02 カミさまは精霊?
「で、結局この人だれですの?」
リグが本題に話を戻してくれます。さすがなのです。
「私の名前はカミーユ。そうだねぇ……ユッキーの生みの親? 的な?」
「悪ふざけが過ぎるとお仕置きなのです」
私はお仕置き棒をストレージから出します。
突然のことにリグが驚きますが、構わず電撃をビリビリ出してやると、カミさまは顔を青くして言い訳します。
「いや、だって実際そんな感じでしょ!?」
「私のママはママだけなのです。おまえが親を名乗るなど片腹痛いのです」
「あの、ファーリ? そのビリビリいっている武器は何なのです?」
リグが気になっている様子なので、説明を優先します。
「これはお仕置き棒なのです。カミさまがクソだなって思った時にこれでしばくのです」
「死にますわよ!?」
「安心するのです、やつは不死身なのです」
「……ちょっとまって下さらない? わたくし、理解が追いつきませんの」
リグが頭を抱えて項垂れます。
これは……カミさまが悪いのです。
「ちょっ、何ユッキー急に……うべべべべっ!」
十分なお仕置きを済ませた頃には、リグも気を取り直していました。
「……で、何度も聞きますがこの人は誰ですの?」
「あー、このお仕置き棒をくれた人? なのです」
「えっ……それ変態ではありませんの?」
「いやいや、別にお仕置きされるためにあげたわけじゃないからね?」
カミさまは言い訳しながら、お仕置き棒の仕組みを説明します。
リグは感心しながら説明を聞きつつ、時おり私が実演してみせると頭を撫でて褒めてくれます。
「つまり、あなたは魔道具技師ということですのね?」
「いいや違うけど?」
「……じゃあ何なんですの」
「あー……ユッキーにいつも離れずつきまとっている存在?」
「ストーカーじゃありませんの!?」
「違うよ! ねえユッキー?」
「……いや、でもストーカーと言えばそうとも言えるのです」
「やめてユッキー!? ほら、リグレットお嬢さんが銃剣構えちゃうから! ね? やめよ? 私のこと悪く言うのやめよ?」
「むう……そうですね、いい加減に話も終わらせたいのです。リグ、こいつはストーカーではないので安心して欲しいのです」
「そうですの……まあ、ストーカーにしては仲良しに見えますものね」
リグは構えていた銃剣をおろします。
「では、そちらの方はファーリのお友達、ということでよろしくて?」
「違うのです、私の友達はリグが初めてなのです。あいつは……なんか、そういうのじゃないのです」
「ひどくない? 私たち、いちおう付き合い長いよね? もうちょっと仲良しな感じに紹介してくれても良くない?」
「いや、カミさまが一方的につきまとってただけですし」
「だからお二人の関係は何なんですの!?」
イライラした様子のリグがついに声を荒げます。
しかし、まあ……カミさまが私を転生させた神、とは紹介できないのです。
「あー、まあ大雑把に言うと私は妖精とか精霊とか、そういう存在なんだよね」
「おっ、カミさま上手いこと説明しましたね」
珍しく私が褒めてやると、カミさまは嬉しそうにふやけた笑みを浮かべます。
「でへへ。まあ、そんなわけで、私は人間じゃない。で、実はユッキーが生まれた時からずっとつきまとってるんだよね。守護精霊? みたいな?」
カミさまが説明をするほどに、リグの顔が青くなっていきます。
「……そうとは知らず、失礼しましたわカミーユ様」
「うんうん、分かればよいのじゃ~」
「どうしたのですリグ!?」
突然カミさまを敬いだしたリグに驚き、私はわたわた慌てます。
「ファーリ、精霊というのは人間より上位の存在。しかもこれだけ高い知能とはっきりした肉体を持っているのは、かなり高位の存在である証ですわ」
「そ、そうなのです?」
「ええ、そうなのですわ。ですから、わたくし達は敬意を払わなければならないのです」
「そういうわけだよユッキー。私を敬いたまえ~……うべべべべっ!」
調子に乗ったカミさまを戒める為にも、私はお仕置き棒をペタッと押し付けておきました。
「こらファーリ、不敬ですわよ!?」
「いや、こいつは前からこんな感じなのです。問題ないのです」
「そうですの? ……まあ、貴女の守護精霊というからには、わたくしから無理には何も言いませんけれど……」
ひとまず、私とカミさまのことについては理解してもらえたようです。




