25 リグレット、嫉妬する
私はリグと一緒に、自分たちの部屋へ戻ります。
「――はぁ、それにしても大変な一日でしたわ」
リグがため息を漏らします。
「そうなのですか?」
「ええ、そうですわ。ファーリはクエラさんと決闘する。突然ハンターギルドでチームを組む羽目になる。ややこしい事情の女の子と知り合う。それも2人。しかもわたくしの秘密まで話すことになってしまいましたわ。……それに、アンネさんときたら」
「??? アンネさんがどうかしたのですか?」
突然怒ったような口調になったリグを不思議に思って、私は訊きます。
「……なんでもありませんわっ!」
すると、リグはもっと怒ったような口調で言って、顔をぷいっとそっぽに向けてしまいました。
「あーっ! リグ、私に何か秘密を作ろうとしているのです!」
「えっ!? そ、そういうわけではありませんけれど……」
私はここ数日で学んだ、効果的な手段でリグが言おうとしていたことを聞き出します。
「じゃあ、何だったんですか? リグはアンネちゃんの何に怒っているのですか?」
私は、リグの顔を覗き込みながら訊きます。
すると、リグは小さな声でゆっくり答えてくれました。
「……ファーリは、ああいう女の子が好みですのよね」
「はい?」
思いもよらぬ言葉に、私は首をかしげます。
「ですから! ファーリはああいうもふもふ、ふわふわした女の子の方が好きなのですよね!?」
「えっと、何と言えばいいのか……一応、はいなのです」
「ですわよね……はぁ」
リグは何か、落ち込んだようにため息をつきます。
「……いえ、気になさらないで」
「いやいや、すごく気になるのです。なぜ私の好みを?」
「別に、大した意味はありませんわ。そうですわね……ちょっと、悔しかったのですわ」
「悔しい?」
「……ファーリを、独り占めされてしまいそうで」
きゅーんっ!
私は心臓が止まりそうになります。
何なのですか、リグ。貴女は天使ですか。
可愛すぎませんか。素敵すぎませんか。
「はぁ~~……」
ため息が出てしまいます。
もちろん、幸せすぎて胸がしんどくなってしまったが故のため息です。
「ふぁ、ファーリ? そんなにわたくし、がっかりされるようなことを言ったのかしらっ?」
リグはおろおろ、と慌てはじめます。
あああ、だめ。可愛い。好き。
「……リグはやっぱり、最高のお友達なのです」
「ええっ!? 今、そういう話でしたの!?」
「そうなのです。私の一番はリグだけなのです。リグ以外ありえないのです」
そう言って、私はリグに肩から体重を預け、リグの片腕に私の両腕を絡めて甘えます。
「このままお部屋まで、連れてってほしいのです」
「ちょっと、ファーリっ? ここは廊下ですわよ、人の目もありますから……その、甘えるのはお部屋まで自重なさい?」
「だーめ、なのです」
私は結局、部屋までどころか部屋に戻ってからもずっとリグに甘えっぱなしになるのでした。




