05 お友達は大公令嬢
「あの、お姉さま!」
私は、さっきの言葉が気になって会話に割り込みます。
「ん、どうしたんだいファーリ」
「あの、さっきリグのことを大公令嬢って……」
「そうだよ。リグレット様はクラウサス大公家のご息女。リグレット・ベーゼ・クラウサス様だ」
「ふえええええっ!??」
私は驚きのあまり、大きな声を上げます。
まだ人が少ないとは言え、食堂には他の生徒もいます。
注目を浴びてしまい、私は恥ずかしい思いで顔を紅くして、声を絞ります。
「……あのお姉さま、大公様というと、一番えらい貴族の位で、その上の位は王族のみだったと思うのですが」
「おや、貴族社会の苦手なファーリでもそれは知ってたんだね。……でも、認識が少し間違ってるね。大公という位は、王族の血筋の方だけが頂ける位なんだよ」
「お、王族の?」
「その通り。そして、クラウサス大公家は大体80年ほど前に出来たばかりの新しい大公家で、まだ王族の血も濃い。だから一応、リグレット様は王位継承権も持つ立派な王族の一員でもあるんだよ」
私は、驚きのあまり目を点にして、口をぽかんと空けて呆然としてしまいます。
「……ショックが大きかったみたいだね」
お姉さまが苦笑いをしながら言います。
「それにしても、クエラさん。どのようにして、わたくしがクラウサス大公家の者だと見抜いたのかしら?」
リグが問い掛けると、お姉さまはフッと笑みを零して答えます。
「ほとんど社交界には顔を出さない僕ですが、一応は貴族ですからね。有力な貴族の方々と、その子息女様方のお姿と名前は記憶してあります。それに……これを言ってしまうとアレなのですが、実は僕がハンター学園に通う『条件』がリグレット様でもありまして」
「わたくしが?」
「ええ。秘密裏に身辺警護を、という条件が。……まあ、これを言ってしまった以上秘密裏でもなんでもないのですが」
お姉さまの言った言葉は、私にとっても初耳の話でした。どんどん私は呆気にとられて、意識さえ遠のく気分です。
「そうですわね……でも、言ってくださった方がこちらも助かりますわ」
「でしょうね。事情あってのご入学と聞いていますから。僕も、あまり身の回りが秘密の物事ばかりというのは良い気がしません」
「ふふっ。クエラさん、貴女おもしろい人ね。ファーリの姉上ということを抜きにしても、お友達になれそうですわ」
「これはありがたいお言葉を」
お姉さまは、リグに一礼します。
大公令嬢様に対する態度としては気さく過ぎるのですが、そこはリグです。
むしろ、こうした気軽な態度のほうが接しやすいのでしょう。嫌な顔をするどころか、楽しそうな顔をしています。
「しかし――クエラさんにばかり秘密を話してもらうのも良くない話ですわね。ここは運命共同体、としてわたくしの秘密もお話しした方がよろしいのかもしれませんわね」
不意にリグはそう言って、私の手を握ります。
「ファーリ。貴女にも聞いて欲しいのですけれど、よろしかったかしら?」
「あっ、えっ!? はい! リグが望むなら、私はなんでも!」
「ふふっ。僕の妹はすっかり懐いているようだね」
お姉さまに笑われてしまいました。でも、悪い意味では無さそうなのでよしとします。
「……ところで、あえて無視をしていたんだけど、こちらの白い髪の人は何者なのかな?」
お姉さまは、カミさまに視線を向けて訊いてきます。
……そういえば、私も存在をすっかり忘れていました。




