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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄?そんなのどうでもいいです
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勇者と聖女とキメラと仲間

「……っふー……『スキル』〈神速〉!!」


 いつぞやの狼から何故か貰えたこのスキル。


 内容は単純明快、天から地に落ちる雷のように、目にも止まらぬ速度で動く…….それだけだ。


 そのせいで俺自身にも未だに上手く扱いきれない……早すぎる。


 だが、直線でなら、そんな遠慮はいらないのだ。


 一直線上に誰もいないのは確認済み。

何歩も先にいたはずの鹿は目の前に、慌ててハウルを前転するように振るう。


「っがへぁ!?」


 その瞬間、体に伝わったのは敵を切った感触ではなく、背中から手足の先まで余すことなく響く衝撃、顔や腹にあたる瓦礫の感触だった。


「……いったた……相変わらず上手く扱えないな……」


 星空に穴を開け、落ちてきていた瓦礫をはらいのける。

彼らの方をむくと、真っ二つになった鹿が光となり消滅したところだった。


 だが、恐らく彼らは鹿ではなく俺の方に興味津々だろう。


 いやー、よかったよかった、人と距離を縮める方法をあまり熟知していないから、向こうの方から関わりを持ってくれそうな関係というのを作れたのは大成功だろう。


「あ、あのー?」


 ほらみろ、服を叩いていたら向こうの方から話しかけてくれた!


「あ、はい?どうも初めまして」


「へっ?あ、あぁ、どうも初めまして……」


 黒髪黒目の男は律儀に頭を下げて挨拶をしてくれる。


「……じゃなくて!?あなた今何したんですか?」


「……あの鹿を切りましたね……も、もしかして余計なことしましたか!?」


 それはまずい!邪魔をしてきた相手と仲良くなってくれるだろうか?


「いえいえ!?あのままだと僕達も苦戦していたと思うので助かりました……すごく強いですね

僕の名前は『カノ ユウジ』って言います、あなたの名前は?」


「あ、俺の名前は『カルカトス ナイトメア』って言います

よろしくお願いしますね」


 篭手の着いた左手を差し出し握手を求める。


ナイトメア(悪夢)?……まあいっか、よろしくお願いします!

ところでどうして仮面を?」


「隠したいものが、この下にあるからですよ。

それにしても、みなさん、とても強いと思いますよ、まさか自分よりも先にこんなに奥に進んでいる人がいるとは思いませんでした」


 そう俺が言った声が聞こえたおかげか、レイピアの少女が合点がいった様な、思い出したように目を見開き、俺の方へ急加速してきた。


「思い出しました!いえ!仮面のせいで分かりませんでした!あなたは!『あの』カルカトス様ですね!?」


「さ、さま?」


「し、失礼……んんっ」


 そういうと、手を取るぐらいの勢いでやってきた彼女は2歩引き下がり、顔を少し赤らめながら咳払いをして話をする。


「私の名前は『ライム レルミー』ソウルドの騎士の1人です」


 そういうと、ハウルが反応を示した……いやこれはミランの方か?


「その……私の家はいわゆる貴族の家で、代々剣聖様にお仕えさせていただいているんです」


 その言葉でこちらも合点がいった。


「……あぁ、なるほど?」


「察していただけましたか、そうです……四十層の守護者、ミラン ダリン様は間違いなく二代目剣聖のミラン様でしょう?

そんな剣聖様に一対一で戦い、勝利した……全ての剣士の夢とも言える、剣聖を超えたのですよ……!!

そして!このネルカートの迷宮の最高深度記録保持者でもあり、今までに世に出た守護者全てと戦い勝利を収めている……!そんな方に出会えるなんて私嬉しいです!」


 すごく、俺の事をほめてくれる……仮面の向こうでニヤニヤしてしまう。


「ありがとうございますライムさん、でも、俺もさっき少し鹿との戦い見てたけど剣術なら多分あなたの方が上だと思いますよ?」


「そんな……!ご謙遜なさらず……!」


「ほぉー?お主がライムちゃんの言うとった騎士か?」


 エルフの彼女は……老人のような話し方をして、こっちにやってくる。


「ははぁ……これはこれは……変わっとるのぉ、お主」


 1発で見抜かれた……いや、隠していないし、内包しているものがあまりに大きいせいだろう。


「まぁ、その通りです」


「んおっ?否定はしないのか……ふーん……おもろいのぉ

儂は『メリー ノエル』や、弓術と聖魔法を主に扱っとる、よろしくのぉ」


 聖魔法……!?それに『ノエル』!?


「あの……すいません」


「どうしたんじゃ?」


「間違いかもしれないですけど……『ミーヤ ノエル』の名前に聞き覚えは?」


「……へぇ、なかなか歴史が好きなようじゃの……いや、英雄譚が好きなんか?

まぁいい……ご明察、その通りじゃよ」


 両方とも大好きですよ……それにしても……本当にそうだとは……!


「……そちらの方は……聖女様ですよね?」


「はい、その通りです、初めましてカルカトス様

大会では私も見ていましたよ」


「それはどうも……ところで、噂が正しかったらここにいるのは……異世界からやってきた人ですよね?」


 カノさんの方を向き質問をする。


「えぇ、よくご存知で、この方がその異世界からの来訪者、勇者とも言えますね、カノ様です」


「どうして彼を呼んだのですか?」


「……それは秘密ですよ、ただ、これなら教えてもいいでしょうか?

あの古の魔法陣がしっかりと機能するかを試したかった、と言うのが目的のひとつです」


 あれ?思ってた聖女様と違う……なーんか裏のありそうな人だなぁ。


 そう、俺に囁きかけるのは『獣の五感』


「……それはどうも『ご丁寧に』ありがとうございますね」


 そういうと言葉の意図を察したのか、ニヤリと笑いながら


「こちらこそ、理解していただいて助かります……私の事は……まぁ、ご存知でしょうけど自己紹介を

『フルス メイ テンス』近代の聖女にして、異世界からの来訪者、カノ様のヒーラーを務めています、どうぞよろしくお願い致します」


「はい、よろしくお願いしますね

どころで、皆さんはこの後どうされるおつもりで?」


「このまま、まだまだ余裕がありそうなので、もっと深く潜るつもりです」


 カノさんがそう説明してくれる


「ふむふむ……確かに、あなたたちのパーティーのバランスはとてもいいですからね

優秀な前衛、正確無比な後衛、サポートに関しては右に出るもののいないであろうヒーラー、確かにこの調子なら、順調に潜れるでしょうね、頑張ってくださいね」


 同業者だからと言って大したことは言わない、せいぜい俺のこの言葉が自信につながってくれれば何よりだ。


 そして、同業者だからこそ、これ以上手助けするのはこっちの収入が減ってしまう。


 金は有り余っているが……この先当分は費用が今の4倍かかるわけだ、そのことを考えればあって困ることは無い。


「それじゃ、俺は先を急ぐんで」


 そう言いながら、その場を後にする。

【聖魔法】


聖女と、伝説のエルフ『ミーヤ ノエル』の血を引くもののみが扱える光魔法の完全上位にあたる魔法


扱えるものが少ない故に、その力は絶大だ

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