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50.スーパー温泉

温泉を堪能し、みんなでお休み処にやってきている。


脱衣所を出て左。冷蔵庫カウンターを右手に進み、突き当たって左に曲がると、正面と右側に扉がある。

今はその右側の扉の先、お休み処にやってきている。


お休み処はスリッパを脱いであがるタイプで、その先は畳が敷かれており、無垢材のウォールナットだろうか、かなり大きな一枚板のローテーブルが中央に置かれている。


「座布団は商人にお願いしようかと思ってる。」


とジェイクが言うので、めちゃくちゃ楽しみだ。

今は座布団がないので、畳の上に直接座って、冷えた炭酸水を全員で頂いている。


シュワシュワ、冷えてて美味しい〜!

畳があることにも感動〜!

座布団はぺたんこでお願いしまーす!

いや、ふわふわしてても良いかなぁ。


到着した時に設置した冷蔵庫から出して持ってきたものだ。ちょっと距離があるのでこのお休み処にも冷蔵庫を置いた方が良いとみんなの意見が一致した。


このお休み処の一番奥には扉が四つ並んでいる。

そこは個室になっていて、ベットを置く予定だそうだ。

いつも使っているようなマットレスのベッドにするか、畳のベッドにするか、それぞれ悩み、やはり畳で決定していた。


このお休み処は和風で統一するようだ。

和風があるなんて、実に素晴らしい!


「で、みんながまだ見ぬ扉の先の部屋が二つ残っているけど?」


ハンナは入り口に近い扉の先に、カゴを置きに行ったのでそちらがどうなっているかは一応は知っているが、それが何なのかは解らなかったそうで、とても気になっているようだ。


「それは明日にしないか?家事が終わってないだろう?」


「あぁ、そうね。さっき洗濯物は取り込んだけど、夕食もまだだったわね。」


「では、後は明日以降ってことにして、家に戻るか。」


「そうね。正直あの扉の先がとっても気になるけど。」


キースとデイジーも賛成したので、ジェイクとハンナは夕食作りがあるからと先に帰って行った。


ルークはお手洗いへ。アーサーは付き添いで部屋を出た。


「ねぇ、父さん、母さん。こんなに立派な建物作っちゃって、管理できるの?」


ちょっと心配したアイリスがキースとデイジーに尋ねると


「あぁ、午前中に陛下が来ただろう?温泉をいたく気に入ってな。管理する者を送ってくれると言っていたから、丸投げ予定だよ。」


「え?」


「じゃぁ、住み込みになるのかしら?」


「いや、専用の家をこの部屋の裏手に建てようかとジェイクと話してるところだよ。」


「あら、一緒には暮らさないのね。でもどちらにせよここにくるなら帰還者よね?」


「そうだな。多分王宮勤めでそろそろ隠居する人から選ばれるか、立候補者になるかだな。」


「え?ね、ねぇ。二人とも。朝はこのスーパー温泉じゃなかったよね?」


「なぁに?スーパー温泉って。」


「温泉がスーパーだからよ。スーパーになっちゃったじゃない!?」


「その呼び名も良いな。ジェイクと良い案がなかなか出なくてなぁ。」


「う、うん。名前はそれでもなんでも良いんだけど!ここまで大きな施設見たら驚いちゃうでしょ?それに一人で管理するのは難しいんじゃない??」


「あー、そうだな。夫婦で来てくれると良いな。」


「そうじゃなくてぇー!いや、そうなのかな??」


今日やってきた、ルークが言うには謎の男の正体はこの国の王様だ。

王様は今日入った温泉が、こんな施設に生まれ変わってることは知らされず、こちらに来るはずの管理人さんも勿論知らされないままやってくるという。


「えっと…じゃぁ、管理する人が来てから家を建てた方が良いんじゃないかな?」


「そうだな。ジェイクに話しておくよ。」


アイリスは違和感を両親と話している間に手放してしまっていた。


管理者が送られてくると言う事は、王宮が管理者に給料を払うということ。つまりそれは、王家の方々がちょくちょく遊びにくると言う事だ。


この、辺鄙な場所に。

場所は辺鄙だが、辺鄙だからこそちょっとしたリゾート地に足を突っ込んだのだ。

それをルークが筆頭に計画している。

カエル様の湖も、何やら計画しているようだ。


アイリスは早急にパカパカを世に広げなくてはいけない気持ちが湧いてきて、鼓動が早まっているのを感じていた。



「「ただいまー!」」


ルークとアーサーがお手洗いから戻ってきたので、使い終わったグラスとピッチャーをカゴに入れてお休み処を出た。


右側の扉の先が気になるが、明日まで我慢しよう。もう五歳なのだ。我慢できる!


扉を出て左に少し歩くと冷蔵庫を設置したカウンターが見えてくる。


「ねぇ、なんでここに冷蔵庫を置いたの?」


みんな気になっていたことなので、キースの返事をじっと待つ。


「このカウンターの前に椅子を置く予定なんだよ。ここで、冷蔵庫の中の飲み物とかデザートとか湯上がりに食べたら最高だろう?」


「「「いいねぇ!」」」


「ハンナちゃんの作ったデザートなら、こんな場所じゃなくて落ち着いて食べたい気もするけど…。」


「「「それもいいねぇ。」」」


ルークは思う。

このカウンターなら、バーカウンターみたいに夜限定でお酒を飲むのも良いかもなぁ。カウンターの後ろに棚を作って、お酒の瓶を並べたら格好よさそう。


言わないけどね。


この世界にお酒があるかも知らないし。

ルークの周りの大人たちは飲んでいない。

寝ている時に飲んでいるのかも知れないが、見た事はない。自分はまだまだ飲めないし。


ペタペタと床を歩いていて、ふと気になり声に出ていた。


「この温泉施設の廊下、羊さんの羊毛でカーペット作ってもらって敷いたら素敵になりそう。スリッパもあったら良いよね。裸足だとちょっと違和感あるし。」


「「「カーペット!スリッパ!」」」


「貴族の家みたい!カーペット欲しい!」


「カーペットはやっぱり白かしら?ポイントで赤も素敵ね。」


「赤紫もいいんじゃないかしら?」


「このスーパー温泉の色味なら、何色でも素敵になるわ!」


「時期によって変えるのもいいわねぇ。」


「それいいわね!その時期に一番美味しいフルーツの皮で草木染めしたものとかにしたら、何度来ても楽しめるんじゃないかしら?」


「え?スーパー温泉?」


聞き慣れない言葉。それってもしやこの施設のこと?命名は誰?


「さっきアイリスが言い始めたんだよ。なかなか名前を決められなかったから、候補としてジェイクに伝えようと思ってるよ。」


キースは良い名前だろう?みたいな顔してるけど、スーパー温泉!?もっといい名前にしておくれよっ!!

そんなルークの心の声とは裏腹に、アイリスとデイジーは興奮してカーペットの色について話している。


はぁ。まぁ、みんなが納得する名前が一番いいからね。と名前の件は放棄して、衛生面が気になるスリッパの話だよ!


「スリッパは専用を作ってもらえたら良いかも。足の裏、痒い病気の人いるでしょう?お風呂上がりで足は湿ってるだろうから使い捨て?無理なら洗えるのが良いよね。素足で履くから衛生面で。もしくは毎回買取してもらって、持ち込みにするとか。」


ルークは前世で水虫という病気があったのを知っている。この世界になるのかは解らないが、完治するまで家族にも迷惑をかけることになると、同僚が嘆いていたのが思い出された。


「いるわね。何かいいお薬が出来たら良いのだけどねぇ。」


「それなら持ち込みだな。絶対に履いてもらうことにして。購入もできるように色々な色で発売したら喜ばれるんじゃないか?」


「じいちゃん!それ良いね!好きな色が選べるのは楽しいし。」


「では、今度来る商人にお願いするのは、座布団が十、スリッパは色々な色でとりあえず三十あれば良いか?絨毯はサイズを測ってもらった方がいいから特注だな。後何かあったかな?」


キースは入り口のたたきへ行き、みんなの靴を履きやすいように並べ替える。


「三十で足りるかしら?商人は年に四回しか来ないんでしょう?」


「そこは商人とも相談だな。」


アイリスとキースは話しながら靴を履く。


「ねぇ?カウンターに置く予定の椅子の座面をクッションにするのは?外側はキースじいちゃんが今朝使ってくれた魔牛の革でワタを羊さんたちの毛でワタを作ってもらうとか。地産地消で良いと思わない?」


「魔牛の革で座面か…今までにないものになるな。一つ作ってみて良ければそうしようか。なら商人にワタもお願いしようか。」


お。意見が通りそうだ。

ルークとデイジーも靴を履いて外へ出た。

アーサーがリヤカーを引き始めたので、ルークは後ろから押してみる。


「革座面の椅子、ますますバーカウンターだな。」


「「「バーカウンター?」」」


「あっ!また口から出てた?」


「ルーク、バーカウンターとは?」


キースがルークにきて、リヤカーを押しながら質問する。


「ねぇ、この世界ってお酒はあるの?大人がお酒を飲むお店とかもあったりする?」


「あるが。それと関係するのか?」


「えっと、バー…お酒を提供する人がカウンターを挟んで、お客様と対面してお酒や食事が楽しめる、オシャレな店があってね?そこの雰囲気に似せて、夜だけ開店したら喜ばれるかなって。」


「「「ほぉ。」」」


デイジーとアイリスはルークとキースの後ろをついていきながら話を聞いている。


「それはあとで絵に描いて共有したいな。」


キースは実はお酒が好きなのかも知れないな。

絵は上手じゃないけど、頑張って描いて共有したい。


「ねぇ、ここがもし本当に観光地みたいになるなら、宿泊施設がないとじゃない?王都も待ちも日帰りできる距離じゃないんでしょう?」


「そうねぇ、ここがこの規模で出来てしまったし、有効活用できたらいいかな?と思ってるわ。」


デイジーは楽しそうに微笑む。

やっぱりみんな、人と触れ合いたいよね。

隠居しなきゃ行けなかったから、人と離れて生きているけど。


うまいこと人と付き合っていけるように出来たら良いよね。


ルークはみんなで過ごす楽しい毎日を思う。


リゾート地計画はこうして発進していくのかな。

みんなが楽しそうだから良いのか。

俺も楽しいし。

白カエルちゃんには了解を得なくちゃだなぁ。

他の精霊さんにもだな。

ここは動物も精霊さんも多く住んでそうだし。


まずは近いうちにまた湖に連れて行ってもらうかなー。湖の主である白カエル母さんの許可の方が良いのかな?ならデイジーばあちゃんも一緒が良いな。

明日はデイジーばあちゃんたちが家事当番だから、明後日に行けたらいいかな?


今日も色々あった。

今日は特に色々あった。


沢山の動物と精霊さんに会った。

王都の家ではあり得ないことだ。


ここに来てまだ三日目、毎日が楽しくて仕方がない。

これが俺の思い描いていたスローライフ。

そうかな?

やりたいことと出来ることは違うけれど、せっかく生まれてきたのだから、みんなが楽しく生きられる手助けが出来ればいいな。

と思う五歳児だった。


精神年齢はもっと高いけどね!

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