01 カミさまとリグレット
リグとお友達になって、一緒のベッドで添い寝して。
この上ない幸せを感じた昨晩から一転、朝は微妙な気分で目覚めることとなりました。
「お~い、ユッキーや~い。起きないと鼻の穴に大豆突っ込んじゃうよ?」
「寝ているだけの子供にする仕打ちにしてはひどすぎでは!?」
私は恐ろしい言葉を聞いて飛び起きます。
悪魔の言葉を囁いたのは、他ならぬカミさまです。
いつもと変わらぬ白髪赤眼の、ワンピース姿の女の子。
私を無理やり起こしたくせして、ニコニコ笑っていやがります。
ムカついてきましたので、私はストレージに入れておいたお仕置き棒をスッと呼び出し、手に持ちます。
「おっとユッキー。冗談を言っただけの神に対してひどすぎるんじゃないかな?」
「お互いひどい同士、おあいこです。さあ、尻を出しなさい」
「私が思ってたよりもひどい!?」
お仕置き棒がビリビリと電撃の音を立てます。
「そんなことよりカミさま、私に何か用があるのですか? こんな早い時間に、リグも一緒なのに姿を表して。不審者として叩き出されてもおかしくないのですよ?」
「お、話が早いねえ。実はそうなんだよ」
「不審者だったのですか」
「肯定したのはそっちじゃないよ! 用があるって方だよ!」
「どっちにしろ朝っぱらからおまえと絡むのは不快なのです、お仕置き棒の刑は免れないのです」
「ユッキー、お仕置きがだんだん厳しくなってない!? というか、本題に話もどしてもいいよね!?」
「むう……仕方ないのです」
これ以上話が長引くのもイヤですので、私はお仕置き棒を引っ込めました。
「それで、用とは何なのです?」
「いや、これからユッキーはリグレットお嬢さんと一緒に生活をするわけだよね?」
「もちろんです。リグと私は片時も離れることのない深い友情で結ばれた仲なのです。なのでカミさまは邪魔なのでさっさと消えて欲しいのです」
「ひどくない? 一応私もユッキーのこと10年間見守り続けてきてるんだからね? それ忘れないでほしいな?」
「……まあ、感謝はしているのです」
「お、ツンデレきたかな?」
「あーお仕置き棒」
「ごめんって!」
お仕置き棒がそんなに嫌なのか、カミさまはすぐに態度を変えます。
「ともかく、ユッキーとお嬢さんは一緒に生活する。となると、私がユッキーにつきまとってる事実はそう遠くないうちにバレるわけですよ」
「ぬっ、それはまずいのです! おまえみたいな変態に付きまとわれていると知られたら、リグに変な目で見られるのです!」
「……まあ、いろいろ置いとくとして。ともかくバレることは避けられない。だったら、最初から私という存在がユッキーにつきまとってることを教えといたほうがいいんじゃないかな、と思ってさ」
「なるほど、カミさまも少しは理にかなったことも言うのですね」
「そりゃどうも」
しかし、実際のところ困りました。
カミさまをリグに紹介するとして、どう言いましょうか。
こいつは私をこの世界に転生させた神で、実はこの人からいろいろヤバい力を貰ってます、とは言うわけにもいきません。
「……どう紹介しましょうか」
「なにを騒いでいますの、ファーリ」
「わああああっ!?」
私とカミさまが騒いでいるせいで、リグが目を覚ましてしまいました。
「……っ!? どちらさまですの!?」
リグはカミさまに気付くと、私を庇うように抱いてカミさまを警戒します。
「あー、うん。そんなに警戒しないでくれるかな?」
「不審者のくせして何を言いますの!」
リグの言い分が正しいのです。突然部屋に現れた謎の白髪赤眼の少女。不審すぎます。
「いや、私不審者じゃないよ? ねえユッキー」
「ユッキーって誰ですの!?」
「あ、それ私のことなのです」
「ファーリ!? この変人と知り合いですの!?」
「……いや、知り合いのような、知り合いじゃないような」
「ちょっとまってユッキー!?」
カミさまが慌て、リグは銃剣を一つ手に取って構えます。
「いや、ごめんなのです。こいつは一応、私の知り合いなのです」
さすがに状況が悪くなりすぎているので、正直に本当のことを言います。
「……ファーリ、冗談が過ぎますわよ」
「リグ、ごめんなのです」
「許しますわ」
リグは私の頭を撫でて、許してくれました。
カミさまが何やら羨ましそうにしているのですが、ヤツにはこんなことさせません。
むしろ、触ったらお仕置き棒です。




