4.冬も終わりに近づき、ベランダにて。
「まったく、何なんだよ親父の奴。妙に高いテンションでさ…………ん?」
親父との話を終えた俺は、階段から二階へ上がっていた。
すると我が家の構造上、ベランダが視界に入ってくる。冬のまだまだ寒い空の下、出入りする者はしばらくいなかった。だけど今夜だけは例外だったようで……。
「絵麻、どうしたんだ?」
「あ、お兄ちゃん」
義妹がそこに出て、何かしらの作業をしているのが見えた。
ドアを開けながら俺が声をかけると、彼女はパッと明るい表情になって笑う。こうやっていると、改めてずいぶんと打ち解けたものと思った。
互いの存在に緊張することも少なくなったし、良い意味で当たり前になっている。最初こそ肩肘張っていた気はするが、もう慣れっこというやつだった。
「見て! 雪が残ってたから、雪だるま作ってたの」
「お、本当だ。目と口も作ったんだな」
「うん、どうせならね!」
風の強かった日にでも、小枝が入り込んでいたのだろう。
それを口に、小さな石の欠片を目にしていた。絵麻はずいぶんと器用なもので、手のひらサイズのそれも非常に愛らしく仕立てている。
そんな雪だるまを見つめて微笑む彼女の姿に、俺は――。
「せっかくだし、俺も作ってみようかな」
「あ、お兄ちゃんも?」
同じように、ベランダに残っていた雪を握り固め始めた。
義妹のそれを参考に、大小二つの雪玉を作る。そして小枝を口に、小石を目にしてみたのだが、
「あはは、なんだこれ。すげー不細工!」
「えー? でも、凄く面白いよ」
俺の雪だるまは、どうにもバランスが悪かった。
そのことに我ながら笑ってしまったし、絵麻もフォローを入れながらも微笑んでいる。そんな穏やかな空気を感じながら、ふと先ほど親父に言ったことを思い出した。
自分は絵麻の隣にいて、相応しい人間になりたい。
それをいま、彼女にも伝えよう。
「なぁ、絵麻? ちょっと、話があるんだけど良いか?」
「どうしたの……?」
ひとまず雪だるまを向かい合わせに置いて。
俺は先ほど親父に宣言したこと内容を掻い摘んで、義妹に話した。
そして、
「できるなら、ずっと仲良く一緒にいたいよな」
「…………うん」
ただ二人並んで夜空を見上げる。
すると絵麻は、ふと雪だるまを見つめて言ったのだ。
「この雪だるまみたいに、ずっと互いを見ていられたら良いね」――と。
それは、とても良いことだと思った。
未来にどんなことが待ち受けているのか、それは分からない。だけど俺と絵麻で、それぞれの得手不得手を補い合うようにして、助け合って生きていけたら。
きっとそれは、とても素敵なことだった。
「じゃあ、この雪だるまは俺と絵麻、ってことか?」
「えへへ! そうだといいな……」
そして、そんなことを言った直後だ。
「あ、やべ……!」
俺の作った不出来な雪だるまが、前のめりにバランスを崩したのは。
そうなると自然、絵麻の雪だるまに向かってもたれ掛かるようになるのだが――。
「………………」
「………………」
絵麻はそれを見て、頬を赤らめた。
何故なら俺の作った雪だるまと、絵麻の作った雪だるまの口が――。
「こ、これは……うん」
「…………あぅ」
重なり合い、キスをしているようになっていた。
直前にそれを互いに見立てて話したので、妙に意識してしまう。
これは良くない。
非常に良くないので……。
「えっと、そろそろ冷えてきたな! 部屋に戻ろ――」
俺はとっさに、そう言って空気を変えようとした。
その瞬間だ。
「………………え?」
一瞬だけ頬に、なにか柔らかいものが触れたのは。
唖然としていると絵麻がスッと離れて、こう言うのだった。
「ホントだね。冷えるから、中に入ろ?」――と。
そして、彼女は一足先に家の中へ。
俺はその後ろ姿を見送って、しばらく動けないでいた。
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