!」


 そう笑う彼女に、さっきまでの暗い影はなかった。

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