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1.お花見行こうぜ。









「え、お花見……?」

「パパが『今年は絶対に花見をするぞ!』って」



 三月に入り、気温もずいぶん高くなってきた。

 雪の季節はもう過去のものになり、毎朝起きるのがもったいなくなるほど。そんな春眠暁を覚えず、を身をもって体感していた頃合い、食器を洗っていると絵麻がそう言った。

 今年は例年より、暖かくなるという予報らしい。

 したがって三月頭の時点で、そのような話をしても悪くはないのだろう。



「それって、近くの公園で?」

「うん。せっかくだから、野川さんも呼ばないか、って」

「あー、瀬奈も、か。たしかに、いつもなら部活だったからな」



 怪我の功名とは言いたくはないが、幼馴染みはリハビリを頑張っている。そんな彼女の気休めというか、ちょっとした息抜きになればいいとも思えた。

 これは我が父にしては、珍しく妙案かもしれない。

 俺がそんなことを考えていると、ちょうどリビングに親父が入ってきた。



「おー、先に風呂いただいたぞー」

「はーい。大丈夫ですよー」



 身体から湯気を昇らせつつ、そう口にする父。

 絵麻は『義父が先に入浴』という、思春期の女の子が嫌がりそうなことを気にせず答えた。当たり前のことながら、この義妹は本当に精神的に大人だな、と思う。その反面で脆いところがあるのも知っているが、だからこそ俺が支えたいとも思えるのだった。

 それと同時、すっかり一つの家族として成立していることを嬉しく感じる。

 俺はそんなことに感動しながら、絵麻にこう言った。



「絵麻、先に入ってきなよ。食器はあと少しだし」

「いいの? それなら、お言葉に甘えようかな」

「おう、絵麻ちゃんもサッパリしといで! 皿洗いは僕に任せな!」

「お願いですから、パパは食器に触らないでね? 割っちゃうから」



 こちらの提案に、義妹は笑顔で頷く。

 その上で親父の発言に対して、ぐさりと釘を刺した。

 遠慮のなくなってきている具合もまた、良い意味で慣れを感じる。



「それじゃ、お願いね。お兄ちゃん!」

「おー!」



 そんなこんなで絵麻が風呂へ向かった。

 そこで俺は、ひとまず手を止めて親父に向き直る。



「お花見だって? 親父にしては、良い提案じゃん」

「そうだろ? 称えてくれて構わないぞ!」

「ただ、さ。これだけは言わせてくれ――」

「……ん?」




 俺は偉そうな親父のもとへ歩み寄り、拳を握りしめた。

 そして、





「義理の娘に『パパ呼び』させんな、このボケがぁ!?」

「ぐほあぁ!!」





 そう声を張り上げながら、実父のどてっぱらに一撃を叩きこむのだった。




 


ここから新章。

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「隣の席の朝倉さんは、どうやら異世界帰りの聖女様。」こちらも、よろしくお願い致します。
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