28 あの白いやつのステータス
アンネちゃんのステータスについての話をしたついでに、ふと気になります。
カミさまはどんなステータスをしているのでしょう。
やはり神ですから……数えるのが面倒なくらい莫大な数値なのでしょう。
見てみたい気持ちと、見て後悔しそうな気持ちが入り混じり、私は躊躇してしまいます。
そんな私の様子を見て……というか、思念が読めるんでしたねこの人……とにかく、カミさまが私に笑いかけてきました。
「見てもいいよ、ユッキー♪」
「……見た瞬間に私の脳みそが焼き切れて死ぬとか、そういうのはありません?」
「ないよ! なんで私がユッキーが死ぬようなこと勧めると思うのかな? 私けっこうユッキーのこと好きなんだけどな? まだ分かってもらえてないかな? ん?」
「あー、うざいのでもうサーチの方入らせてもらってもいいですかカミさま」
「あん、もうつれないなあユッキーは」
「エクスコルド」
私はお仕置き棒を呼び出します。びりびり、と電撃を走らせると、カミさまは慌てて態度を正します。
「ぜひ、御覧くださいユッキー様」
「よろしいのです」
そして、私はいよいよカミさまのステータスを確認します。
―☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆―
カミーユ(Camille)
ライフ:10
パワー:0
攻撃力:1
防御力:0
魔法力:1
敏捷性:0
技能:スーパーコード(EX) スーパーサーチ(EX) ストレージ(EX)
無敵(EX) アーマー(EX) 喰らい偽装(EX) 強制即死耐性(EX)
デリート耐性(EX) 強制時間停止耐性(EX) 強制フリーズ耐性(EX)
魔法適性:
魔法耐性:
―☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆―
想像を遥かに越えた意味不明さで、私は思考が停止しました。
かろうじて分かるのは、こいつは私よりでかいストレージと、私より便利なスーパーサーチが使えるということです。
「どう? ご満足?」
「すごく納得のいかない数値ばかり並んでいるのですが」
「え? どのへん?」
「全部ですよ!? ライフ10ってなんですか! イモムシに噛まれて死ぬレベルじゃないですか!」
「それは喰らい偽装の技能で、特定条件のダメージを受けた時だけ1減るようにしてるんだよ」
「条件って何です?」
「えっと、瞬間ごとにランダム? で、ライフは常に回復するようになってるから、一瞬のうちに10回分のランダム条件を適切に満たした攻撃を当ててくれないと私のライフは0にならない」
「クソじゃないですか!」
「まあね。しかもライフ0になっても死なないし」
「マジでクソじゃないですか……」
見て損をしたというか、とても疲れました。
この世界には、こんな理不尽な存在もいるのですね。
勉強にはなりました。
「ファーリ……もしかして貴女、カミーユ様のステータスを?」
私の疲れた様子を見て、リグが心配してくれます。
「そうなのです。あの人、防御力0とか表示されたのです」
「あ、それには一応理由があってね?」
カミさまが言い訳を始めます。
「防御力が0だと、実はどんな莫大な数値の防御力よりも強固なダメージ軽減能力が得られるんだよね」
「何なのですそれ、意味分かんないのです」
「まあファンタズムのバグだからねえ」
「バグ!? なんですか、ゲームなのですか!?」
「ちょっとお2人とも、何を言っているかさっぱり分かりませんわよ?」
リグが混乱して、私とカミさまの言い合いを止めます。
確かに、こいつが本当に神だということを知らなければ会話の意味はよく分からなかったにちがいありません。
いや、にしても少し様子が変なような気が。
「安心しなよ、ユッキー。実は私の技能スーパーコードで、私とユッキーの会話の意味を誰も理解できないように世界を一時的に改変してるから」
「……そうでしたね、神でしたね。それぐらい自由にできますよね」
「いやいや、これでも権限とかいろいろめんどくさいルールがあってね? けっこう出来ないことも多いんだよ?」
「はいはい、どうせしょーもないことですよね」
「誰かを生き返らせる、とか」
カミさまの言葉に、ぴくりと私は反応します。




