3.花より団子な時間の中で。
「わ、これ絵麻ちゃんが作ったの!?」
「うん! でも、そっちから半分はお母さんだね。私が最初から一人で作った、ってなると三分の一くらいなのかな……?」
「いやいや、嬢ちゃん! それでも凄いもんだぜ!」
「そうよ、絵麻? わたしが高校生の頃は、全然だったもの」
――そして、お花見開始。
しかし桜の花弁を愛おしんでいたのも最初だけで、メインとなるのはやはり食事だった。料理は小園家と野川家で各々に持ち寄ったのだが、義母と義妹の腕前に他全員が舌を巻いている。もちろん俺もその中の一人であって、改めて感心するばかりだった。
特にこの出汁巻き卵なんて、程よい甘味があって非常に美味い。
「この出汁巻き卵、作ったのは?」
「え、そ……そのー……」
「……ん?」
素直にそう思ったので訊ねると、何故か絵麻が視線を泳がせた。
なんというか、緊張感に満ちた表情を浮かべている。それの理由が分からずに首を傾げていると、答えを口にしたのは恵梨香さんだった。
「それは最初から最後まで、絵麻が作ったんですよ」
「へぇ……!!」
それを聞いて俺は驚く。
何故なら、先ほどの話もあったので恵梨香さんが作ったものと思っていたから。だけどそれだとしたら、俺は絵麻に謝罪しなければならない。
無意識のうちに、自分は義妹のことを見くびっていたのだから。
ただ、それより前に伝えるべきことがあった。
「絵麻、この出汁巻き卵だけど――」
「う、うん……」
「――ん、どうした? そんなに口を真一文字に結んで」
だから俺が感想を口にしようと、絵麻に向き合うと。
あからさまに彼女の表情は強張っていた。狼狽えている、といってもいい。
とにかく絵麻は不安そうで、よく見れば忙しなく指を動かしていた。頬もどことなく赤いように見えたのだが、場酔いでもしたのだろうか。
そう思っていると、何やら勇気を振り絞った表情で彼女は言った。
「ど……どうだった、かな?」
ややうつむき加減で。
上目遣いにそう訊いてくる義妹に、俺は一つ頷いてから答えた。
「あぁ、めちゃくちゃ美味いよ!」
「ほ、本当!? やった!」
すると絵麻の表情は、満開の桜にも負けないくらい華やかに。
先ほどまでの憂いはどこへ行ったのか、いまにも蕩けてしまいそうなほどの笑顔になるのだった。それを見てこちらはようやく、義妹が緊張していた理由に合点がいく。
なるほど、絵麻は自分の料理に自信を持てなかったのか。
たしかに大勢へ振る舞うとなれば、当然そのようになっても仕方なかった。
「もっと自信持てばいいのに。絵麻の料理は、凄いんだから」
「う、うん……!」
俺がそう心から褒めると、彼女の表情はさらに赤くなる。
すると、どこからか呆れたような声がした。
「そこじゃない、ってのは言いっこなしか……?」
「……ん、勇おじさん?」
「や、なんでもねぇよ」
振り返るとそこには、酒で頬が赤らんだ瀬奈の父。
彼は首を傾げた俺を見てまた一つ、大きめのため息をついて肩を竦めた。そして自身の娘に向かって、このように言う。
「良かったな、瀬奈。まだチャンスあるぜ?」
「ひゃ……!? なに言ってんの、お父さん!?」
それに素っ頓狂な声を上げた瀬奈。
幼馴染みは目を丸々とさせ、自身の父に向かって抗議していた。
いったい何が『チャンス』なのか、俺はまた分からずに疑問符を浮かべる。絵麻には聞こえていないようなので、にこやかな笑みを浮かべる恵梨香さんに訊いてみた。
「どういう意味です?」
「あらあら。どういう意味でしょうねぇ……?」
すると何やら、含みのある言い方で逃げられてしまう。
いったい、何だというのか。
「んー……?」
俺はその疑問に、思い切り眉をひそめて腕を組んで考え込んだ。
そして、しばらく悩んだ結果――。
「――ま、いっか!」
そのように、結論付けたのだった。
ま、いっか……じゃねぇよw
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