夏のホラー2020、初回掲載7/24④
●作品512
レミング
作者:家紋 武範
短編
4,327文字
内容
同窓会に行く。酔って邪な心を募らせていたが、怪奇現象に会う。
感想
スプラッタ注意。大学二年生という年齢がリアリティのある物語でした。加害者が被害者面するのが現実ですが、この物語の加害者たちは加害意識があっただけマシかもしれません。本当に知らなかった人は、本当に無関心だったということでもあります。加害者ではないけれど、ちょっと複雑な立ち位置ですよね。
余談
現実のレミングは自殺しないです。あれはネズミの国の嘘映画。
●作品513
白い男 黒い男
作者:レエ
短編
1,166文字
内容
駅で2人の男を見た。
感想
ゾッとする話。グロ注意。感想を受け付けないスタイルの作者さんです。
●作品514
メルディアリー駅
作者:秋の桜子
完結済(全12部分)
内容
オカルト儀式を試みる男
感想
これこれ!こういうの。ビクトリアンホラー愛好家の為の王道ホラー。昭和初期の怪奇翻訳小説文体愛好家にもおすすめ。人気作品なので、既読の方も多いと思います。
架空都市を舞台に展開する盛りだくさんな怪奇譚。
余談(早口系長文)
初めてこういうのに触れて感激した方は、是非、メアリー・シェリー『フランケンシュタイン』やブラム・ストーカー『吸血鬼ドラキュラ』、冒険小説家スティーヴンソンの『ジキル博士とハイド氏』、SFの巨匠H.G. ウエルズの『透明人間』などを、昭和初期までの邦訳版でご一読ください!
フランケンシュタインやドラキュラはね、色々杜撰なので、現代読者はイライラするかもですよ。そこが愛好家の愛する箇所でもありますが。
ジキルとハイド以下は、SFの古典でもあります。ツッコミどころはあるものの、怪奇小説ふたつよりは、あの設定ドウシタ、こいつ誰なん?が少ないです。映画で見るなら透明人間は1933年版を是非。
ドラキュラは、ビクトリアン人がゴチックの古城で体験するホラー。
ビクトリアン人が書いたゴチックロマンとビクトリアンホラーが混同されたのは、ビクトリアンホラーの舞台の多くがゴチックの古城だからなのでしょうね。
そして、忘れちゃいけないポー。昭和初期までの訳で。レビューなど見ると、一時期流行った古典名訳版は文体古くて読みにくいとあり。そりゃそうよ。そういうの求めてる人向けなので、内容が解れば良いとか現代語訳がいいとかの人は、最新版が時代感覚にあいますので、そちらをお勧めします。
余談2
モートリアムは実在の都市名にもあります。モントルーの歴史的表記ですね。
この単語は、チョーサー『カンタベリ物語』総序の380行目に確認できます。ただし、これは料理の名前。総序にある人物紹介の料理人の項目です。ケンブリッジ大学による詳細な校註つき原文では、単語索引にmortreuM (mortreuz)とあります。
中世イングランド料理研究家が復元レシピを紹介しておりました。肉とスパイスを煮込んだもの。スープというには汁がない。その解説では、語源はモルタル。見た目から。
地名のモントルーは修道院を表すラテン語を起源としているとのこと。
2020年、ローザンヌ国際バレエコンクールは会場改修中の為に、スイスのレマン湖に面した湖畔都市モントルーの、オーディトリアム・ストラヴィンスキーという劇場で行われたそうです。この劇場は、音楽ファンにとっては世界の武道館ですね。ブルースブラザーズのライブインモントルーの会場ですので、コメディ映画ファンにも人気です。
モートリアム表記、現代ではほとんど見られません。スイス観光局英語版サイトでも、モントルーです。フィレンツェとフローレンスが一緒というショック以上に、日本人には馴染みのない呼び名ですよね。古名、歴史的名称というやつ。
今回の調べ事の一番の成果は、ケンブリッジ大学の詳細な校註つきカンタベリ物語総序の全文が、使用目的限定で公開されているのを発見したこと。
現在では、古語の機械翻訳ジェネレーターもあるんですけど、チョーサー突っ込むと、高確率でそのまんま出て来て何の変換もされない部分があります。もはやギャグ。面白いからやってみては?くだらないことで笑える方におすすめ。
今回はここまで
ちょっと切りがない余計な調べ事。紹介したい関連映画の題名が分からず、死蔵dvdを色々あさる。観たいやつだけ見つからない。ネットでも全くヒットせず。あるある。
お読みくださりありがとうございます
続きます




