40層の守護者
「……笑えるでしょ?」
「……いや、何も、笑うことは無い」
「……へぇ、なんで?」
彼女の背は私よりも小さい、少し膝を地面につき、目線を合わせ、こういった。
「私も同じぐらい馬鹿な夢を見ているからだよ」
その言葉に驚いたような顔をして、こういった。
「……馬鹿な夢……私の夢、馬鹿にしたね!」
むーっと頬を膨らませ、そして、怒ったように腕を上げた。
「あー!?違う違う!」
「なーんてね……わかってるよ、あなたが優しい人なのは」
「や、優しい人?何を根拠に?」
「私に、高さを合わせてかがめてくれるなんて、優しい人だよ」
その程度で?
「……ま、私はね、夢を見ているから、ここにいるの、夢を見て、夢が夢になって欲しくないから私はここにいるの」
「……夢が夢になって欲しくない……私もだな、私だって、夢は諦めていない、本当にこの目で見るまで死ぬ気は無い」
「……ふふっ、君の夢は?」
ニヤリと笑い、子供のように、私にそう聞いた。
「私の夢は『英雄になること』ただ一つだけだ」
「……なるほどなるほど、面白い夢だね、カルカトス」
「ははっ、面白いでしょ?だから、目指す甲斐がある」
「……面白いから、目指す甲斐がある……なんだろうね?私たちってもしかすると息が合うかもね」
「そうかもね、もしかするかも」
守護者と気があって、少し話が熱くなる。
「ねぇ、ならさ、カルカトス、お願いがあるんだ
今までの守護者の夢を叶えたあなたにだから、頼めるお願いが、あるんだ」
「……お願い?……何かな?」
「私を、守れる、私よりも強い王子様になって」
「……私が……王子?」
「うん、絵本の中の、お姫様を助ける王子様みたいにさ
別に白馬に乗って助けに来てとは言ってないよ……たださ、私よりも強い騎士になって欲しいの」
剣聖よりも強い『騎士』それは簡単に聞こえてとてつもなく難しいこと。
例えば、魔王は勇者に勝てる、勇者も魔王に勝てる、けど、それ以外がそのどちらかを越えようと思うと、何か一つを極めなければならない。
例えば剣聖、例えば賢者、例えば……なんにしたって、なんのジャンルにしたって、総合力で叶わないから、別の1点で勝利する他ない。
そして、言い方が荒っぽいが、騎士や剣士は剣聖の劣化版だ。
「……探索者として、剣聖を超えてあなたの王子になる、それでダメかな?」
絞り出した答えはそれだった。
「……あぁ、なるほど、たしかに、私の頼んだ相手は守護者達を超えてきた『探索者』だったね
なら、その探索者さんに、是非ともお願いできるかな?」
「……うん、わかった、それならやってみるよ」
「えへへっ、ありがとっ」
嬉しそうに笑う彼女に、仮面の向こうで頬がゆるむ。
「ならさ、とりあえず、ギルドくる?
人として認められるんだからさ、おいでよギルドに」
「ギルドかぁ!いい響きだねぇ!でも、私も何回か行ったことあるけど、あんまり強そうな人見た事なかったなぁ」
まぁ、剣聖様と比べられる方が可哀想だよ……
「でもなー、1人だけ私に勝てそうなぐらいの天才剣士がいたんだけどなぁ……私彼よりも強かったし……剣士じゃ私にきっと勝てないんだろうなぁ」
そんな剣士がいるなんてびっくりだ、きっと相当に強いんだろうなぁ。
「それじゃ、ギルドいこっか」
「はーい、道案内は頼んだよ?『王子様』」
そんな風言う彼女に合わせるように
「はい、行きましょう『お姫様』」
そう言って手を差し出す。
「うん、いいね、こういう感じ」
お姫様はお気に召してくれたようだ。




