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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄?そんなのどうでもいいです
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星域での出会い

「……やっぱり少ないなぁ?」


 テクテクと剣を振りながら階段を下り、そしてすすみつづける。


 本来なら時代錯誤なアイテムが置いてあったであろう台座がからなことから、やはり当初の予想通り先駆者がいる訳か。


 そしてそれはおそらく勇者、異世界からの来訪者。


 そんな、未来の英雄との会合する瞬間を想像するだけで胸が踊る。


「……おぉ、これは……厄介そうだなぁ」


 巨大なゴーレムが壁から生えてきた。

モンスターが生まれるのとはまた別で……なんだろうか?こいつも擬態していたのだろうか?


 なら、ここで新しい能力のお試しと行きましょうか。


「『ウンディーネ』力を貸してもらうよ」


 そのゴーレムの巨躯は目測およそ5m、体重に関してはそれはそれはとてつもないだろう。


 そんな黒くて星のような美しい腕が、力いっぱいこちらへ振り付けられる。


「〈水ノ精化(スイセイメイ)〉」


 そう告げると、持っている武器、着ている衣服、俺の体そのもの、それら全ては『水になる』


 『パシャン』と水面を叩いた音の後、俺の身体に風穴が空く。


 飛び散るとは赤黒い血液でも、俺の臓腑や骨ではない。


 ただの魔法によって生み出した水だ。


「『水魔法』〈水急加速(アクアドライブ)〉」


 そして、俺の体もまた、水なのだ。

だから、水魔法の練度は、俺の動きの複雑化、縦横無尽さに磨きをかける一手だと言える。


 この状態なら細かい隙間にも入れるという応用の効き方ならば持っている手札最強の1枚だ。


 急加速する体、きっとこのゴーレムは俺をただの人間だと思っていただろう。


 精霊と同化したキメラだなんてそもそも存在すら知らないだろう。


 だから、この不意打ちとも言える正面突破が決まるのは当然だと言える。


 十字に構え、ハサミのようにゴーレムの首を切り飛ばす。


 だが、この手の魔法生物の厄介な点は、核を潰さないとダメ……スライムみたいなものだ。


 大抵はこのゴーレムもそうだが人型、故に弱点はおおよそ心臓か、頭と決められている。


『より人間に近づける』それ故に得られるメリットがあるからそうしているのだ。


 そしてこういうタイプは頭にある。

剣をそのまま突き刺せば……ほら、倒せた。


 体は光に変わり、黒い、あの星のような石をドロップした。


「……幸か不幸か、ゴーレムとかの人工モンスターへの理解が深くて助かったな」


 人生……キメラ生?何が役に立つか分からないな。


 そして、階段を下った先に、彼らはいた。

4人でパーティーを組み、さっきのトカゲやゴーレムではなく、これまた星のような美しく、巨大な鹿と戦っていた。


 1人は若い、俺と同じぐらいだろう。

整った顔立ちに、珍しい黒い髪……そして、黒い瞳。

およそその剣の振り方に『技』と呼べるものは無い。


 ミランの剣を見た今の俺なら尚更そう思う。

ただ、能力に任せ剣を振る

それだけでこの階層の敵たちが紙のように切られていく。


 見た所、別段特別な剣でもないところから、彼の世界からの愛されようが見て取れた。


 もう1人の女性も非常に若い……というかこのパーティー自体がかなり若い人達で構成されている。


 美しい金色の髪、彼女の赤い目からは、一種の決意や覚悟が……命をかけて今を生きるものの目を彼女はしていた。


 彼女もまた剣を持ち、黒髪の男と共に前線を上げている。

彼女の剣はレイピア……?使っている人を見るのは初めてだ。


 彼女の剣術は素晴らしい、洗練された立ち姿、相手の技を紙一重で見切り、最小限の動きでベストを尽くしている。


 その度に彼女の短いショートヘアの金髪が可愛らしく揺れる。


 『美しい』ミランの剣を見た今の俺でも、そう思う。

きっと剣と言うベクトルの話では俺では勝てないかもしれない。


 もう1人の女性は見た目こそ若いが、エルフ特有の尖った耳が、見た目相応の年齢とするかどうかを疑わせる。


 エルフらしい、美しい顔に、腰まで伸びた緑の髪は三つ編みにして垂らしている。


 黄色と言うよりも金色のその瞳は、どこか大人びた雰囲気を感じさせた。


 弓の腕も確かで、仲間2人を光の魔法か何かでサポートしながら戦う……なかなか……いや、かなりの手練とみた。


 最後の1人はこれまた女性……彼女は俺でも知っているぐらいの有名人だ。


 『フルス メイ テンス』様

近代の聖女様その人だ。


 俺の目に間違いがなければ今そこで戦っているのはその聖女様だ。


 そして、あの鹿はなかなか強いようで彼らも苦戦を強いられている。


……ここ1つ、手を貸して仲良くなりたいところだ。


 そんな邪とも呼べる心を持ちながら、俺はもう1枚、切り札を切るのだった。

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