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5.後輩たちの想い。






 ――そうして迎えたバレンタインデー当日。

 俺と絵麻がいつも通りに登校すると、なにやら絵麻の靴箱に紙袋が入っていた。差出人は不明だが、十中八九あの子、というのは分かる。

 しかし絵麻にはピンときていないらしく、首を傾げていた。

 こちらはそれを察して苦笑しつつ、周囲に彼女がいないかを確かめる。すると、



「まったく、隠れなくても良いだろうに……」

「どうしたの? お兄ちゃん」

「……いや、別に」



 はるか遠くに、雨宮さんのようなお下げ髪がはみ出しているのを見つけた。

 思わずそう言葉が漏れると、絵麻が訊いてくる。はぐらかすと彼女はまた首を傾げるが、ひとまず靴を履き替えて紙袋を開いた。

 中に入っていたのは、少し不格好な形をしたチョコクッキー。

 添えられた手紙に書いてあったのは――。



『お慕いしています、絵麻会長 雨宮恵』



 そんな一言だった。

 一緒に作ってはいたが、まさか自分宛と思わなかったのだろう。

 絵麻は驚いたように、手紙とチョコクッキーを見ていた。そしてしばらくしてから、とても嬉しそうな笑顔を浮かべて俺に言う。



「お兄ちゃん……! これ、嬉しいよ!」

「あぁ、よかったな」

「……うん!」



 こちらが返事をすると、絵麻は蕩けたような表情になって紙袋を抱きしめた。

 後輩からの親愛が、相当に嬉しかったのだろう。教室へ向かうまで義妹はその状態のまま、弾むような足取りだった。

 俺はそんな彼女の様子に、思わず頬が緩む。

 周囲の学生たちも各々に盛り上がっているようで、今日一日は楽しい時間になりそうだった。







「あははー! ごめんね、アタシだけ既製品で!」

「いいって、大丈夫。その足で自分で作った、とか言ったら逆に驚く」



 教室に入ると、親の車で送ってもらったのだろう。

 先日、退院した瀬奈が席に座っていた。そして元気いっぱいに手を振りながら、俺に向かって事の発端である友チョコを差し出してくる。言うまでもないが、瀬奈のそれは既製品。

 それでもなかなかに高価なものを選んでくれたらしい。

 綺麗な包装がされており、いまここで開封するのは気が引けてしまった。



「絵麻ちゃんは?」

「ちょっとクラスの用事があるんだってさ。後でくるよ」

「そっか」



 そして俺も自分の席に着いて。

 ふと、とあることに気が付いた。



「瀬奈の机に掛かってる、この紙袋は?」

「あ、そうそう! いま、杏子が色々補助してくれてるんだけど――」



 彼女の席の横にあるシンプルな紙袋。

 それについて訊ねると、幼馴染みは嬉しそうに後輩のことを語った。



「――『これ、その……ほ、本命です!!』って、あの子がくれたの!」

「なるほどな。それで、中はもう見たのか?」

「まだだよー、でも本命だからね。たっくんにも秘密でーす!」

「あはは、そりゃそうか」



 そう言いながらも、俺は知っている。

 なにせ先日、赤羽さんが真剣な表情で作っていたのを見ていたから。いくらか不器用な出来になってはいたが、それでも込められた気持ちは間違いなく綺麗なものだった。

 それも込みで笑っていたら、



「おやおや? たっくん、何か知ってますねぇ?」

「い、いや……?」

「嘘は良くないよ~?」






 どうにも察しの良い瀬奈に、詰められてしまう。

 だが何とか逃げ切って、絵麻がくるまで持ちこたえたのだった。



 


カクヨムでも(ry



面白かった

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「隣の席の朝倉さんは、どうやら異世界帰りの聖女様。」こちらも、よろしくお願い致します。
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