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【小説7巻12/19発売・コミカライズ2巻発売中】転生アラサー女子の異世改活  政略結婚は嫌なので、雑学知識で楽しい改革ライフを決行しちゃいます!【Web版】  作者: 清水ゆりか
第五章 王都王宮・お見合いそして出会い編

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たまには事業の事を

 王都に来たので店に出向きたいとキャンベル商会のサイモンへ手紙を書いた所、こちらから伺いますと返事が来た。


 ……ついでに王都の様子やら手芸製品の売れ行き等、色々見たかったのだが。

 それは別の機会にすれば良いだろうと思う事にする。


 秋も深まり、冬の社交界に向けて忙しい時期だ。

 侯爵令嬢だの元締め少女だのがウロチョロしていると、商売がし難いのだろう。


 余程譲れない事以外は、相手に譲って置く方が円滑に進むものである。

 

(そう言えば、今回はコレットさんにお世話になったからなぁ。ここはサイモンさん経由でお返しをしておくべきだろうか)


 借りをそのままにしておくのが気持ち悪い、何とも損な性格のマグノリアである。

 ――ここは、マグノリアの知識でも再現できる服飾グッズを一緒に開発するべきだろうか。


 ヴァイオレットも脱ぎ着が面倒だと言っていたし、着替えが簡単便利になる便利グッズを是非とも作りたい。


 ……本当はずっとジッパーとスナップボタンが欲しいと思っているのだが、エレメント……噛み合わせなどの何気に細かい仕組みを上手く伝えられる気がしない。

 果たして、この世界の現鍛冶技術で製作出来るかも疑問である。


 一度ガイに絵を描いて見せてみたが、武器とは違って解読不可能のようであった。



「うーむ」


 ペンを鼻の下に挟んで頬杖をつく。

 ここは簡単な形状、簡単な加工、安い材料費で大量生産出来るものがマグノリア・クオリティというものであろう。


「ここはカギホックに装飾品じゃないボタンかなぁ」


 引っ掛けるだけのカギホック。あればとても便利であろう。


 細いものから太いものまで、バリエーションも様々。

 ドレスもブリーチズもきっと留め易く、着替え易くなる事は間違いない。


 ボタンも今はまだ手作業で、象牙や宝石、金・銀を加工する装飾品であり一点物である。


 紐で結んだりピンで留めている部分に使う、簡素で実用的なボタンが是非とも欲しいと思う。


「木、貝、石。くるみボタンもありだね」


 手元の紙にカギホックとボタンの絵と説明を書いて行く。

 貝ボタンは綺麗だけど、研磨が大変だろうか。宝石が削れるのだから何とかなるだろうか?


 小さいし軽いし、持ち運びも簡単で良い商売になるのではないかと思うのだが。


(……サイモンさんに話す前に、アゼンダ商会や保護者ふたりに話してからの方が良いのかなぁ) 


 自分で何気なく思ったものが、考えているよりも大きい話になってしまう事はよくある事だ。



 この二年で、幾つかそういった騒動を起こしたのであった。


 まず、前々から欲しかったスクリューキャップの瓶を作ったら、思っていたよりも大変な事になったのである。


 ――しっかり締められ密閉でき、保存性に優れた物が欲しい。


 瓶やらペットボトルやらの開閉部分を思い出してみれば。

 ある程度均一に、瓶にも蓋にもしっかりと『筋』ないし『溝』がつけれれば製作が可能なのであるが……


 それそこは機械なんてない完全手作業の世界。


『幾つ』も『均一』に『同じ』がどれ程難しい事か。

 何度も繰り返しては、失敗し。出来ても替えがきかない一点ものになってしまう。


 耐久性に優れた型さえあれば簡単なのに……と思った所でひらめいた。


 ――硬くて壊れにくい、熱の変化にもめっぽう強いレアメタルで型を作れば良いんじゃない?――


 結果として作れた。

 その型によって今までは何だったのという位簡単に、スクリューキャップの瓶も蓋も作れたのである。


 レアメタルは色んな意味で怖いと言う工房には、別の金属で型を作った。

 耐久性がどうなのかと言ったら、それでも構わないと言われたのである。


 まあ何はともあれ。結果、保存食から薬やその原料に、長期保存の大革命が起きたのだった。


 当たり前の様に地球で使っていた為気にもしなかったが……

 ましてかつて使っていたものに比べれば、まだまだ甘いというか、もっと綺麗でしっかりした製品に出来る筈なのだが。


 だが、この世界においていまだかつてない密閉性の容器が出来上がったのである。


 今度はいわずもがな。

 ガラス工房(瓶)と鍛冶工房(蓋)が大車輪の大忙しと相成ったのである。



 更に、人気の根強いツナをせっかくなので保存食として売り出したら。

 今度もいわずもがな。


 健康食品部門が(ガラス工房と鍛冶工房も)……以下略。



 更に、保存状態が良くなったと言う事で、かつて作った焼き肉のたれにケチャップもといトマトソースとマヨネーズを作ったら……以下略。


 時間と手間が掛かる中濃ソースもどきは却下を喰らった。美味しいのに。


  

 混ざっていたら便利だよねと塩と香草を混ぜてクレイジーソルトもどきを作ったら、今は無理と差し止めを喰らい。


 お砂糖こそ欲しいよねと言ったら、それこそ市場がひっくり返るので、時期を慎重に見計らう必要があるとあちこちから強くいわれ。

 

 クロード謹製のお砂糖精製器を使い、自分達や事業で使用するのみの精製となっている。

 作った甜菜糖はせっせと密閉容器に入れて、使い切れない分は備蓄に回しているのだ。


 先日は森でサトウカエデの木を探していたら、訳を聞かれ……言ったら無言で強制撤収させられたのである。


 そんな訳で、市場に出すものは誰かしらの確認と了解を取り付けてからの方が無難であろう。



(取り敢えずノートのお礼も兼ねて、甜菜糖を数瓶、ヴァイオレットにあげようかなぁ)


 ここタウンハウスにも、勿論持ち込んである。

 お菓子が微妙と言っていたから、屋敷で是非ともお菓子作りに使って欲しい。


 ――それよりも、濃厚なソースを使ったお好み焼きの方が良いだろうか。肉、野菜、卵、小麦粉、魚骨の出汁にイカやタコ。揚げ玉はちょちょいと作れば良い。


 ……鰹節と青のりは無いが、大体の材料はある(青のりは現在探索中である)。

 ……たこ焼きも焼きそばも捨てがたい。


(たこ焼きの型……最近、鍛冶工房に行くと目を逸らされるからなぁ。丸くするだけならガイでも作れるよね?)


 それならば、紅ショウガも作らねばならないだろう。

 是非とも必要だ。不可欠とも言える。


 梅酢を有効活用する為に、生姜の千切りを梅酢と合わせて電子レンジで加熱した即席紅ショウガしか作ったこと無いけど……代わりにピクルス液、塩多めで作ってみる?



「うーむ」

 腕を組んで、眉間に皺を寄せながら考える。


 ここは異世界。

 何か作ろうとすると、思わぬものから作らなくてはならない事はよくある事。


 そして。

 考えていたのは服飾小物の筈が……いつの間にか食べ物にすり替わっている事も、食いしん坊令嬢(無自覚)としてはよくある事なのである。


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