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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄とは、誰よりも優しくてカッコイイ人だろう
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フメテアホーム

「……へぇ、家買ってたんですね」


「あまりお世辞にも立派とは言えませんけどね、私たちのパーティーの活動拠点としては十分に働いてくれていますよ」


 魔人のアモラスさんと話しながらみんなよりも少し先を歩く。


「あ、アモラスが上手く対応してくれてる……ホッ」


「『ホッ』じゃないよ……貴方ももっと立派になりなさいよ」


「そ、それは……ごめん」


「かーっ!戦ってる時はすげぇ立派だってのによ……うちのリーダーはよ……」


「まぁ、いいじゃないですかこのギャップが」


 フメテアパーティーはみんなひと味違う面白いパーティーだ。


 獣人のファクトさんは本来の獣人の扱う爪と牙に加え『灰魔法』を扱う魔法戦士。


 翼人のメリッサさんは本来の翼人はその羽の機動力と魔法による広範囲殲滅が得意なのと打って変わってその広範囲殲滅が可能な魔力を拳と両翼に纏わせ殴る拳闘士。


 エルフのテイルさんは、本来ならあまり筋力のないエルフの中では珍しく腕力が……すごいらしい。

確か、噂では木を握ってへし折ったとか。

そんな彼女は槍を使う。


 黒髪赤目の魔人、アモラスさんは原初の魔族そっくりの先祖返りをしていて実力は魔人でも魔族に勝るとも劣らないらしい。

スタイルはなんでもこなす魔法剣士と言ったところか。


 そして、リーダーとしたわれている黒髪赤目の人間、アーガンさんは片手剣を二本腰に下げている。

1度戦いを見たが、フィールドを所狭しと駆け回り、仲間に支持をしながら危なくなった仲間をフォロー、時には2対1を作り出す策士と、その速さを生かした単独突撃も可能な……実力者だ。


 そして、フメテアパーティーは間違いなく私よりも格上のパーティーだ。

全員が全員ゴールドランクで、アーガンさんに至っては何か偉業をなしとげれば文句なしでプラチナへ上がれる力はある。


「……ささっ、座ってお客さんだからね……お茶持ってくるからちょっとまっててね」


 相当話が長引くと踏んでいるのかお茶の準備をしに行くアモラスさん。


「あ、私手伝うわ」


 翼人のメリッサさんも手伝いに行く。



 お茶が6つ机の上に用意された。


「……本題へ入ってもいいかな?」


「あ、お願いします」


「まず一つ質問だ……あ、合計2つだけだし、無理に答えることは無いからね?」


「は、はい」


「おほんっ……パーティーメンバーって、何人が上限か知ってる?」


「ろ、6人?でしたっけ?」


 1人か、最高でもおおよそ3人でパーティーを組もうと予め考えていた身ではあやふやな答えになってしまう。


「そうだね、それはパーティーがパーティーとしては機能しうる最高の人数だ。

どういうことかと言うと、1人だと分け前は1分の1、でも、増えれば1分の2、3……と増えていく、そんな中ひとつのパーティーが固まって行動する上で限りなく切り詰めれば生活できないことも無いと言われているのがその6人だ。」


 まぁ、パーティー様子にもよるだろう。

6人全員大食らいの可能性も、誰かひとりが全く食べなくても大丈夫かもしれない。


 まぁ、平均をとっての話だろう。


「……それではもう一つ質問です……どうして仮面とローブでそこまで隠してるんですか?何をそこまで隠してるんですか?」


「……それは……」


「大丈夫、我々は相手を見た目で判断したりしない

だって、俺がこんな見た目なんですよ?大丈夫、あなたがどんなに恐ろしい姿でも、どんなに傷だらけの顔でも、我々は恐れたり、非難したりはしない……絶対にしないさ」


 さっきまで詰まりながら話していた人物とは同一と思えないほどにはっきりと真っ直ぐにそう言った。


「……私の仮面の下は……」


 この人たちになら見せてもいいかもしれない……隠していたのは怖かったから、申し訳がないから……私を恐れられるのを、私もまた恐れ、だが、みんなに隠しながら、仲間に隠し事をしながら過ごすのは申し訳がないから。


 だけど、彼らにならそんな心配はいらないかもしれない。


「そして、呼んだ最大の理由は……大会が終わってからでいい……俺の、俺達のパーティーに加わらないか?」


 机1枚挟んだ先から手を差し伸べる……既視感のある構図だ……いや、最近はよくこの既視感に襲われる。


「……仮面とローブの下、お見せしましょう」


 差し出したては1度引っ込められ、好奇心からか顎に手をやる。


 俯き……仮面を外し、ローブも脱ぐ。


「………!………ははっ、初めて面と向かって話し合えたね、カルカトスさん」


「わー、綺麗な白髪はくはつ……サラッサラですね、髪も長い」


 確かに、そろそろ髪を切らなくては。


「そうですね、どっかの駄犬のくすんだ髪とは大違い」


 ことある事にファクトさんをバカにするなぁ。


「……やっぱり独特な眼してるなアンタ」


 無視ですか、というか眼?またですか。


「……シーアス様みたいな見た目ね……あなた」


「……へ?シーアス?」


 みんなとは違う方向から私を見ていたアモラスさんがそういった

『シーアス』?なんか……聞いたことがある名前だ。


「運命の神様よ、シーアス様は」


 そう説明してもらった。


「シーアス様は女性の神様で名前の通り運命を司る神様……見た目は真っ白の髪に、蛇のように瞳孔が縦長の赤い目……その目は未来を見通し、白紙の運命に世界を記すの」


「……へぇ、神話も面白そうですね」


「えぇ、そうでしょう?」


 フフっとアモラスさんと微笑み合う。


「……それで、どうかな?パーティーに入るつもりはないかな?」


 話が戻る。


 ヘッドハンティング、嬉しい。


 圧倒的に格上のパーティーから、必要と認められ、そして誘われた。


 何よりも、この用意されたお茶は話が長いからでは無い、私が考える時間を与えてくれているということ。


「……私は迷宮探索を生業にしています」


「俺達も結構潜るよ、それに君が潜りたいのなら俺達も手伝うよ」


「……私は、1人で突き進みたいわけじゃないんです……ただ……」


 言葉に詰まっても急かすような真似はせず、ただ見守り、次の言葉を待ってくれている。


「ただ、あの迷宮の守護者達と向き合い、その果てに私は英雄になりたいんです」


「なるほどね、守護者に情が移ったのかい?」


 攻めるのではなくただただ質問している。


「いや、彼らは……彼らはみんな元英雄なんですよ、その英雄達は、英雄の身であっても叶えることの出来なかった『平凡な夢』や『実現不可能な夢』を抱えてあそこにいる……人生を棒に振ってまで何かを守ってくれた彼らに恩返しの意味も込めて、向き合いたい」


 クロン ウェイパーもそうだ、彼もまた夢を抱えていた。


「……なるほど、なるほどね」


「だから、私は迷宮に潜ります、私は迷宮に向き合います

私以外にも、私より強い人にだってできます、誰にだってできることです……でも、たまには運命の巡り合わせか、私にしかできないこともあるんです……今とか」


「わかった、なら引き止めない……気が変わったら何時でもおいで、君を拒絶しないから」


 優しい人達だ。


「また来てもいいですか?」


「!……えぇ、是非また来てくださいね」


 まだまだ時間は余っている……どうしようかな。

【 灰魔法】


 血統や、突然変異によって生まれる5属性(火 水 風 黒 白)以外の魔法のひとつ

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