9.朝を迎えて。
「ん、んん……? あぁ、あのまま寝ちまったのか」
俺は窓から差し込む日の光に瞼をくすぐられ、目を覚ました。
雨はすっかり鳴りを潜めており、春の近付きを感じさせるような穏やかな輝きがこぼれている。肩にかかっていた毛布は自然、伸ばした足の上に落ちていた。そういえば、絵麻のやつはどうしたのだろう。途中で目が覚めたのだとしたら、俺のことを起こさないように部屋を出たか。
しばらく考えたが、答えは見つからなかった。
寝ぼけた思考では当然だが、とりあえず俺は凝り固まった身体を伸ばす。ポキポキと関節が良い音を鳴らし、気持ちがいい。
寝姿勢のことを除けば、ずいぶんと寝覚めは良かった。
「ホントに、気持ちいいな。……さて、と?」
思っていることが、つい口から出るほど。
今朝は非常に気分が良かった。そして折角なら、朝日も浴びよう。
俺は珍しくそのように思い立って、伸ばしていた足を動かそうとした。すると、
「ん…………?」
「うにゅ……」
なんだろう、嫌な予感がする。
俺の膝の上に微かだが、何かが乗っているような感触があった。
それは毛布に包まれているらしく、足を動かした際に可愛らしい鳴き声を発する。ここまで考えたらもう、答えは一つなのだが、確認するまではどうにも疑いにくかった。
それでも、確かめないわけにはいかない。
「…………よし!」
俺はそう気合いを入れて、ゆっくりと毛布を捲っていった。
すると、そこには案の定――。
「すぅ……うぅん、すぅ……」
あまりに無防備に眠る可愛い義妹の姿があった。
若干オーバーサイズのパジャマだったらしく、肩口のあたりがはだけており、なんとも魅惑的な――という表現をするのもはばかられるが、とにかくいつにない艶やかさがある。それと同時に、いつもと変わらない愛らしさが共存しているために、俺は一瞬だが思考停止した。
そして、まじまじと彼女の愛おしい寝顔を観察して――。
「はっ……! いかん、こんな状況を誰かに見られたら!?」
ふと、あらぬ誤解を招く可能性が脳裏をよぎった。
そしてすぐに、義妹を起こそうと手を伸ば――。
「みーたーぞー? いひひひひひひひ!」
「……………………」
最悪のタイミングで、最悪の相手に見られてしまった。
我が父にして我が家最大の危険分子たる小園哲也は、半開きのドアから顔を半分だけ覗かせて、これでもかというほどにイヤらしい笑みを浮かべている。
これは、色々とヤバい。
そう思った瞬間、親父は勢いよく駆け出した。そして、
「恵梨香さぁん! 聞いてぇ!!」
「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
妻である恵梨香さんに、報告しに向かったのである。
俺はできる限りゆっくり立ち上がり、即座にその後を追うことになったのだった。
◆
「ふ、ん……? お兄ちゃん?」
その騒動に、絵麻はぼんやりと目を覚ます。
そして開きっぱなしのドアを見つめて、しばらく考えるそぶりをした。
だが彼女は、寝ぼけ眼で小首を傾げて――。
「んん、お兄ちゃんのにおい……」
また、拓哉の毛布に包まって寝息を立て始めたのだった。
この章はここまで!
夜からは、新章開幕ですね。
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