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6.拓哉の母。







 ――二十数年前。

 柊大学の入学式は、思いの外に慎ましやかな場所で行われていた。

 勇と哲也は高校時代からの親友であり、共に同じ大学にまで通うことを決めたのである。そんな友人を隣に、勇はぼんやりと舞台の上を眺めていた。

 そろそろ式の開始であるが、そんなことよりもサークル活動の見学が楽しみだ。そう考えて勉学や、その先の人生のことなど後回し。大学生活というモラトリアムを楽しむ気が満々だった。



「えー……柊大学、入学式を行います」



 そして、担当教員の気の抜けた挨拶から式は始まる。

 予定されている内容が順番にこなされ、次に新入生代表挨拶となった。



「……お、おおお!?」

「どうした、勇」

「いやいや、見てみろよアレ!」

「ん……?」



 そんな時だ。

 舞台に上がった同期の女子に、二人が目を奪われたのは。







「それが俺の母さん、だったんですか?」

「おう、それはもう美人でよ! ウチのカミさんには申し訳ないが、アレはまさに月とスッポン! 雲泥の差ってのをいまになっても思うぜ!」

「…………」



 勇おじさんは酒の勢いでそう語るのだが、俺は彼越しに見えるおばさんの表情が気になって仕方ない。何やら意味ありげな笑顔を向けているため、あるいは勇おじさんの命は今日までかもしれなかった。

 もちろん、比喩表現だが。

 しかし自分の母親の話というのは、かなり興味があった。

 そのため俺はおばさんに苦笑いを返しながら、おじさんにこう訊ねる。



「それじゃあ、母さんと仲良かったんですよね。親父と結婚してからも互いに付き合いがあった、ってことは――」

「あー……そうだな」



 亡くなった母さんが、どんな為人をしていたのか。

 それに詳しいのであれば教えてもらいたかった。だって、



「お前は、知らないんだ。知りたいのは当然、か」

「………………」



 俺は自分の母親のことをあまり、知らないから。

 親父に訊ねたことは何度もあったのだが、彼は適当なことを言いながら誤魔化し続けていた。その理由も含めて、俺はいっそ勇おじさんに教えてもらおうと考える。

 だが、しばらく考えた後に――。



「これはやっぱ、哲也の口から、だな。アイツだっていい加減に、腹を決めてるだろう。それでも駄目なら、オレが許可したって伝えとけ」

「勇おじさんが、許可……?」

「おう。互いに同じ女に惚れた者同士、だからな」

「…………え?」



 ――ちょっと待ってほしい。

 色々と初耳の情報が飛び込んできて、意味が分からなかった。

 そんな困惑を察したのか、勇おじさんは俺の頭を乱暴に撫でながら言うのだ。



「気にすんな。それと、これだけは確かだから教えておくぜ」

「は、はい……」



 ニッと、気持ちの良い笑顔を浮かべながら。




「お前の母親、カレンはお前を愛していた。間違いなく、な」――と。




 その言葉に俺は、訳も分からず息を呑んだ。

 ただ、おじさんの言葉に込められた優しさだけは理解できる。




 今夜は、親父としっかり話そう。

 そう決意した瞬間だった。




 


だいぶ難しくなってきたでござるな。



面白かった

続きが気になる

更新がんばれ!




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「隣の席の朝倉さんは、どうやら異世界帰りの聖女様。」こちらも、よろしくお願い致します。
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