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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄とは、誰よりも優しくてカッコイイ人だろう
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精霊とキメラ【アルトリート】

「……っぐ……がはっ……嘘でしょ………?」


 あの拳の一振で、私の身体にここまでの傷を……

元々、身体はあまり丈夫ではない……だからこそ、体の周りにはいつも魔法で壁を何重も張っている……はずなのに、まるで貫通された……


 左手の篭手……アレのせいか?


「……あまりにも分からないことが多すぎる……シルフィールさんが危ない……行かないと……!!」


 あの重傷で、あそこに置いておくのは殺してくれと言っているようなものだ。


「早く……早く!!!」


 だけど……意思に反して、足は前に進んでくれない。


「っ!!早く……!行かないと……!!行かないと……」


 木の杖を作り、それを頼りに身体を前へ前へと進ませる。


 戦いの余波はここまでやってくる……もう、戦いは始まっているようだ……!



「……あ……あぁ!!?」


 私の到着はあまりにも遅すぎただろう。

彼女は心臓を貫かれ、彼はまだ生きている。


 恨んでいない……そういえば嘘になる、約束も破られた……これはあの時のカルでは無いのはわかっている。


 それでも、私の、私たちの大切なココを、皆を傷つけるのは許さない。


 何よりも、きっとカルが1番傷つく……あの子はそういう子なんだ!


 だから!我が子のためにも!シルフィールさんの為にも!私がここで諦めたり!行動を迷っている暇なんて無い!


「カル!今から、君を……うちのめす!許してくれ!」


 そう初めに宣言し、詠唱を始める。

シルフィールさんと、カルはあまりに相性が悪かった……が、私ならどうだ!?


「『大地ノ理』『ワガココロハワガコノタメニ』『ワガイノチハワガコノタメニ』『ソノヤサシサデスクワレテハクレナイカ』《精霊魔術》《愛スル子へノ抱擁(アイノマニマニ)》!」


 この大地の抱擁を……抜けられるか……!?


「っがっ!?ナンダ……コれは……ぁ!?精霊魔法ジャナイ!?」


 しっかりと捕え、動きを封じた!


「そうだとも!いつか君にしっかりと!1から教えたかった、私の『魔術』だ!!」


 この反応を見るに、この魔術を抜けられないようだ……今のこの暴走状態が終わるまで、抑えておこう。


 そう、ひとつ安堵のため息を着いた瞬間を嘲笑うかのような、悪夢のような光景が私の目の前に現実として現れる。


「『形態 黒竜(モード ドラゴン)』!」


 無詠唱!?精霊魔法以外にも……何だこの魔法は……!


 竜が私の拘束を、その圧倒的質量がカルの体から押し出し、破壊する。


「んなっ!?竜!!??」


 この森の中竜1匹、この重傷なら余裕で死ぬ……まずいな……どうしよう。


「仕方ない……これを使って……生きててくれるかな……カル……いや、お前ならきっと耐え抜いてくれるはずだ……死ぬほど痛いけど……すまない!!」


 そうひとつ、私の、私そのものを『詠唱』する。


「『我は大精霊』『神獣の森の大精霊が1人』『毎日は幸せそのものだ』『私は家族の為になら巨悪をも滅す』『そう我が名こそが』《愛と自然の大精霊(アルトリート)》だ!」


 私の声に呼応するようにうねり踊る大自然の暴力。


 木々の樹齢は優に3桁を超える。

その世界の暴力が1匹の竜を襲う。


 私の固有スキル……これで落ちてくれ……!!


「……っがぐ……なん……だと……!?まだ……私の体を投げ打っても……2人を倒せていない……!?」


 目の焦点があっている……さっきまでのカルとは違い……血を吐き、ボロボロだが、間違いなくカルが私の目の前にいる!


「……狼1匹で……精霊は倒せていない……それに……この傷……私の体の再生能力も限界か……!?」


 ブツブツと独り言を呟き、落ち着こうとしているのか?


「カル!私は!やるからな!!」


 右手を前に振り払い、木の根が1つ刺突を放つ。


 高速の一撃……殺してはいけない!足の大腿部を突き刺す。


「っづ!?流石に大精霊は……強い……だがァ!!!」


 そう、カルは叫び、ボロボロだが私に何か攻撃の一手を打ってくるはずだ。


 記憶を失っていてもカルは侮れやしない。


 ましてやこのギリギリの戦いで油断なんて1ミリもない。


「『光ノ理』ィ!」


「!回復魔法……!?まずいまずい!君たち!彼を手伝わないでくれ!頼む!」


 もうこれ以上攻撃をすればおそらく命に関わる……いや、精霊たちは恍惚とした表情で彼を見ている……なら、攻撃するしかない!!


「っ!《慈悲ノ光(ハートフルヒール)》!」


 しかし、魔法は発動されない………それはそうだろう、精霊魔法の燃費の悪さは嫌になるほど知っている。


 不完全!この一撃は通る!


「負けたくない!んだぁ!!」


 あの足で、いつものように距離を高速で詰めてくる……!


「舐めないでもらいたいね!近距離戦だって戦える!」


 そう、間違いなく自信を持って私は向かった。


 その瞬間、私の視界はぐらりと沈んだ。


「地面がっ!?まさかっ!?」


「自然魔法と水魔法の共同応用だ!」


 タネ明かしと共に、彼はまた、魔法を使う。


「〈付与魔法 風(エンチャントウィンド)〉!」


 手刀に、風魔法が付与される。


 左手の風の刃は、私を切り裂いた。


「……カル……!」


「……私の勝ちだ……ははっ!生き残った!!」


 心底嬉しそうだ……そんなカルに言葉でなく行動で教えてやろう。


『勝負で勝ち誇った瞬間にそいつは負けている』んだ!


 ツルの鞭が回復魔法も使っていないカルを、破裂音とともに弾く。


「っあっ!?……まだ………魔法を……!?」


 奇しくも共倒れだ……いや、私の1人負けか……


「……殺せるわけ……無いじゃないか……!」


 彼と私が戦った瞬間に、私の負けは決まってしまったのだろう。


 殺す気の彼に、殺す気のない私が勝てる道理なんてどこにも……ない。


 今、意識を失えば……死ぬんだろうな。


「……カル……!私は!今でもお前を愛している!それは!皆一緒だ!」


 この一瞬!()()()との繋がりを確認出来る子の最後に!


()()()()()()()()()()()()()()()()』そう告げ……意識を失った。

アルトリートの詠唱きっと読みにくいことでしょう……ごめんなさい、でも、あれがいいんです

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