0話 幸せな王女は夢を見る・4
ここから4章開幕です!
新しい森の住人が増えたりと、シルヴィの世界が広がります。
城内の長い螺旋階段を登り切り、一息入れてから大扉に手を掛けます。
扉の先にあるのは、この国の守護神である〇〇〇〇様を信奉するための大聖堂です。
私達王族は、代々守護神様の加護を受けて生まれ、祈りを捧げることでこの国を脅威から護っていただく大事な使命を持っています。脅威とは何か。加護とは何か。詳しいことは私には分かりませんが、お父様やお母様からは、日々〇〇〇〇様への感謝の祈りを忘れてはならないとだけ言いつけられていて、幼い頃からその言いつけを守り続けた結果、毎日の習慣になっていました。
今日も祈りを捧げるべく、守護神様の黄金の彫像に跪き、両手を合わせて瞳を閉じ、いつも通りの言葉を口にします。
「偉大なる守護神、〇〇〇〇様。力なき我らを天より見守り頂き、ありがとうございます。どうか本日も、我らを害なす脅威からお守りいただき、恒久なる平和のために我らをお導きくださいませ」
〇〇〇〇様のお名前を口にする時や、頭に思い浮かべる時は何故か上手く言語化できず、いつもぼやけたような表現となってしまいます。ですが、「神様は我々とは違う次元にいる存在だから仕方がない」と説明を受けているので、今更気にすることもありません。
深い祈りを捧げ終わると、大聖堂のステンドグラスの窓がぼんやりと輝きました。これもいつものことで、お父様は「神様が快諾してくださった証だ」と仰っていました。
これで、今日も守護神様に祈りが届いたことでしょう。
退出前に守護神様の像に一礼し、大聖堂を後にします。
再び螺旋階段を下ろうとしたところで、窓の先の風景が目に入りました。空は今日も曇り模様で、ここの所晴れ間を久しく見ていない気がします。
少し視線を下げて城下町の様子を見て見ると、軍隊が大通りを慌ただしく駆け抜けていました。
お母様から聞いた話では、国境沿いで日々繰り返されている魔族との争いが活発化してしまっているようで、我が国からも出兵を願われているとのお話だったかと思います。
魔族……。その単語を口にした時、夢で見た続きに魔族もいたことを思い出しました。
彼らはとても温厚的で、人を襲い来るような種族ではなかったので、話に聞く魔族の姿と重ねてしまい悲しくなります。
夢は夢。これは現実。
人と魔族は長らく戦を続けていますし、互いに手を取り合うことなどあり得ないのでしょう。
私は小さくため息を漏らし、暗くなり始めた思考を振り払って階段を下ります。
せっかくですし、お父様達にも夢で見た魔族の方々のお話をして、明るく楽しむことにしましょう。




