23 これからの話
そうして4人、私、リグ、お姉さま、アンネちゃんは友達となりました。
「――さて、4人とも打ち解けたところで、大切な話をしよう」
不意に、お姉さまが口を開きました。
「まず、僕は既にアンに自分の秘密を話して教えている。ルームメイトだからね、当然のことだ」
お姉さまの言葉に、私も納得します。
私もまた、リグには全ての秘密を打ち明けたいと思っています。
まだ、転生のことについては話せませんけど。
「そこで提案なんだけど――僕たち4人で、秘密を共有し合わないか?」
「4人で、ですの?」
リグが難色を示します。
お姉さまの提案の意図はわかりませんが、リグの気持ちは分かります。
まだアンネちゃんとは出会ったばかりです。
リグの秘密は特に大きなものですから、あまり無闇に事情を知る人を増やしたくはないのでしょう。
「僕とリグレット様は秘密の共有をしています。そして僕とアンもまた、秘密の共有をしている。であれば、リグレット様にとっても、アンは信用に足る人物と言って差し支えないと思いますが」
「そういうことではありません。目的は何ですの?」
「それは単純です。秘密の共有者として僕とリグレット様が行動を共にすれば、自然と同室のアンにも情報は漏れていきます。そこでいらぬ憶測や風説を生むぐらいであれば、予め仲間として抱き込んでしまったほうが良いでしょう」
「確かに、それはわたくしにとってのメリットになりえますわね」
リグは頷き、少しだけ納得を示します。
「けれど、わざわざ秘密を共有することでクエラさん、アンネさん、そしてファーリにどのような利益がありますの?」
「それは、実は僕たち3人には共通の問題がありまして」
言うと、お姉さまはアンネちゃんと私の方に目配せしてきます。
はて、お2人と共通の問題とは。何だったのか、私には思い出せません。
「というのも、僕らはリグレット様とは違い、生活費は自分で稼がなければならないのですよ」
言われて思い出します。
そうでした、パパからお金の援助は得られないのです。
入学金などは全て国からの補助が出ているのでタダですし、寮費もタダです。
けれど、食堂は格安ですがお金を取られます。
授業で使う備品は分かりませんが、個人的な装備や生活雑貨類は自費で賄わねばなりません。
「なので、僕は前からハンターギルドでハンター登録をして、学生ハンターとして生活費を稼ぐという方法を考えていました」
お姉さまの言った手段は、私も考えていたことです。
「しかし、1人でハンター活動をするのは少々リスクが高い。そこで――秘密を共有する運命共同体でハンターチームを結成し、活動するというプランが出てきます」
「なるほど、話が見えてきましたわ」
リグが頷きつつ、お姉さまの言葉の先を勝手に続けます。
「つまり、クエラさんとアンネさんは元々チームを組むつもりだった。けれど、ファーリの入学、そして私というイレギュラーがあった。せっかく出会ったのですから、同じチームとして活動した方がリスクも下がり、効率も上がる。そういうわけですわね?」
「ご明察です。秘密の共有については強要するつもりはありませんが、チームとして活動するのであれば信頼関係は大事かと」
「……まあ、隠し立てして後でゴタゴタする方が面倒ですものね」
リグは納得したように頷き、そして言います。
「いいでしょう。その提案には乗ります。けれど、あくまでもファーリ次第ですわ」
「私ですか?」
思わぬタイミングで名前が上がり、私は首を傾げます。
「ファーリが生活費を稼がねばならないのなら、わたくしはルームメイトとして、お友達としてお手伝いいたしますわ」
嬉しい言葉です。やはり、リグは最高のお友達なのです。
「その為なら、ハンターチームを組むことも問題ありません。なので、ファーリがクエラさん、アンネさんともチームを組みたいと言うのでしたら――」
「組みたいのです! 仲間は、お友達は多いほうがいいのです!」
「……だと思っていましたわ。クエラさん、そういうわけです」
「了解しました、リグレット様」
そして、お姉さまはリグに向けて感謝の一礼をします。
「では、これから秘密の共有といきましょう」




