2.顔合わせに際して。
「お誘いいただいて、ホントにありがとうございます!」
「いえいえ。いつも絵麻がお世話になってます」
「いやあ、それほどでも~!」
「俺が言うことじゃないけど、少しは謙遜とかしろよ」
桜が満開になったのは、三月も下旬のことだった。
まだか、まだかと毎朝のようにテレビに喰いついていた親父は、なんと仕事の都合で不参加。何やら新年度直前で、色々と忙しいらしい。休日にもかかわらず駆り出される社会人の哀愁は、仕事に向かっていく寂しい背中からよく伝わってきた。
その代わりでもないのだが、本日の幹事は恵梨香さん。
ふわふわとした雰囲気をそのままに、彼女は野川家の面々と挨拶していた。
「うふふ。あなたが噂の瀬奈さんね、ふたりから話はよく聞いてますよ」
「いやー……絶世の美少女だなんて、たっくんも言い過ぎだよねぇ」
「言ってないからな、一度たりとも」
その中でも最も会話が弾んでいたのが、瀬奈とである。
そういえば、家で話題に出る割には初対面だった。俺はそう思って間を取り持とうと考え、二人の会話に耳を傾けていると――。
「噂では、ずいぶんと拓哉くんと仲良し、とのことね?」
「いやいや。普通に幼馴染みですよ? もっとも、誰よりも仲良いですが」
「うふふ、そうなのね。でもいまは絵麻もいるし、時間が減って寂しいんじゃないかしら」
「そんなことはない、ですかね。絵麻ちゃんも色々と『気を遣って』くれますし、むしろ以前より濃密な感じがしますね」
「あら、そうだったのね。でも、家での二人を知らないわよね?」
「いやー、そこまで踏み込むのは無粋かなぁ、ってね?」
なんだろう、言い様のない空気感がある。
互いに笑顔なのだけど、妙に険悪というか。しかし罵り合うわけでなく、あくまで友好的な言葉遣いをしている。内容については俺と絵麻、そして瀬奈の三人の話をしているのだが、どうにも意図が掴めなかった。そんなわけなのだが、先ほどから背筋が寒いのは何故……?
「お兄ちゃん、どうしたの? 顔色悪いよ」
「……いや、なんでもない。ただ本能に訴える何か、がな」
「本能に……?」
そうしていると絵麻が声をかけてきた。
俺の言葉を聞いた義妹は、頭の上に疑問符を浮かべながら小首を傾げる。しかしこちらにだって、意味が分からないのだ。彼女に答えがあるわけがない。
そう思って俺は一度、野川家の親御さんに挨拶をすることに。
「お久しぶりです、お二人とも」
「この間はありがとうね、たっくん」
「久しぶりだな、小園のとこの坊主! 大きくなったな!!」
すると特に、瀬奈の父――勇おじさんは、乱暴にこちらの頭を撫でてきた。
奥さん、つまり瀬奈の母である良子さんは苦笑い。相変わらずの様子に俺はどこか安心感を抱きながら、ひとまず義妹の紹介をするのだった。
「それで、こっちが義妹の――」
「絵麻です。よろしくお願いします!」
「おおお……!」
「あなた、この子が……!?」
瀬奈の両親に深々とお辞儀をする絵麻。
そんな彼女を見て、二人は何やら息を呑みながら顔を見合わせた。そして、
「ちょっと、こっちこい。……拓哉」
「え、はい……?」
勇おじさんは、何やら俺の首根っこを掴んでくる。
されるがままに引きずられて、一団から離れた場所にくると彼はこう訊いてきた。
「単刀直入に訊くが、どっちだ……?」――と。
しかし、俺は意味が分からず。
ただ無言で首を傾げると、彼は次第に表情を曇らせていった。
「あの、勇おじさ――」
「……まぁ、いまはまだ良い。大目に見てやる」
「は、はい……?」
「だがな――」
理由を訊こうとすると、おじさんは俺の肩に手を置く。
その上で、彼は低い声で言うのだった。
「瀬奈を泣かせたら、容赦しないからな?」
「……はい?」
――なんの話ですか、ホントに。
だが、この話はここで終わってしまうのだった。
そんな感じで、お花見は始まる。
雲行きが若干怪しいのは、いったい何故なのなのだろうか……。
瀬奈の両親、初?登場。
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