1.バレンタインデーを間近に。
ここから章が変わります!
「そういえば、もうじきバレンタインデーかー!」
「あぁ、そういやそうだっけ?」
二月に入って少し経ち、瀬奈のリハビリも少しずつ始まった頃。
幼馴染みは病院のベッドの上で寝そべりながら、そんなことを言った。俺は隣の椅子に腰かけながら、ボンヤリと答える。毎年、彼女からは義理チョコを貰っていたものの、今年は事情が事情なだけにゼロであることも覚悟していた。
そんな俺の考えを察したのか、どこか呆れたように瀬奈は言う。
「もー、鈍いなぁ……たっくんには、今年から絵麻ちゃんがいるじゃん!」
「……絵麻? あー、たしかに」
しかし、仲の良い義妹だからって過度に期待よいものか。
そんな気持ちがあったので、俺はどちらつかずの曖昧な態度を取ってしまった。するといよいよ、幼馴染みは半笑いとも、苦笑とも取れるような表情になってしまう。
ありていに言ってしまえば、こいつマジか、といった顔だった。
「これは、絵麻ちゃんも苦労するなぁ……助かるけども」
「どうして絵麻が苦労すると、瀬奈が助かるんだよ」
「問題の本質は、そこじゃないんだよねぇ……」
「……はぁ?」
肩を竦めて鼻で笑われてしまう。
さすがに俺は少しイラっとするけれど、場を考えて声を抑えた。そうしていると瀬奈は、こちらの鼻っ面に指を突きつけながら言うのだ。
「この鈍感さんは、そろそろ怒られれば良いと思いまーす」
「鈍感さん、って……」
わけが分からない。
とにもかくにも、今年のバレンタインは無風だと、そう思っていると――。
「そうだ! 思いついた!!」
「うお!? 声大きいって!?」
途端に瀬奈は両手を突き上げながら、そう叫ぶのだった。
周囲の他の患者から視線が集まるのだが、幼馴染みは気にした様子なく俺の肩を掴む。そして、このように提案してくるのだった。
「三人でさ、友チョコ交換しようよ!」
「と、友チョコ……?」
「そそ!」
友チョコって、普通は女子同士で配り合うものでは?
そんな疑問を抱いたが、つまり俺自身が男として見られていない、ということに気付いてファイナルアンサー。でもたしかに、せっかくの機会だから絵麻に何かを贈るのもありかもしれない。最近は受験勉強の手伝いもしてもらっているし、感謝を形にしたかった。
「まぁ、瀬奈にしては妙案だな」
「でしょー? えへへ、瀬奈にしては、ってどういう意味かな?」
何はともあれ、そうして俺はバレンタインにチョコ制作をすることに。
帰ったら絵麻にも相談しなければ、と思うのだった。
◆
「三人で、友チョコ……?」
「そう。瀬奈がせっかくなら、みんなで楽しもうってさ」
「三人……なるほど、先手を打ってきたんだね」
「絵麻……?」
そんなわけで、帰宅後に義妹へ提案。
すると彼女は唇を少し尖らせ、しまったといった感じに言った。だが、
「ううん、なんでもないよ! お兄ちゃんは、チョコ作ったことある?」
「いや、ないな。料理だって、からっきしだし」
首を左右に振ってからそう訊いてくる。
俺は不思議に感じつつも、先日の一件を思い出しながらそう答えた。すると、
「それならさ、一緒に作ろうよ!」
今度は絵麻が、そのように提案する。
どうやら今年のバレンタインは、なかなか賑やかになりそうだった。
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