2-3.王様と精霊王
この星には、過去に神獣フェニックスの加護を持つ者が一人だけ存在した。
その者は人間の始祖にして、神獣フェニックスと同じ力を持っていたという。
その者は、誰よりも先によその星に『徳』を積みに転生して行ったらしい。うん。
それが、俺。
と言われて戸惑っています…。
どう言うこと?
いや、そう言う人がいたと、ついさっき知ったわけですよ。
で、俺がその人と言われても、記憶ないし。
精霊王、精霊たちが待ち望んだ魂だと言われても、何をしたら良いのかも全く分からん訳ですよ。
しかも、なかなか帰ってこなかったって?
「で、それはどれくらい前?」
「億」
「え?億?一億年?それとも億年単位!?」
いち、じゅう、ひゃく、せん、まん、じゅうまん、ひゃくまん、せんまん、いちおく、のおく?
「帰ってこなかったのよ。ルーク。」
「「「「億…」」」」
多すぎるゼロの数に一同驚愕。
と言った感じでしょーか。
「最後に行った星が鬼畜の星だったのよ!ほぼそこから出られずに、結局億!よ!!あの星は未熟な魂をどんどん取り入れてる無法地帯!おかしな思考・思想の星からもバンバン転生者を招き入れて、ほとんど乗っ取られてる状態だから収集がつかずに戦争ばっかりのまさに地獄!!」
精霊ちゃんは止まらない。
でもちょっと待って!
俺の前世生まれた星に人類生まれてから何十万年とかじゃなかった?
「何言ってるのよ!あの星は何度も文明が滅びてるわ!しかも、あの星の精霊が巨大な地盤沈下を起こしたり、大雨で大地を沈ませたり、水が豊富だからって、やりたい放題。あの星の人類が確認できないレベルでね!一番最初の文明の遺跡はもうあの星の中のマントルで、どろっどろに溶けてるわ!」
へ、へぇ…そうなんだ。
え?じゃあ、幻の大陸とか、本当にあったんじゃ?
地盤沈下って、いわゆるプレートの移動って事でしょ?
それを何度も繰り返していたら人類がどんなに探したって、見つからないはず。
うん。ありえない話じゃないな。
今更だけどちょっとワクワクする。
でも、地盤沈下や大地震が自然災害だけじゃないってなると、思うところがあるな…。
精霊の自由意思、こわー。。
「そーじゃないでしょー!
良い?あっちの精霊王にうちの子たちを返せって言っても無視!!
帰りたいっていう魂を『契約だから』って何故か手放さず、苦しみを与えるだけ与える!
お陰で何度も何度も何度も何度もおかしな思考野郎どもに殺されて!うぅ。可哀想に。。
なのにあの星の精霊王たちはまーったく手助けもしない!
どんどん穢れてるよその星の魂を取り入れている上、密入星もされ放題!
その魂の教育を“うちの子たち数人“に丸投げって何よ!!
それどころか、『魂が輝いているから大丈夫だ。
え?どうやるかって?魂に聞け。自分の星のことを思い出せば出来るだろう?俺らが知るわけねぇ。』ですって!」
きいぃ!と奇声を上げる。
途中の会話風なのは、その精霊王のモノマネだろうか…。
ちょっと面白い。
「だんだんと自分たちの星の子が生まれなくなって焦って、自分たちの星が天国にならないのは“うちの子たち“がサボってるせいだってぇぇ!?
お前がやれぃ!!お、ま、え、がっ!!!
もっと他の子達を導いてくれぇ!?
『なんで出来ないんだ!出来るだろう?
出来ないなら植物に転生させるぞ!
自分の星に帰れなくなるぞ?』
って脅し始める、もう馬鹿げた星と精霊王たちだったのよっ!!きぃぃ!!
お・ま・え・の仕事だろっ!!!!
お前がイチからやり直せぃ!!!」
精霊ちゃんがどんどんヒートアップして、首に巻いていたスカーフを外して丸め、テーブルに向けてペソッと投げつけた。
怒りのボルテージが上がりすぎて、頭の血管切れたりしない?
少し落ち着いて欲しい…。
「あまりにもおかしいと思って調べてみたら、どっかの星から追放された無法者に密入星されてて、あの星の精霊王たち自身が狂わされて乗っ取られてるっていうテイタラク!!」
えっとー。それって俺の前世の星ですよねぇ?
そんなに鬼畜な星だったのか?
聞いてるこの部屋のみんな、ドン引きなんですけど。
精霊ちゃんの態度よりも、その言葉と内容に。。
「そんな狂わされた精霊王だから、あの星に入ってくる他星の魂もそんなのぶぁっっかり!他の心の清い星から来た子たちも可哀想に、どんどんあの精霊王に影響を受けちゃって!うぅ。
精霊王自身があの星に住む子たちに影響を及ぼしていることに気が付かないから反省もなしっ!精霊王の力と影響力を考えろってんだ!!」
おぅ。そうか。。。
「億年もうちの子たちが頑張って、やっとやっとやーーっと落ち着いてきたところで、所謂星の崩壊が近付いてきたことに気がついてあっちの精霊王たちが慌てふためいている間に、うちの星の子達があっちで初めて寿命で死んだの。その瞬間、掠め取るように返してもらったの!上手くいったから、その後もその方法で取り返してるのよ!でもまだ三人残ってるの!早くあの子たちも返してもらわなきゃ!!契約なんて勝手に付け加えたくせに!そんなの無効よ無効!!」
残念ながら、精霊ちゃんの言ってることの全ては解らない。
でも、自分と同じような人があっちに住んでいたのか。
「ええーっと。何人くらいあの星に転生してたの?」
「八人よ!八人で八十億人導けって馬鹿げてるでしょ!?『天国からきた神様だから出来ない事はないでしょう?』ですって!?自分たちができなかった事をうちの子たちがやれたからって神様に祭り上げて、あの星の精霊は傲慢すぎるのよっ!!怠惰すぎるのよっ!!きぃぃ!」
怒ってらっしゃる。
まぁ、そこだけ聞くと、とんでもないブラックだな。
でもそうか。俺は一つ前の人生としかアクセスできてないんだな。
全部思い出したらどうなるんだろう?
「やめーい!!ルーク、それは思い出してはダメ。必要ないわ。」
精霊ちゃんが、全力で阻止しようとする。
「そんなにひどい感じ?」
「酷いわ。知らない?未だにデイジーが苦しんでるのよ。本当にあり得ないほどの苦しみを味あわされてる。今ルークが思い出せる最新の記憶だって、今の人生と比べてどう?ハッピーではないでしょう?ジェイクを轢き殺したのもジェイクやルーク、うちの星の子に異様に執着嫉妬してきたよその星からの密入星者なのよ!」
「…うん。確かにハッピーではないことが多かったよ。でも、生きていたら、辛いことも悲しい事もあるものでしょう?」
人生楽ありゃ苦もあるさってね。
「違うのよルーク。この星の魂というのはね?そういう経験をしなくても良い、何段階も上にあるの。レベルが違う。すでにその修行は履修済みなの。魂の年齢自体も全然違うのよ。だからこそ、あの星で辛い目にあんなに遭っても魂の輝きが失われなかったの。あの星生まれの子達が生まれなくなってるって言ったでしょう?あの星は今一番若い星なの。その星の子たちは、うちの子たちからしたら生まれたての赤ちゃんよ。もしくはミジンコよ。そんな赤ちゃんにあなたが経験した事を経験させられると思う?魂が砕け散って存在自体がなくなるわ。そんな場所に自分の星の大切な子を生まれさせる事ができないでしょう?」
ミジンコ…。
まだ進化が途中と言いたいのだろうが、ミジンコって進化したら人類になるの?
「そんなに?」
「そんなによ。植物に熱湯をかけたら枯れるわよね?それと同じよ。そんな環境の中に、自分の星の子じゃないからって平気で放り出す。地獄と言わずになんていう?よ。」
「「「そりゃ酷い」」」
ルークの声に、アーサーとアイリスの声も重なる。
「もう!アーサーもアイリス!あなたたちもルークと同じよ!掠め取って返してもらったんだから!」
「「「えええ!!」」」
「ついでにジェイクもデイジーもよ!」
「え!精霊ちゃん!ちょっと待って!」
この星からあの星へ転生したのが八人。
今名前が上がったのが五人…?
それが今俺の家族として固まってる?
いや、聞き間違いかもよ?
そんなわけないよー。ね?
「なぁに?」
「二つ聞いても?」
「もう、なんでも聞いてよ。」
「えっと、今出た俺の家族も。億?」
「近いわね。まずルークが捕まって、それから徐々にだから、一番長く居たのはルークね。」
「「「「「「捕まって…。」」」」」」
衝撃的な言葉だからか、両親もまた声に出ちゃった。
いや、王様たちにとっても衝撃的だったようだ。王妃様は白目を剥いて倒れそうなんだけど!?
ちょっと!誰かベッドに寝かせてあげた方がいいんじゃない!?
と思っていたら、文官さんが気がついて、サクッとソファに寝かせてくれた。まずは一安心。
それをみんなの視線で確認し終わると、精霊ちゃんは話を続けた。
「あんなの、調子良いこと言って、罠に嵌めたようなもんよ!」
「俺が原因?」
「きっかけね。ルークが優秀過ぎたのよ。何しろこの星一番の魂の持ち主だもの!えっへん!」
うーむ。そんなきっかけになっちゃったなら、優秀だって言われても嬉しくない…。
「…そうか。もう一つ、八人って言ってなかった?」
「言ったわね。」
「残り三人って言ったよね?」
「ええ。」
「精霊ちゃんが出した名前、俺含めて俺の家族が五人なんだけど…?」
「そうよ!あの星に囚われてたのは、ジェイク、デイジー、アーサー、アイリスにルークの五人よ!」
やっぱりか、オーマイガッ!!
俺の知りうる限りの身近な家族があの星からの帰還者だとは。しかも掠め取って帰還とか。。
「ち、ちなみに、最後の三人は?」
「二人はそろそろあっちで寿命を終えるわね。」
「掠め取る感じで?」
「みんなを掠め取れるタイミングをその子が作ってくれたの。だからこそ、あの子を取り戻すためには絶対にタイミングを間違えないわ!このタイミングで取り戻せなかったら、次の人生が始まっちゃう!!」
次の人生が始まったら八十年はまたあちらに缶詰になるのか。それは可哀想だ。
「そうなのよ!あの星は本当に鬼畜で、死んだら次に生まれるまで、普通は何十年とか何百年か魂のまま浄化するために寝かせるのに、うちの子たちは一年未満で生まれさせることが多いのよ!
他の優秀な星の子もうちの子たちより長いとはいえ、生まれるスパンはやっぱり数年とかで短い子もいて、前世の記憶持ちがバンバン生まれ出して、前世の家族に会いに行きたい!とか、前世の嫁に会いたい!とか。
それならギリ許せるけど、前世殺された自分の肉体はここに埋まってるとか、消さなきゃいけない記憶まで持たせたりして!本当趣味まで悪いったら!」
あぁ、またヒートアップさせちゃった。
本来の在り方を知らないから、精霊ちゃんの怒り全てを理解してあげられないのが申し訳ないよね。
「前世の星で、俺は俺の家族と会っていたのかなぁ。」
ジェイクとの繋がりはルークが覚えていたけれど、デイジーやアーサー、アイリスとはどうなのだろう。
「あーほんとむかつく。思い出すと未だに腹が立つわ!
あぁ、ルークはどの子ともあっちで会ってるはずよ?一番繋がりが深いのは、あっちに取り残されちゃってる三人だったはずだけど。」
「え?一番?一番はジェイクじいちゃんじゃなくて?」
「ジェイクとはあっちでの最後の記憶だと思ってるから、そう思っちゃうんでしょうね。」
そうなのか。
思い出せず、これまた申し訳ない。
「早く帰ってこれると良いね。」
「そうね。ジリジリした気持ちで、みんな待ってるところよ。死ぬのを待つなんて、趣味が悪いって言われそうだけど。」
精霊ちゃんは申し訳なさそうな顔をする。
「そんな事ないよ。ありがとうございます。助け出してくれて。」
「「ありがとうございました。」」
ルークがお礼を告げると、アーサーとアイリスも続けて感謝の言葉を口にした。
「良いのよ。気がつくのが遅れすぎて、申し訳無かったわ。ごめんなさいね。ルールがあって、通常他星に干渉は出来ないの。だから、探る事も出来なくてね。」
「そうなんだ。色々あるんだね。」
「ええ。」
しっとりとした良い話風に何となく落ち着いたようだけど…。
「で?なんで俺たち、問答無用でここに飛ばされて来たわけ?」
うん。そう。これ。
突然何の声掛けもなく、ここに飛ばされた本題を教えて。
「え?ルーク、この星の伝説の本、知りたかったんでしょう?」
「え?五年くらい前にバーネットさんに本をお願いしたけど。それのこと?」
「そうよ?」
「それだけ?」
「そうね。」
「「「「「「……。」」」」」」
部屋にいる六人の顔から表情が抜ける。
力も抜けた。
「精霊王よ、他にやり方はなかったのか?」
「へ?何か悪かった?私、間違った?」
精霊王は首を傾ける。
その仕草はめっちゃ可愛いぞ!
あざといぞ、精霊ちゃん!
でも、でもっ!
「そうか。まぁ、良いだろう。精霊王の仰せのままに。」
「え!?何で納得しちゃうんですか!王様!俺が絵本を頼んだのはもう五年も前なんですけど!?」
精霊ちゃんはニヤリと笑う。
「何となく。よ!だって実験なんだもの。」
ウィンクして可愛くしてもダメです!
子供には、知りたいと思った時にその情報を与えた方が身につくんですよ!
と、ルークは内心思う。
精霊王には届いただろう。あははと笑っている。
「くしゅん!」
長々と話していたから、折角温泉で温まった身体が冷えてしまった。
この王国は温かいから暑いの間の気候だが、この室内は床が凛石でできているから、風の通りが良いようだ。
「ありゃ。風邪でも引いたら大変ね。ルークたちは家に帰してあげるわ。」
精霊ちゃんはそう言うと、少しルークに触れてから、ルークと両親の三人を転移させようとする。
「精霊王!ちょっと待ってくれ!私と王妃も彼方へ戻してくれ!あっちに服を置きっぱなしだし、お土産も見たいのだ!折角の休暇をまだ楽しみたいのだ!」
王様は目の前のテーブルにバーンと両手をついて立ち上がった。
するとテーブルの上に置いてあった伝説本を入れてる保存魔法の施されたケースも揺れた。
文官は慌ててテーブルから落ちないように押さえた。内心大慌てなのか、口からヒーヒーと悲鳴らしい声が漏れている。
だよね!それ少しの衝撃でバランバランになりそうなほどボロボロだもんね!
「はぁ!?毎週毎週遊びに行ってて、折角の休暇ってどういうことなのよ!」
精霊王は、テーブルにどしんと降りて地団駄を踏んで、テーブルをギシギシと揺らしていく。
「ひぃぃぃー!!」
文官は、大慌てでケースを持ち上げて他の場所へ避難した。そのままそのボロンボロンの伝説本が保管されていた場所へ収納しに行ったようだ。
それが良いよね。バラバラになったら困るもんね。修復とか修繕のスキルとかあったら良いのにね。誰か持ってないか、気になるところだよね。
でもさ、もっと気になるのはさ…
「週に一度休暇が取れるように、前倒しで仕事してるでしょー!?」
王様の言葉遣いなんだよねぇ…。
さっきまでの威厳のある言葉遣いから砕けすぎじゃない?
ギャップ?ギャップなの?
ギャップ萌えさせるつもりなの?
しないけど。
「なら、私も誘いなさいよ!狡いじゃない!二人で毎週毎週!」
「精霊王は転移できるでしょ!?呼ばなくても来れるでしょ?好きな時に移動できるでしょ!?」
「何言ってるのよ!私たち精霊がルークのそばに行くには、ハリネズミ執事に了承取らないといけないのよ!?温泉の近くにルークがいるから一人じゃいけないのよ!貴方に呼ばれたら、そんなのすっ飛ばしていけるでしょ!?」
ははーん?
俺の住ませてもらってるじいちゃんたちの家から温泉まで徒歩十分程度離れてるのに、それでも近寄った判定ってこと?
俺の力ってどうなってるの?
「そんなん聞いてないよ!先に言ってくれてたら考えたのに!」
「か、考えるって何よ!今知ったんだから、連れて行きなさいよ!」
「えぇー?そんな言い方されたら連れて行きたくないよねぇー。素直に連れて行ってくださいって言ってもらわなきゃー。」
含み笑いをしながら王様が精霊ちゃんに意地悪をしてる…。
「きぃぃ!屈辱だわ!なんたること!!」
精霊王はさらにテーブルの上で地団駄を踏む。
「「……。」」
アーサーとアイリスは考える。
止めるべきなのか、突っ込むべきなのか?
いや、どちらも不敬になりそうだ。
それはそうだ。
相手は国王と精霊王なのだ。
不敬罪を問われない場所なら突っ込んでいた。それくらいに仲良くさせてもらってはいるが、ここは王宮内。
王族が王族として闊歩する事で王国を成り立たせる場所である。王族として威厳を見せる場所なのだ。
よって、口を閉ざし石のように空気のようになるしかないと判断した。
アーサーとアイリスは、この言い合いが終わるのをただじっと待つ事にしたようで、あっという間に室内の景色と同化した。そちらを選択した。
しかし、ルークはそうではない。
元々物怖じしないところはあったが、相手が王族だと今さっき知ったばかり。しかも歴史に疎すぎる。絵本を読んでいない上、まだ王都の学校に行く年齢でもないときた。
つまり、常識を知らない。
誰も王族について話していない。
王族の話をする時は、自分たちが王位貴族である事も伝えねばならないから、何も伝えていない。
さらに精霊王とは、子供の時から仲良しで、友達精霊の一人という認識だ。
「面白いけどやめようか、精霊ちゃん。テーブルが傷んじゃうし、それより俺、風邪ひいちゃうよ?精霊ちゃんもきたら良いじゃん。温泉気持ちいいし。」
なので、王様と精霊王の話し合い?の間に飄々と入り、ルークは精霊王を手のひらに乗せたうえ、早く連れて帰れと言えてしまうのだ。
「あ。そうね。じゃあ、そうしましょ。王妃も連れて行きましょ。」
未だ横になっている王妃を浮き上がらせる。
精霊王もルークは友達なので、特段気にしない。
気にしないと言うよりも、めちゃくちゃ喜んでいるように見える。
「なかなかルークに会いに行けなくてごめんねー?カエル母さん…っじゃなくて、生命の精霊王のラナ王国と氷の精霊王のアバランチェ…じゃなくて、ロスカ王国の後始末がなかなか大変でねぇ。」
カエル母さんが先の生命の精霊王が亡くなって、新たな精霊王になり、スライ王国からラナ王国へと名前を変えた。
それから五年、太陽はしっかり出て大地に力が戻り、安定して野菜が生るようになったらしい。それは劇的な変化だ。
変化があったのは、ラナ王国だけではなく、他国もだった。
生命の精霊王というだけあって、星全体の誕生率が軒並み上がったのだ。
人間の数だけでなく、動物や精霊もだ。
精霊は、人間が増えるに比例して増えてるようで、そのうち、きちんと一対一で友達になれるのではないかとのこと。
良かった良かった。
氷の精霊王が統治していたアバランチェ王国は、いつだったか、精霊王が代替わりした。
というニュースが駆け巡った時があった。
しかし、新しい氷の精霊王というわけではなく、何故か代理であるため、政として周辺国との友好関係を結ぶには至らないらしい。
閉鎖的なところは変わらないのかと思えばそうでもなく、その代理と他国の精霊王は仲良しらしく、精霊ちゃんも時々駆り出されては、“精霊の鍛錬所送り“をしているらしい。
さっさと友好国になっちゃえば良いのに、それは精霊王がすべき。との考えらしい。代理の精霊王としては。
その割に、アバランチェ王国からロスカ王国と名前は変えたらしい。
それこそ精霊王がすべきなんじゃないの?
精霊王代理に代替わり?してからは、太陽が出る日が増えたようで、不必要な氷はゆっくりと溶け、農耕出来る大地に変化しているらしい。
こちらは、代理だからか変化はゆっくりなようだ。
「後は光の精霊王のバロニィ王国だけなんだけど、元光の精霊王が楽しみながら立て直しに励んでるみたい。」
「それってタマちゃん?楽しんでるんだ。らしいね!」
「でしょう?元々楽しい事大好きな子だったからね。あの子が楽しんでくれてるから、ちっちゃな光の精霊も増えてきてるのよ。」
ほお!良い事ずくめじゃん!
ルークと精霊王が話し始めると、王様は唖然と二人を見つめた。
ルークと精霊王が友達精霊だとは聞いたが、精霊王が自分よりも仲良く話す人間がいる事に驚いたからだ。
「次の王はルークで良いんじゃないか?」
と、笑って呟いている最中に、温泉施設へ転移させられていた。




