15 奮闘の後に
気がつくと、私は白い天井の部屋にいました。
真っ白なシーツのベッド。乳白色のカーテンで仕切られた、狭い空間。
そこに私は寝転がっていて、傍らにはリグが座っていました。
「お目覚めですのね」
リグは、安堵した様子の声で言いました。
「あの、ここは……?」
「医務室ですわ。ファーリとクエラさんの模擬戦の後、お二人は怪我がひどいからとこちらに運び込まれたのですわ」
「そ、そうだったのですか……お姉さまは大丈夫でしょうか?」
「治癒術を使う教員の方が、無事だと仰っていましたわ。怪我の割に、命に別状は無かったとのことです」
前世の感覚だと、即死レベルの怪我だったのですが。
ともあれ、無事とのことで安心しました。
「それにしても、貴女といいクエラさんといい……ダズエル家の人間はとんでもない強さをお持ちですのね」
「いや……私の場合はちょっと特殊なのですが」
「そう謙遜なさらないでファーリ。クエラさんの『レッドマスカレイド』を打ち破った策と、それを実行して成功させる器量は間違いなく貴女の実力ですわ。きちんと誇りなさい」
「うぅ……ありがとうです、リグ」
私は言いながら、そろそろと手を伸ばしました。
これに気付いて、リグは私の方に手を伸ばし、握ってくれます。
「わたくしも、負けていられませんわね。……正直、お屋敷で騎士や教育係の人間を相手にして、いつも勝ち続けていましたから、わたくし自分が一番凄いものだと思っていましたの。けれど、貴女たち姉妹を見て認識を改めました」
リグは、どこか強く決意の滲む口調で言います。
「私よりも、実力だけでなく、才能でもずっと上をいく人はまだまだいる。そして、わたくしはそういう人間に追いつき、勝てるほど強くなれる。いいえ、なりたいのです。今日の戦いを見ていて、心の底からそう思いましたの」
そして、リグはもう片方の手で私の前髪をさわさわと左右に流し、弄びます。
「――ファーリ。これからも、わたくしの側にいて下さいな。そして、共に強くなりましょう。わたくしは貴女を追いかけていたい。貴女のようになりたい」
「リグ……」
何か、不思議な感覚が私の心にちりちりと芽生えます。
なんだか、心地の良い感覚です。けれど、焦燥感というか、そういう感覚も少しだけ感じます。
そして、この気持ちはリグが私の前髪を撫でる度、強くなります。
ママやお姉さまに撫でられた時にも感じなかった気持ち。
きっと――初めてのお友達に浮かれているのですね。
私は、今の自分の思いをそう解釈しました。




