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7.桜のように、儚く解ける只中に。

カクヨムでも頑張ってます。

まだの方は是非_(:3 」∠)_








 ――母さんは、俺が四歳の頃に亡くなった。

 物心ついた頃にはもう身体を悪くしていたのか、家ではなくずっと病院にいたのを憶えている。親父に連れられて見舞いに行くと決まって、なにかお菓子を貰っていた。そして少なくとも自分がいる間は、常に笑顔を浮かべていたのだ。


 だからある朝、母が亡くなった報を聞いた時は信じられなかった。

 葬儀には父方の親戚しか出席せず、みんなが神妙な面持ちを浮かべて目を伏せる。涙を流す人もいれば、何かを噂している親類もいたように思う。


 俺は子供ながらに、それが普通の葬式ではないと感じていた。

 だけど親父はそんな中でも気丈に振る舞って、涙一つさえ見せない。それを心がないのだと語る者もいたが、俺にはその理由が漠然と良く分かっていた。

 親父はただ一生懸命に、息子の俺が不安に思わないようにしていたのだ。

 本当は誰よりも泣き叫びたかっただろうに、自分よりも残された子を想いながら。


 それを知っていたから、俺はあえていままで母さんの話は訊いてこなかった。

 父の部屋の片隅にはいまでも、その遺影が置かれているのは知っている。恵梨香さんと再婚した現在でも、彼はきっと母さんのことを心の底から愛していた。



 ――だったら、もういいのではないか。



 親父はきっと、すべてを一人で背負い込もうとしていた。

 それが何かはまだ知らない。でも、俺だってもう小さな子供ではないのだ。

 これまで男手一つで育ててもらって、いまでは隣に絵麻や恵梨香さんだっている。そろそろ親父だって、重荷を置いてもいい頃ではないか。

 俺たちという家族と、分かち合っても良いのではないか。







「親父、まだ起きてたのか……?」

「んー……拓哉か。ちょっとばかり、昔を思い出してたんだ」



 絵麻と恵梨香さんが寝静まった頃合い。

 俺がリビングへ向かうと、ソファーに親父が腰かけていることに気付いた。どうやら少しばかり、晩酌をしているらしい。普段はあまり呑まない人なのだが、どういった風の吹き回しだろう。

 そう考えていると、俺はテーブルの上に置かれている写真立てに気付いた。



「親父、それって……母さんの?」



 そこには笑う母と、何やら照れる父の姿。

 大学の卒業式、なのだろう。スーツと晴れ着姿の彼らは、本当に幸せそうだった。そんな時間が永遠に続いてほしいと、未来を知る自分が心から願うほどに。

 そう考えていると、親父は一つ息をついてから言った。



「拓哉。せっかくだし、一緒に呑むか?」

「ばーか。未成年に酒を勧める親がいるかよ。待ってなって」



 焼酎の入れ物を示す父に、俺は小さくツッコミながら。

 ひとまず冷蔵庫からオレンジジュースを取り出し、コップに注いだ。そして親父の向かい側の席に腰かけて、真っすぐに彼を見つめる。

 親父はいつもならそこで茶化してくるはずなのに、今夜は違っていた。

 しばしの間を置いてから窓の外、遠くに微かに覗く桜を眺めながらこう口にする。



「母さんは、本当に桜の花が好きだったんだ」

「……そう、だったんだ」

「あぁ、ホントにな」



 そして焼酎をコップに注いで一口。

 ゆっくりと息をついてから、次いでこう言った。



「私を忘れないで、か」――と。



 それが何を意味するのか。

 俺が首を傾げていると、親父は小さく笑んで教えてくれた。



「桜の花言葉だよ。儚く散る中で、誰かの記憶に残るように……ってな」

「親父……」



 その言葉の中に、悲しみを感じる。

 いつにない父親の姿に、俺は一瞬だけ惑った。だが、覚悟を決めて――。




「なぁ、親父。一つ訊いていいか?」

「……なんだい」




 大きく深呼吸をしてから。

 しかし、視線は絶対に相手から外さずに。




「母さんって、どんな人だったんだ?」――と。




 


流れ、変わったな。



面白かった

続きが気になる

更新がんばれ!




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「隣の席の朝倉さんは、どうやら異世界帰りの聖女様。」こちらも、よろしくお願い致します。
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