地区大会を終えて
「……私の王子様は本当に人気だね……妬けちゃうよ」
フロウさんとの事を見ていたのだろう、私のお姫様ミラン ダリンこと、ハウルがやってきた。
「ははっ、英雄っていうのは人気者でもあるからね……夢に近づいていると自覚できて……こう、嬉しいよ」
そういうと、満足な答えなのか、横柄に頷き
「なぁーるほどね……うん、いい感じだね」
何かを見て、そう言った。
「……ハウルから見て、あの風の勇者どう?」
「……化けるね、今ひとつ自分の壁を越えられていないみたいだけど……1度吹っ切れば……うん、本物だよあれは」
随分と評価が高いが……私も大方同じような評価だ。
「……私も同じような感じですよ……ご飯、食べに行きますか?」
「ん!いいね、是非」
そう言って手をこちらへ向ける。
それを受け取り
「では、行きましょうか」
大会進出を祝い、その日は個室で食事ができるところを選び、仮面をずらしてご飯を食べた。
値段に不釣り合いな程に美味しいのは年季のなせる技だろう。
「いやぁー、美味しかったね、あのお店」
「そうだね、まさかあんなお店があるとは……記憶の中にメモしておくよ」
「……『また行きたいね』」
ミランのその言葉に、返答が詰まった……守護者である彼女は……いや、それを言うのは野暮か、彼女が1番それをわかっている、その上で言っているのだ。
「………そうだね、『また行こうか』」
その返答が相当嬉しかったのだろう、私の方に寄りかかり少しの間無言で宿までの道を歩いていた。
「それで、なんで私の宿まで来てるの?」
「お金無いのよ……だから泊めて!」
「そ、そういえばそうだった……いいよ、私の部屋おいで」
「わーい」
そうだ、彼女は当分私が面倒を見るわけか、幸いお金は余っている。
短い間ではあるが、面倒を見ることは出来そうだ。
「いやぁ、宿のベットもなかなか悪くないね」
「そうでしょ?これでもこの宿はお気に入りでね……もうそろそろ使い続けて半年かな?」
「へぇー!半年で私のところまでたどり着いたんだ……やっぱり才能あるね」
「さ、才能?」
「そ、才能才能、君が固有スキルを持っている点と言い、君のその性格と案外マッチしてるかもね」
「?どういうこと?」
「私ね〜『心眼』っていう凄いスキル生まれながらに持ってるんだー
だから目が見えなくても打ち合いができるし、相手の思考を薄らだけど見透かせるよ」
「……すごいスキルだね」
「まぁね、でも私の真価はコレじゃないんだけどもね」
「……へぇ?なら、どんなのが真価なの?」
「それは私と戦うか、私がそれを使うまでの秘密」
「……それは楽しみだね……いま、戦いたいぐらいに」
「ふふっ、やりたければどうぞ?私はまだまだ君に勝つことが出来る力があるからね
30層の守護者を倒して、すぐの君では40層の守護者の私に勝てないんだよ」
「……なら、追い越すよ、すぐにでも」
「……ふふふっ、それでこそ私の王子様……私は……もう眠たいから寝るね……おやすみ」
「あぁ、おやすみ……アレ?私これどこで寝るの?」
「……すー……すー」
「……ゆ、床かぁ……」
明日は体が痛くなりそうだ。




