12 クエラVSファーリ
試合開始と同時に、クエラお姉さまは一瞬で私の方へと詰め寄ってきます。
そして、ロングソードを一閃。
私はこれをギリギリで防ぎますが、当然余裕はありません。
次々と、お姉さまの剣閃が私に迫ります。
なんとか回避、あるいは打ち合っての受け流しを繰り返します。
が、お姉さまの方が敏捷性は上。しかも剣術技能も上です。
私はそう時間もかからないうちに追い詰められます。
「――くぅッ!」
仕方なく――私は、無属性魔法『バスターブリッツ』を使います。
と言っても、私の場合はそれによく似たアドリブの魔法なのですが。
無詠唱で発動した、無数のブリッツ。これが、一斉にお姉さまを襲います。
「ははっ、こりゃすごい!」
お姉さまはこれを楽しそうに笑いながら、回避します。危ない弾道のブリッツは闇の魔力を込めた剣閃で叩き落とし、そうでないものはうまく足運びで回避。
私が一瞬で送り込んだ30以上の弾丸は、あっさりと回避されてしまいました。
「――無詠唱のブリッツ乱射で、この威力かぁ。これは、本当の一撃を貰ったらこっちが危ないね」
お姉さまは、剣を握る手を片方だけ離し、ひらひらと振ってみせます。どうやら、私のブリッツを叩き落とした時の衝撃が響いているようです。
「これなら、僕は本気を出しても大丈夫そうだね」
言って、お姉さまはニヤリと笑います。
私を追い詰めた先程までの手際が、手加減の内のことだったのです。
それを思うと、私は背筋が凍るような思いでした。
「さあ! 見るが良いさファーリッ! これが僕の奥義ッ! 父上以外には一度たりとも破られたことがない吸血鬼と魔族の力の混合技!」
お姉さまは言うと飛び上がり――そのまま、宙に浮かんでしまいます。
飛行の技能があるのは分かっていましたが、こうして目の前で飛ばれてしまうとやはりビビリます。
「『レッドマスカレイド』、発動ッ!」
次の瞬間――お姉さまは自分の指を噛み、傷をつけました。
そして傷口から――膨大な血液が溢れ出てきます。
血液は空中で静止し、形を成し――そして、凝固します。
そうして出来上がったのは、無数の剣でした。
血液が固まってできた、紅い剣。
それが、空中に20本以上は浮いていました。
私は血の気が引きました。
恐らく、お姉さまはアレを、武器のように操るのでしょう。
何しろ、血液操作の技能がBです。
実際に剣を振るうように、全ての剣をコントロールして襲い掛かってくるでしょう。
悪夢のような光景です。
「さあ踊ろうか、ファーリ」
お姉さまは、優しい声で言いました。
むしろ、それだけ余裕があるということです。
私はいっそう恐ろしくなりました。
そして――無数の剣が、私を目掛けて飛んできます。




