9.義妹の変化と、惑う兄。
「ただいま、お兄ちゃん」
「おかえりー、絵麻」
リビングで勉強をしていると、生徒会の関係で遅れていた絵麻が帰宅した。
外は雨が降っていたが、大丈夫だったのだろうか。迎えに行くと濡れてはいないし、とにかく風邪を引く心配はなさそうだった。それでも冬の風に当てられたのだから、すぐに暖を取るべきなのは変わらないだろう。そう考えて、
「早くリビング行こう。寒かっただろ?」
なんてことのない。
普通のことを口にすると、絵麻はしばらく考えたようにして言った。
「ありがとう、お兄ちゃん」
「ん、お……おう?」
なんだったのだろうか、いまの間は。
それに彼女の言葉というか、言い方にもどこか含みがあるように思えた。俺は首を傾げて、どういう意図か分からないといった表情をしていると、義妹は小さく笑って言う。
「……なるほど。たしかに赤羽さんの言う通り、だね」
「へ……?」
ますます意味が分からなかった。
赤羽さん、というのは、瀬奈の後輩であるあの女子のことだけど。彼女との間にいったい何があったのか、こちらは知りようがなかった。そのため何も言えず、頭の上に疑問符を浮かべていると――。
「きっとお兄ちゃんは、そうやって女の子を泣かせてきたんだね?」
「…………はい!?」
いきなり非難のような言葉を投げかけられる。
一瞬、理解ができずに硬直するが、いまのは間違いなく批判だった。俺は何か過ちを犯したのだろうか。あるいは『先日の一件』について、何か言いたいことがあるのだろうか。それとも、まったく別の何かがあるのだろうか。
俺の頭の中では、そんなまとまりのない思考がぐるぐると回っていた。
すると絵麻は靴を脱いで中に入ると、俺のもとへ歩み寄って――。
「ダメダメなお兄ちゃん? ぼーっとしてたら、駄目なんだからね」
「…………お、おおう?」
胸をトンと小突かれ、悪戯っぽい笑みを浮かべながらそう言う。
語弊を恐れずに言うなら、その雰囲気に少しだけドキリ、とさせられた。いまのはなんだ、軽い罵倒のようなものでもあり、駄目な子供を叱るようでもあり。
とにもかくにも、俺はその場で棒立ちになるしかできなかった。
「なにしてるの、お兄ちゃん。早く戻って勉強しよう?」
「は、はい!!」
そんなこちらに、絵麻はころころと笑いながら声をかけてきた。
俺はその当たり前の言葉にさえ、思わず驚いてしまう。今朝方までは彼女の方が、どこかビクビクしてたのに、いったいどのような心変わりだろう。
先日のアレといい、義妹の思考がここまで分からないのは初めての気がした。
いや、それも思い上がりなのかもしれないけど……。
「お兄ちゃーん?」
「あ、うん! いま行くから!」
リビングから、俺を呼ぶ声が聞こえてくる。
仕方ない。いまはとにかく、勉強に集中することにしよう。
そう考えて俺は、頭を掻きながらリビングへ戻ることにしたのだった。
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