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1-7 ふたりで森を歩きました

10/26 冒頭でルーシーが手元のなにかを確認する、という描写を追記しました。

サブタイトルが1-3と被っていたので『森を歩きました』から『ふたりで森を歩きました』に変更しました。

「ちょっと待ってね、方角を確認するから……えっと、こっちね」


 ルーシーはときおり手元でなにかを確認しながら、森を歩き、賢人はそれに続いた。

 そして彼女が警戒し、敵を見つけては賢人が撃ち倒していく、ということの繰り返しとなった。

 小学生くらいの体格をした醜悪な顔の魔物、ゴブリン。

 全身が毛で覆われた人型の身体に、犬の頭を乗せたような魔物、コボルト。

 そんな具合に、なんとなくゲームなどで見知ったような魔物が出現したが、オークほどの強さはなく、どれも一撃で倒すことができた。

 オークにしても、当たり所次第では1発で倒せていたかもしれない。


「ちょっともったいないけど、ゴブリンの革と骨は置いていくわね。コボルトの牙と毛皮はできるだけ持って帰るってことで。これくらいならまだ〈アイテムボックス〉に入るから」


 ゴブリンやコボルトも、オーク同様ドロップアイテムを落とした。

 魔石は拾ってバッグへ、その他のアイテムは消えていったので、おそらくルーシーの〈アイテムボックス〉に入っているのだろう。

 なぜ魔石を入れないのかはわからないが、なにかしらの制約があるのかもしれない。


 そうやって繰り返された何度目かの戦闘で、短筒に取り付けられた黒い石がボロボロと崩れて消滅してしまった。

 そしてそのあとから、光弾が発射されなくなる。


「どうやら魔石の魔力が切れたみたいね」

「魔石の魔力?」


 ルーシーがいうには、この短筒は撃鉄で魔石を打って弾丸を飛ばすという仕組みらしい。

 ただ、これまで拾ってきた魔石はくすんでごつごつしていたが、短筒に取り付けられていた石は光沢がありスベスベしていたので、賢人はそれらが同じものだとは思いもしなかった。


「試しにゴブリンの魔石をつけてみなよ」


 バッグから親指の先ほどの黒い石を取り出し、撃鉄を半分だけ起こした。

 その状態でためしに引き金を引こうとしたが、固定されて引けなかった。


(ハーフコックポジションもちゃんとあるんだな)


 ハーフコックポジション――撃鉄を半分だけ起こした状態――は、安全装置と同じ効果がある。


(大きさは、まぁ同じくらいか)


 そう思いながらニップルの先に魔石を当てると、吸い付くようにピタリと固定された。


「おおー」


 不思議な現象に思わず声が漏れる。


「よし、試し撃ちしてみるよ」


 撃鉄を起こし、短筒を構える。


 ――バスッ!


「あれ……?」


 ゴブリンの魔石は、1発撃っただけで消滅した。


「1発しか撃てないなんてもったいないけど、安全には変えられないからね」


 そこから数回の戦闘を繰り返して、さらにわかったことがあった。

 まずゴブリンの魔石は威力が弱い。

 これまで1発で倒せていたゴブリンやコボルトを倒すのに2~3発必要で、ルーシーも戦闘に参加しなくてはならなくなった。

 そこでゴブリンの魔石よりふた回りほど大きいコボルトの魔石を使ってみたが、これも1発で消滅した。

 威力は少し上がったようだった。

 オークの魔石は大きすぎて取り付けられなかった。


「もしかしたら、魔結晶(まけっしょう)がついていたのかしら」

「魔結晶?」

「そう。魔石を精製して魔力密度を高めたものよ。オークをああも簡単に倒せる弾を、何発も撃てたってことは、かなり高価な魔結晶だったのかもしれないわね……」


 ルーシーが申し訳なさそうな表情を浮かべたので、賢人は軽く微笑んで頭を小さく振った。


「気にすることはないよ。命には替えられないだろ?」

「……そうね。まずは町へ帰るのを最優先にしないと」


 ゴブリンならルーシーだけで倒すことができた。

 コボルトが出たときはまず賢人が銃で弱らせてからルーシーがとどめをさすようにした。

 しばらく時間が経過したことでHPとやらが少しだけだが回復したらしく、ゴブリンやコボルトの攻撃なら受けても問題なくなったので、途中からは移動のペースを早めた。


「ふぅ……抜けたよ、ケント」

「ああ。おつかれ、ルーシー」


 そしてオークとの戦闘を終えて2時間ほどで森を抜けた。

 生い茂る草木を抜けた先には、広大な草原が広がっていた。


「しかし、よく迷わず出られたな」


 草原を少し歩いたところで振り返ると、そこには鬱蒼とした森があった。


「冒険者には〈マップ〉があるからね。一度歩いたところは迷わないのよ」

「なるほどねぇ」


 よくわからない言葉がまた飛び出してきた。

 事情を聞くのは町に着くまでお預けかな、なんてことを考えながら、賢人は先を歩くルーシーのあとに続いた。


ここまでお読みいただきありがとうございます!

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