3.瀬奈の思い出。
ちょこっと過去編。
「うー……また試合、負けたー……!」
とある日曜日のこと。
当時中学一年生だった瀬奈は、部活に精を出していた。だが通っていた中学のハンドボール部は、地域でも最弱。そのため瀬奈がいくら一人、孤軍奮闘しても勝利には程遠かった。
今日も今日とて練習試合で敗北し、彼女は少しばかり凹んでいる。
「そもそも、先輩たちも先輩たちだよ。負けてなんで笑ってるの……!?」
そして、次に出てくるのはそんな愚痴だった。
ハンドボール部の士気は、全体的に低い。下級生はそうでもないのだが、上級生がいわゆるエンジョイ勢という雰囲気なのだった。試合にメインで出る彼女たちがそれでは、勝ちようもない、というところ。負けず嫌いである瀬奈にとって、それはとかく歯痒かった。
「うーあー! どうしたら良いんだぁ!!」
「うお!? どうしたんだよ、瀬奈!!」
「あ、たっくん!? どうしてここに!?」
そんな感情が爆発して叫んだ瞬間だ。
拓哉が偶然に通りがかり、それに驚いたのは。
彼が現れたことに対してまた驚いた瀬奈は、さらに大きな反応をしてしまった。
「俺はちょっと、学校に忘れもの。そっちは部活帰りか?」
「…………うー、たっくんー! 聞いてー!!」
「え、なんだよ……?」
ただ、拓哉はいったん落ち着いて。
そのように説明すると、瀬奈は彼の言葉に悔しさを思い出した。そして助けを求めるように、幼馴染みへ事の次第を語るのだ。
「あー、そういうことか」
「そうなんだよ! どうしたら良いと思う!?」
すると拓哉はしばし考え込み、瀬奈にこう返す。
「俺だったら、諦める、かな」
「……えぇ!?」
そんな幼馴染みの言葉に、彼女はまた大きな声を上げた。
そして、彼の肩を掴んで訴える。
「アタシは勝ちたいの! 諦めるなんて、なしだよ!?」
「ゆーすーるーなー! なにも、全部諦めろ、とは言ってないだろ!?」
「へ……どういうこと?」
「えっとな、つまり――」
揺さぶられたことによる頭痛に耐えつつ、拓哉は説明を始めた。
「その先輩たちは、あと少しで引退だろ? だったら瀬奈が働きかけるべきなのは、二年生と同級生、じゃないかな。いますぐを考えるんじゃなくて、逆算するんだよ」
「逆算……?」
「そそ。結局、一番長くハンドボールやるのは同級生だろ? だから自分たちの順番の時には、もっと活気を出せるようにしておくんだよ。だから、いまの先輩たちは『諦める』」
「ほほう……」
そんな彼の言葉に、瀬奈は納得する。
たしかに拓哉の言う通り、先輩たちはもう二ヶ月ほどで引退だった。そんな彼女たちを変える、という方が困難であるようにも思われる。
その点ではきっと、幼馴染みの案の方が確実で現実的だった。
そう思った瀬奈は拓哉に、笑顔でこう伝える。
「ありがとう、たっくん! 意外と血も涙もないね!!」
「意味わかって使ってるのか? それ……」
「え、冷静だね、って意味じゃないの?」
「どっちかといえば、冷酷、だな」
「何が違うの?」
「…………」
瀬奈の言葉に、拓哉は思わず声を失う。
だが、彼女の方は意気揚々とやる気に満ち溢れるのだった。
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