4.宴も終わりに近づく中。
宴もたけなわ、というやつなのだろう。
大人たちは三人で酒を飲み、子育てや世間話に花を咲かせていた。対して俺たち高校生三人組は、ぼんやりとジュースを口にしたり、おやつとして用意された菓子をつまんでいる。
出てくる話題といえば学校のこと、絵麻の生徒会のこと、瀬奈の部活の現状ことなど。いつもとこれといって代わり映えしないものの、いまから酔いの回った大人の間に混ざる勇気はなかった。そんなこんなでヒラヒラ舞い降りる桜の花弁を眺めながら、俺は甘酒を口に含む。
「お兄ちゃん、なに飲んでるの?」
「ん、甘酒だけど」
「私もちょっとだけ、飲んでみて良いかな」
「問題ないんじゃないか? 酒といっても、アルコールないし」
そんな中で絵麻は、こちらの手にしている飲料が気になったらしい。
俺が口にしていたのはアルコール1%未満のもので、分類的には清涼飲料水となるはずだった。味はともかく雰囲気を味わってみたい、と思ったのだが、それほど美味しくはない。
それでも義妹の好奇心は尽きないらしく、注いでやるとちびちびと飲み始めた。
「瀬奈はさっきから、なに黙ってるんだ?」
「うーん、疲れちゃったのかな」
「………………」
俺はそこでふと、先ほどから黙りこくってしまった幼馴染みを見る。
何やら次第に会話へ参加しなくなり、いよいよ無言になってしまったのだ。リハビリを毎日のように頑張っているというから、疲労も蓄積しているのかもしれない。
それなら起こすのも悪い気がする。
そのように考えて、俺はまた桜の木を見上げつつ――。
「……ひっく」
「ん……?」
自分の甘酒を口にしようとした。
その時だ。
「絵麻、どうした。しゃっくりか?」
「ひっく……」
何やら絵麻の様子に変化が起きたのは。
俺がそれに気付いたのは、彼女がしきりにしゃっくりをし始めたから。それ自体は別に変なことではないのだが、しかしどうにも違和感があった。
うつむき加減だった彼女が面を上げると、そこにあったのは――。
「んぇ……おにいちゃん……?」
「…………お、おう」
明らかに酔いの回った頬の紅潮。
目は眠そうにとろんとして、どことなく呼気が荒かった。
耳まで赤く染まっている姿はどこか艶やかだが、これはかなりマズいのでは。そう考えた俺は、急いで大人たちに助けを求めようとした。――だが、
「やぁ、いっちゃ……や!」
「お……おい、絵麻――」
「おにいたんは、わたしといっしょ」
「…………」
服の裾を掴まれて、身動きを封じられてしまう。
状況が状況のために振り切っても良かったが、義妹は今にも泣き出しそうな表情を浮かべていた。ここで無下に扱えば、どのようなことを口走るかも分からない。
俺はそうならないよう、細心の注意を払いながら絵麻の相手をすることに。
すると彼女は、甘酒をまた一口して言うのだった。
「ん!」
――え、いや「ん!」ってなんすか。
何やら絵麻は唇を尖らせて、こちらに向けてきている。目を細めて、まるで誘うような表情で。それこそ口付けを求めるかのようなもので、俺はしばし思考停止した。
そうしていると、痺れを切らしたのは義妹の方。
彼女はゆっくりと身を寄せてきて、俺の顔に手を当てがっったのだ。そして、
「んー……!」
「ちょ、絵麻!? それは待て、ストップ!?」
これは駄目だ、完全に酩酊してしまっている。
俺はさすがに限界を感じて、誰かに助けを求めようと考えた。
すると一番に視界に入ったのは、うつむいたままの幼馴染みの姿で。俺は必死に手を伸ばして、その肩を揺するのだった。すると瀬奈は――。
「んん……たっくん……?」
「瀬奈、ちょっと助け――」
俺の悲鳴を聞き届ける前に、こう口にするのだ。
「ぎゅー、して?」――と。
絵麻と同じく、妙に赤らんだ顔をしながら。
「お前は場酔いかよっ!!」
大人組の楽しげな会話を遠くに感じながら。
俺は義妹と幼馴染みという、二人の酔っ払いの相手をすることになったのだった。
酒禁止だな、この二人。
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