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1-18 納品しました

 突然しゃべり方を注意されてきょとんとする賢人をよそに、職員は続けた。


「冒険者ってのは命がけで魔物と戦うやつがほとんどだから荒くれ者が多い。そのしゃべり方じゃあなめられるぜ」

「えっと……」

「それに加えてその恰好だ。鼻持ちならねぇと感じるやつもいるだろう。貴族の坊ちゃんが遊びで冒険者やってんじゃねぇかってな」


 30半ばで坊ちゃんもなにもないだろうが。


「そういう反感みてぇなもんが、お前さんだけじゃなくパーティーメンバーにも向く恐れがある。わかるか?」

「……わかった、気をつけよう」


 所変われば常識も変わる。

 郷に入っては郷に従えということだろう。


「それでいい」


 賢人の言葉を聞いた職員は、そう言ってニッと笑った。

 その様子を見ていたルーシーも、安心したように頷いていた。


「ああ、それから。これも返しておこう」


 職員は用意していた短筒を手に取り、賢人に手渡した。


「もう返してもらっていいのか?」

「ああ。加護板という身分証もできたし問題ない」


 ずしりとした適度な重みが、心地いい。

 とりあえず受け取った短筒は、腰のベルトに挟んでおいた。


「で、どうする? さっそく依頼を受けるか?」

「いえ、さきに納品をしておくわ」

「ドロップはアイテムボックスだな」

「ええ」


 慣れた様子で、ルーシーは受付台に手を置いた。

 そこには魔法陣のようなものが書かれていて、そこに置いたルーシーの手が淡く光る。


「ほう、オークを倒したってのは本当なんだな」


 職員は手元にある板を見ながら、そう言った。

 それはタブレット大の透明な板で、のぞき込めば文字が浮かび上がっているのが見えた。


「これはなにを?」

「さっきの講習でも軽く教えたが、アイテムボックスからの直接納品だな」


 受付台の魔法陣に手を置き、納品したいものを思い浮かべるだけで、アイテムボックスからドロップアイテムを取り出すことなくギルドの収納庫へ直接納める方法だ。

 その段階で同時に鑑定もされ、買取額が計算される。

 ドロップアイテムだけで5万シクルを超える額となった。


「オークは何匹倒した?」

「1匹だよ」

「そうか、あいかわらずドロップ運はいいな」

「それだけが取り柄だからね」

「馬鹿を言うな。それが一番大事なんだよ」

「【運】は最悪なのにね」

「それだってまだわからねぇだろ? 少なくともドロップ運はいいんだ」

「そうね。でもあたしはもっと強くなりたいわ。ドロップ運なんかより、強さがね」

「ルーシー……」


 ふたりの会話からルーシーはなにかしら悩みや問題を抱えていそうだが、いずれ関係が深まれば話してくれるだろうと、賢人は聞き流した。


「魔石はあるか?」

「俺が持ってる」


 賢人は答え、バッグから魔石を取り出し、受付台に並べた。


「魔石も全部納品でいいか?」

「その前にケント、銃を見てもらわない?」

「銃を?」


ここまでお読みいただきありがとうございます!

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