エルキナパーティ
「……もし、そこのお方」
「はい?」
今日はよく人に声をかけられる。
「カルカトスさんで、お間違いありませんか?」
「はい、確かに私がカルカトスです
あなたは、エルキナさん……エルキナさん達でお間違いないかな?」
赤い髪に、太陽のような金色の瞳。
スクール出身の魔法使い主軸のパーティー。
「えぇ!ご存知でして?ふふっ、嬉しいですわね」
愉快そうにニコニコと笑いながら私を見つめる目は……笑っていない。
やはり品定めか。
「それはこちらも同じこと、存じ上げるご様子で誠に恐縮です」
どうして私がここまでかしこまるか……だって彼女は貴族なんだから。
だからこそ、スクールに通えるし、何よりもこの好成績は才能と、その家柄から為っている。
「あらあら、そうかしこまらないでくださいまし、私の方はただの癖にございますから」
「意地の悪いお人だ、貴方が良くても、他はどうだか」
そう言いながら彼女の仲間の方へ目をやる。
全員が女性で構成された4人のパーティー。
「そ、それはそうかもしれませんね……ですが冒険者であるときぐらいは私も1人の冒険者として認めて欲しいものですが……どうしましょうか」
そういった彼女の目は……間違いなく困っていた。
貴族令嬢としてでは無く、一人の人間として認められたいのも彼女の目標なのかもしれない。
「そういう事ならすまなかった、私の配慮が足りなかった
君を『エルキナさん』じゃなくて『エルキナ』として認めることにするよ、今ここで私に声をかけたのは間違いなくエルキナだろう?」
すると、嬉しそうか、満足そうか、どちらとも取れる顔で
「はいっ!その通りです!」
「それで?初めに戻ろうか、何か用かな?エルキナ」
呼び方を変えただけで随分と距離が縮まった気がする。
「それがですね、カルカトス、あなたを見かけたから声をかけてしまいました」
テヘッと言った調子だ。
「つまり、大した用はないと?」
「えぇ、よろしければどこかでお話でもしませんか?どうにもお時間があまりまして……今の時間から迷宮に潜ると上がる頃には真っ暗ですし、時間をもてあましていたのですよ」
「奇遇だね、私もちょうど時間をもてあましていたんだ」
「それではあそこのカフェにでもどうでしょう?」
「いいね、是非ご一緒しよう」
そうして、他愛のない話を彼女のパーティーとした。
皆品があり、男女比は凄まじいが特に苦しくなかった。
……強いて言うなら恋についての話が苦しかった。
「ねぇ、カルカトスさん?あなた、今おいくつかしら?」
彼女のパーティーの一人前衛騎士の『セリーヌ』さんにそう投げかけられた。
「へ?あ、16です、最近なりました」
つい最近なったんだったか。
「へぇー?私よりも年下かぁ〜……可愛いわねぇ」
ヒエッ目が怖いです。
というかこっちに滑り込むのなんですか!?その特殊な動きは!?
「こらこら、そんなにいじめちゃ行けませんよっ!」
間に入って引き剥がすのは白魔法使いの『カレン』さん。
というか私いじめられてたの……?
「クッキー食べますか?」
「あ、はい、どうも」
「……それでっ!?意中の女性とかはいるのかなぁ〜?」
「意中の女性?……うーん、友達ならいますが……」
「かー!さては君優柔不断男だなぁー!
女たらしって言われるかもしれないから身の振りは考えた方がいいぞ!」
「は、ハハッ、ドウモキヲツケマス」
疲れる、その一言だ。
「……あなたはどうして仮面で顔を?」
終始無言で紅茶を飲んでいた『フルッツ』さんがそう質問をなげかけた。
「……さぁ、私にもよく覚えてないんですよね……気がついたら隠している……何かがあったのかもしれないし、大した理由はないかもしれない……」
「隠してるから隠してるだけってこと?」
「そういうことですね……満足いく答えじゃなくてすいませんね」
「いえ?私は満足したわ……ますます、ただただ興味が湧いただけよ」
ニヤリと青紫の目を向ける。
そんな荒波にもまれ、日も落ちた……宿へ帰ろう。




