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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄とは、誰よりも優しくてカッコイイ人だろう
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第5試合 躍動

「……そんじゃま、いきますかっと」


「応!任せろ!ディン!いつも通り行くぜ!?」


「はーい」


 男らしいな、デクター


「はぁ……とりあえず、攻めますか」


 大剣を構え、距離を詰める。

私は元々剣士なのだ……規格外の魔法や、頑張った体術のせいで色々勘違いされがちだが……私は剣士なのだ!


 だからこそ、剣聖にあの日憧れた。


「ははっ!受けるぞ!ジャンパァー!」


「いやいやいやいや!?無理無理!?」


「ったく情けない……」


 右の腰に差していた蒼の魔剣を抜き、両手で端を持ち受け止める。


「もう一本はいいのか!?」


「なぁに!出し惜しみは魅力なんだぞ!?」


「それはわからんでもなっ!?」


「………ちっ、外したか」


 思ったよりもジャンパーの戦い方が注意を払わなければならないな。


 というか雰囲気が変わったなぁ。


「『私の前に立たないで』『私の前に何も置かないで』『私に誰も触れないで』《絶無魔法(ゼロ・マジック)》〈空白のあの日(がらんどう)〉」


「……っ!!??」


「あっぶないなぁー!?俺たちいつか当たるよ!?」


「大丈夫ジャンパー……私の魔法操作とあなたたちの動きの予測演算に『間違いはない』」


「の割にはカルカトスに当たってねぇぞ!?」


「初見なの……見てるの」


「はははっ!殺すなよ!?ディン!殺したら我々の敗北だ!」


「分かってる、私たちのリーダーを殺したりなんてしないわ」


 その間も、剣劇は繰り広げられる。


 嘘だろ……こいつら私と撃ち合いながら雑談してるのかよ……!?


「さぁて……そろそろ2本目の解禁といこうかぁ!?」


「いよっ!待ってましたァ!」


 そう言うと、ジャンパーが、またひとつ早くなる。


「……決めにかかるのね」


 また、魔力をゆっくりと確実に精密に正確に美しく練り上げるディン。


「さぁ!皆さんお待ちかね!この大会で初めて見せてしんぜよう!我がパーティー!最強の剣士のその本気を!」


 ジャンパー、煽るのが上手い、司会も観客も、その時を今か今かと待ち構えている。


 今、攻撃を仕掛けるほど無粋じゃない。


 デクターが私の行動を見てか、ゆっくりと、出し惜しむように引き抜く。


 今日はいい天気だ。照りつける太陽が、彼女のもう一本の剣を美しく眼前に現す。


「……紫……?」


 宝石のように、その剣はキラキラと輝いていた。


 そして、彼女は眼帯を外す。


 その目もまた、紫色……オッドアイだったか?

左右違いの瞳、紫のその瞳は星空のように奥行きさえ感じた。


「……ふふっ……ふははっ……あーっはっはっはっはは!!」


「っククッ………っぶふっ……ふふふっ……」


 急に笑いだした2人に疑問符を浮かべると、怒声が鳴り響いた。


 身なりがよく、体つきもいい中年の男が顔を真っ赤にしている。


 興奮しているせいでよく聞こえないが、ざっくり言うと『なぜその剣を貴様が』といった内容だ。


 その声に答えるように、2人の笑い声が大きくなる。


 マイクを場外から取ったのか、ディンが説明してくれる。


「あなたの元から『取り返した』のですよ?

元々デクターのものなのです……当然の事じゃないですか?

……お、ば、か、さん?」


 ニタァと、粘り着く、嫌な笑みを浮かべると、それを待っていたとばかりに、司会のべレマが声を上げる。


「やはり面白い!!!このパーティーは規格外!魅せてくれる!!

いいでしょういいでしょう!!この大会!持ち込んだものは自分で使えるのですから!真偽なんてどうでもいい!やれ!やってください!!」


 続行の指示がでた。


「わかってるねぇ!さすがは司会!」


「……ははっ!いい答えだ!司会!」


「さすがは司会……」


「べレマです!」


「ま、そんじゃ止めて悪かったな……やるぞ、リーダー」

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