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2-5.日常を楽しく過ごしています

ルークは家に入ると、精霊たちはいつもの場所で集まって眠り始めた。

ルークはそれを見つめた後、キッチンで水キムチの唐辛子抜きを作り始めた。


水キムチの唐辛子抜き…。

微妙だ。めっちゃ微妙だ。

ただの水漬けっぽくて嫌だ。

いや、水漬けってなによ。美味しくなさそうなネーミング。


唐辛子が入っていないので既にキムチでは無いが、無いものは仕方がない。

ホエーに頑張ってもらいましょ。


今回はフォークで突き刺して食べやすいよう、ラディッシュ以外は細めのスティック状にカット。ついでにりんごもスティック状に。

ラディッシュは縦に四分割にしてもらう。


スキルで発酵してもらえれば、野菜に厚みがあっても問題ない。

薄切りにすれば発酵も早いが、今回は食べ応え優先な厚みでお願いした。


その間に生姜とにんにくを包丁で薄切りにする。


うーん。うまく薄切りに出来なかったが、まぁ、こんなもんだろう。スライサーが欲しい。


いくつかのガラスの保存容器に、ホエーを使って漬け込み用の汁を入れて、カットしてもらった野菜とりんご、生姜とにんにくをバラバラと入れて密封。


「数日冷蔵庫に入れて発酵を促して出来上がりです!」


「あら、とっても簡単なのね。『発酵』のスキルなら私も使えるから、食べる前にやってみても良いかしら?」


「え?ばあちゃん、発酵のスキルが使えるの!?なら、サイモンさんが麹を持って来てくれたら、発酵のスキル使ってもらっても良い?そしたら、すぐにお味噌が出来ちゃうから!」


「みそ、は、発酵食品なのね?」


「うん!発酵と熟成で出来るんだよ。チーズ作りと似てるんだ。」


発酵食品は体に良い影響があったが、こっちの世界ではどうなんだろう。水キムチの唐辛子抜きが出来上がったら鑑定してみようかな。


水キムチを作り終えたので、ピーマンはにんにくとごま油でナムルにしてしまおう!


大根が沢山余ったので、残った大根もナムルにしてしまおうか。

ルークにとって、今回の大根が大きすぎて扱えずにいると、雪豹の精霊がスキルでカットす?。


想像した通りの千切りでカットしてくれたのは、心を読まれたからだろう。

便利がすぎるがめちゃくちゃありがたい!


ピーマン同様、ガラス容器に仕込んで、冷蔵庫に入れて夜まで寝かせる。


仕上がりが楽しみだ。


「野菜を残らず使ってもらえて助かったわ!ありがとうルークちゃん!」


「こちらこそ、勝手に使っちゃってごめんなさい!」


デイジーは問題ないわ。と笑っているので、大丈夫そうだ。


さてと。

今日はこれから果実園へフルーツの収穫に行くので、ジェイクを待っている。


ルークのドライフルーツがお土産コーナーで人気なのだ。

精霊が手伝っていることをアピールしたからだ。ハンナが。


ついでに、マックスの作るブラウニーも人気で、上に乗せるドライフルーツがそろそろ足りないと言われた。


マックスはジェイクと一緒に果実園に行く約束が果たされるのを、首を長くして楽しみに待っていたそうだ。五年も…。

お互い忙しかったらしいが、五年は流石に待たせすぎだ。


今回声をかけたら、大喜びで時間の調整をしたそうだ。諦めずに待っててくれてありがとう。マックスさん。


「おーい!ルーク、準備ができたぞー!」


キースがリビングの扉を開けて声をかけて来た。


「あれ?キースじいちゃんも行くの?」


ルークがキースの元へ急ぐと、後ろから雪豹と白馬の精霊がふわふわと後を付いてきた。


「あぁ、ダメか?」


うっ!なんでそんなにしょげた顔をするのー?

ダメなんて言ってないのに、罪悪感が半端ない!冤罪感も半端ない!!


自分が長く寝ていた(らしい)間に何があったのか、起きたらキースじいちゃんとデイジーばあちゃんの様子が変わっていて、少し戸惑った。


二人とも、甘くなったのだ。

クールさ、どこに捨ててきちゃったの?


「ダメじゃないです。一緒にいきましょ。」


「あぁ!ルーク!ありがとう!」


キースはぎゅうとルークに抱きつき、そのまま抱き上げた。

五年も経過して、結構大きくなったのだけど、それでも可愛い孫には違いないらしい。

流石にそろそろ重くないかな?と思うのだが、半年ちょいで王都に行く事が解っているからか、こういう甘さが増している。


「デイジーも一緒に行くかい?」


「私は残念だけど遠慮するわ。宮廷に提出した例の回復薬とそのレシピあったでしょ?あれの再現性が低いってまた報告があったから、それの調整をしなきゃなのよ。」


その回復薬は、魔力切れで倒れても、死んでさえいなければ、経口摂取か粘膜接種で魔力が全回復するという、歴史を覆しそうなヤバイあれである。


「そうなんだ…。再現出来ない人もいるのか。水-創薬スキルで作れるようにしたって言ってたっけ?なら、スキルレベルかなぁ。ある一定のレベルに達していないなら作れないとか?」


「あ!そうかも!スキルレベルを確認してもらうように伝えるから、やっぱり一緒に行っても良いかしら?」


「じゃあ、外で待ってるよ。」


キースはそう言うとルークを抱いたまま外へ出た。その後ろから精霊たちも付いてくる。


既に準備を終えた三輪駆動車がみんなを待っていた。

キースはルーク専用の場所に、ルークを乗せた。

この“専用“も体が大きくなるたびに、変化して、今ではサドルの形になった。ペダルに足は届かないので、足置きが作られている。

そのルーク用のサドルの後ろに、運転手用のサドルがあり、そこにキースが腰掛けた。


今日の運転手はキースらしい。

未だに三輪駆動車は人気で、順番があるのだ。

とはいえ、そこまで執着心があるわけではないので、時々順番がわからなくなるらしい。

そんな時には恒例のくじ引き大会が開催されるのだ。


「準備オッケーだぞ!そろそろ行くか!」


ジェイクは後ろの席に座ると、キースに声をかけた。


「デイジーも一緒に行くことになったから、もう少し待ってくれ。」


「お。了解!」


少し強めの風が三人の髪を揺らす。


「あ、そういえば、家の裏の土地って何かに使う予定だったりする?」


ルークはさっき鑑定で見た結果を思い出したので、聞いてみた。


「「家の裏?」」


「うん。炭酸水が沸くとこよりも手前の地面。」


「なんの予定もないな。」

「あぁ、予定は全然ない。」


キースとジェイクは顔を見合わせてから答えてくれる。


「じゃあ、後で貸してくれる?その時、キースじいちゃんに力を貸して欲しいんだ。」


岩石特化の大地オールマイティのキースなら、宝石が掘り当てられるだろう。

いつだったか考えた、プロテクションを魔石に付与できたら良いなってやつ。

掘り当てた宝石や魔石を加工して、ペンダントにして作りたいなと思っている。


あの時はデイジーばあちゃんのスキルで。と思ったんだけどね。白カエルちゃんたちと話した感じ、プロテクションとかは無さそうだったから諦めたんだよね。


ハクと契約したので、ハクの使える全ての風魔法を使ってもらえるようになった。

ハクには、馬車に対して衝撃吸収と振動無効のスキルを使ってくれたでし

あの風の魔法って、衝撃とか物理的な衝撃を緩和したり、吸収したり?が、出来るってことでしょ?

それをさ、魔石や宝石に付与できるんじゃない?って思ったんだよね。


で、使い捨てでも良いから、衝撃から身を守るものが作れたら、子供も大人も身を守れるよね。って。


亀裂に落ちて死んでしまうって言うのも、落ちた衝撃を吸収してくれたら助かる可能性は上がる。

他人の魔力暴走で傷つくことが無くなれば支援所の子供も、指導している人も助かるだろう。


まぁ、そんなお試しがしたいわけだ。


「なんだなんだ?面白そうな事か?良いぞ良いぞ。帰ってきたらやるか?」


キースはルークが何をしたいのか解っていないのに、楽しそうだ。


「えっと、明日かな。午後は多分サイモンさんが、お米と麹を持ってきてくれるから、そっちの実験というか、お試しをしたいんだ。」


「お。サイモンが来るのか。なら、ちょっと仕事の調整の話も出来るな。」


ジェイクが少し考えながら言う。

何か調整が必要なことが起きたのだろうか?


「お待たせー!飲み物だけ準備してきたわ!」


デイジーがみんなが乗っている三輪駆動車に走りよって、ジェイクの向かいに座った。

それをキースが確認すると、


「じゃあ、シェアハウス経由で果実園へ向かうぞー!」


「おー!よろしくお願いしまーす!」


キースの掛け声に、ルークが答えて出発進行だ。

キースはペダルを踏むと、三輪駆動車はすぃーっと動き出す。


「おぉ。何度運転しても、この最初の踏み込みの動きがたまらんな。」


キースは喜びを隠すことなく、笑いながら進んでいく。

我が家の三輪駆動車には軽量化のスキルが最大にかけてあるので、動きがものすごくスムーズなのだ。


キースがいない間に作られていたこの三輪駆動車。家に戻ってきた時には既にあったが、ルークが居ない時に楽しめるはずもなく、乗ったり運転したりしても、感動もクソも何もなかった。


ルークが戻ってきてからは、何をしても何を見ても楽しくて仕方がないと言った感じのキース。

溺愛しているルークが消えたひと月半、キースにとって光を失ったひと月半だったのだろう。


戻ってきてからは、楽しめる事は全部楽しもうという気合を感じる。


「今日は風があるわねぇ。台風や竜巻が発生しないと良いのだけど。」


デイジーが少し心配気味に言うと、ジェイクも心配になったようだ。


「確かにそろそろ季節ではあるな。今日は出来る限り収穫してしまおう。フルーツが風で落ちたら傷んで食べられなくなるからな。」


「だな。じゃあ、手分けして収穫しよう。」


キースも頷くと、シェアハウスへ急ぐ。

歩いて十分程度の距離が、キースの足捌きにかかれば数分掛からない。あっという間に到着すると、シェアハウスの前にはマックスとマリーネが立って待っていた。


「「こんにちは!よろしくお願いします!」」


「「「「こんにちは。」」」」


「あ、あの!私も連れて行っていただくことはできませんか?」


マリーネは果実園を見た事がなく、マックスに聞いてからいつか行ってみたいと思っていたそうだ。


ルークはニコニコしながらマリーネとマックスを見ていた。



---

マリーネ 18歳 お食事処料理補助

友達精霊:植物の精霊リス(食べ物特化)

スキル:補助・加工

魔力量B

魔力操作D

---


---

マックス 18歳 お食事処料理補助

友達精霊:植物の精霊リス(食べ物特化)

スキル:補助・加工

魔力量B

魔力操作D

---


「んん!?」


マリーネとマックスの頭の上辺りに、鑑定結果が現れた。


あまり会ったことがない人は、見ていただけで鑑定しちゃうのだ。俺の目は。


マックスさん、加工が増えてる。

一体いつ増えたんだろう。


ルークが自分と戦っている間に話は済んだらしく、リヤカーに料理補助ペアが乗り込んだ。


「じゃあいくぞー!」


キースはペダルを踏んで果実園に向かう。

すぃーと動き出した三輪駆動車に、マリーネもすごいすごいと大興奮だ。


うーん。属性は見えるのは知ってたけど、友達精霊までわかるのか…。

俺の鑑定で解らない事がないんじゃないの?


でも自分しか見えないし、誰かの足を引っ張ることもなければ、迷惑をかけることもないんだし、気にするだけ無駄そうー。


ということで、考えは放棄する。


ボビーの件もある。

精霊にとって不必要だと思われたらこの能力だって消えるのだろう。使い方を間違った時だっておそらくそうだ。


なら、自己満足するだけじゃなく、みんなのために使っていこう!


ルークはそう決めると、リス精霊と友達代表、キースを鑑定することにする。

丁度ハンドルを握るキースの拳が真横にあるので、それをじっと見つめる。


---

キース・フェニックス 58歳 特別宮廷研究員

大地の精霊と契約中

友達精霊:植物の精霊リス×3匹(食べ物特化)

     大地の精霊カピバラ(岩石特化)

スキル:知りたがり

    加工・生成・パッキング

    料理長

    大地オールマイティ↑

魔力量S (MAX)

魔力操作S(MAX)

---


うわぁ…。

カピバラ精霊と契約してとんでもない事になっちゃってたんだねぇ。

特化関係も解るのかぁ。


じいちゃんはリス三匹。

植物系のスキルは加工、生成、パッキングになるのかな?大地系スキルはオールマイティで統合されてるみたいだから多分そうだろう。


知りたがりと料理長は前世から生えたスキル?

スキルは生えた順に表示されるんだろうか。


とりあえず、マックスくんとマリーネさんとの違いはリスの数と魔力量と魔力操作か。


うーん。

補助ってサポート系って事だよね?

カワウソ精霊と同じ感じ?


いや、カワウソ精霊は特別とかってばあちゃんから聞いた気がするなぁ。


ちょっと記憶が曖昧だけど。

五歳の脳みそって、こんなもん?

結構忘れちゃうんだよなぁ。

それとも執着がないから?


考え事をしている間に果実園に到着してしまった。

シェアハウスから果実園までの道は初めてだから、風景を楽しむはずだったのに…。

残念ー!

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